目まぐるしく変化していく日々、ふと非日常的な時間や空間に浸りたくなったら、“ゆるりと歌舞伎座で会いましょう”。「錦秋十月大歌舞伎」昼の部には、山田洋次が脚本・演出を手がける「文七元結物語」がラインナップされた。「文七元結」は、落語家・三遊亭圓朝が口演した人情噺。同作をもとにした歌舞伎版は、1902年に五世尾上菊五郎により初演されて以来、上演が重ねられている。“山田洋次版”として新たに立ち上げられる今回、腕の立つ職人だが博打がやめられない左官長兵衛を中村獅童、その女房お兼を寺島しのぶが勤める。
ステージナタリーでは、山田、獅童、寺島に開幕前にインタビューを実施。今回、初の夫婦役を演じる獅童と寺島は、同い年で旧知の仲だ。取材では、獅童と寺島の、作中の夫婦を彷彿とさせる丁々発止のやり取りから、山田が新たな映画のアイデアを思いつき、大きく盛り上がる場面も。息の合った3人が、新たな「文七元結」に向けた思いをたっぷりと語った。また毎月恒例の黙阿弥コラムには、新派文芸部の齋藤雅文が3カ月連続で登場。初回は、齋藤が黙阿弥の娘・糸の姿を描いた「糸桜」に迫る。
取材・文 / 川添史子撮影 / 藤田亜弓
“やっと夫婦になれる”中村獅童&寺島しのぶ
──もとは落語で、歌舞伎でも人気作である「文七元結」が、山田洋次監督の新たな脚本・演出のもと「文七元結物語」として上演されます。監督はかつて、十八世中村勘三郎さんの「人情噺文七元結」(2007年、新橋演舞場初演)で補綴を手がけ、シネマ歌舞伎化では監督もされました。改めて、この作品の魅力を伺えますか?
山田洋次 僕は子供の頃からこの落語が大好きで、芝居も好きでした。うんと笑いながら、人間の心の中には、キラリと光る善意があることを信じたくなるような物語なんですね。古典落語の中でも語り口も作劇も大変に巧妙、よくできた噺だと思います。
──主人公である左官の長兵衛は博打好きで、女房お兼とはケンカばかり。貧乏生活を送る家族の苦境を見かねた娘のお久は、自分が吉原に身を売ることを決意し……という人情劇です。
山田 その昔、勘三郎さんとお話する中で「お久が吉原に現れるところから始まる、そういう語り口もあるのでは」と。彼も「それ、面白そうだから映画にしましょう、吉原の大門に貧しい少女が心細そうに立っているオープニングなんてどうかな」なんておっしゃっていたけれど、結局実現する前に彼はこの世を去ってしまった。そんな思いをずっと抱いていた僕が、獅童さんとしのぶさんのお二人でもう一度「文七元結」を演出できる、ありがたい機会を頂戴しました。観客が温かい思いを抱いて劇場をあとにする、そんな作品になればと思っています。
──獅童さんとしのぶさんは若かりし頃に映像で共演されたり、勘三郎さん座長の「浅草パラダイス」シリーズでもご一緒されていましたが、夫婦役は初です。
中村獅童 以前、映画「男たちの大和/YAMATO」で思いを寄せ合う兵士と芸者の役でご一緒したことはありましたが、やっと夫婦になれるわけですね(笑)。1年ほど前、山田監督と打ち合わせをさせていただいたとき、「女優さんが出るのもありではないでしょうか」という提案をしました。しのぶちゃんとは同い年で、若い頃から芝居の話をしたり、映画の話をしたり、なんでも言い合える間柄。二十代のとき、一緒に飲んでいて、「自分がもし男だったら歌舞伎をやりたかった、自分だけ仲間外れのような気分だった」なんて打ち明けてくれた言葉がずっと心の中にあって。僕の勝手な、余計なお世話かもしれないけれど、そんな彼女と「歌舞伎座で一緒にお芝居したい」と思い、そのときに名前を挙げさせていただきました。「女性が歌舞伎座に」ということばかりがクローズアップされると戸惑いますが、僕たちとしてはごく自然な流れで決まり、コツコツ時間をかけて準備してきました。
──過去の歌舞伎座の歌舞伎興行では、二世尾上松緑さんと山田五十鈴さんが共演した「シラノ・ド・ベルジュラック」、初代水谷八重子さんが十一世市川團十郎さんや十七世勘三郎さんらと共演した舞台などいくつか前例もありますしね。しのぶさんの現在の思いも伺えますか。
寺島しのぶ 今の思い……そうですね。歌舞伎の世界は3・4日の稽古で初日が空いてしまう恐ろしいプロ集団じゃないですか。その中に私が入るわけで、とにかく山田監督による新しい「文七元結物語」に一生懸命没入して、腹をくくってがんばろうと思っています。チラシもできあがり、ポスターもできて、なんかこう周りからじわじわと迫ってきて(笑)、いよいよ実感も湧いてきました。覚悟はできています。
──お二人は、「文七元結」のどういった部分に魅力を感じますか?
獅童 長兵衛はどうしようもない人だけど、金を盗られて身投げをしようという初対面の若者に、せっかく娘がこしらえてくれた五十両をパッとやってしまう。「バカだけど、その気持ちわかるな」と共感しますね。まあ、家に帰ったら女房に怒られるんですけど(笑)。
寺島 登場人物たちはみんな、目を見合って真剣に対話して、罵声と唾を飛ばし合い(笑)、誰が何をしているのかあっという間に伝わってしまうような長屋に住んでいますよね。その界隈全体が家族のように助け合い、ときには悪口も言い合いながら生きている。人間同士の関わりがどんどん少なくなっていく現代、ここに描かれる夫婦がお互いに熱を持って生きる姿には大きな魅力を感じます。
──近年、獅童さんは、落語「唐茄子屋政談」をもとにした宮藤官九郎さんによる歌舞伎「唐茄子屋~不思議国之若旦那」(2022年10月平成中村座)で情に厚い江戸っ子も演じられましたし、博打好きの勝五郎を演じた「次郎長外伝 裸道中」(8月歌舞伎座)では、女房みきを演じた中村七之助さんとのやり取りに泣かされました。人情劇にご縁がありますね。
獅童 そうなんですよね。人情劇は僕自身、大好きです。余談ですけど「裸道中」で、パッと電気が消えて明るくなったら(勝五郎が博打に負けて)ふんどし一丁になっているアイデアは七之助くんが考えてくれたんですよ。
──あそこは客席がどっと湧きましたね!
「文七元結物語」で描く“家族”の姿
──広い歌舞伎座の空間をどう使うか、現在の演出プランについても教えてください。
山田 歌舞伎座の舞台面は横に長く、あの広さは途方に暮れます(笑)。僕は映画監督なので、どうしてもフレームのサイズ感で画作りを考えるんですね。美術の金井勇一郎さんに工夫してもらって、抽象性も加える方向で相談しています。芝居の空間はリアルに表現しますし、基本的なイメージは歌舞伎の世話物ですが、「いつもと少し違う」と感じていただくことが大事ですから。音楽の使い方も、田中傳左衛門さんといろいろ相談しているところです。横笛を使おうと考えていて、笛の高音がお兼のイメージに合うと考えているんですね。従来の歌舞伎音楽とうまくミックスしたいと思っています。
──監督は落語にもお詳しいので、セリフや人物設定に、落語から取り入れるエッセンスもありそうです。
山田 落語からは、随所でアイデアをもらっています。三遊亭圓生という名人は、お兼を長兵衛の後妻、つまりお久を継子に設定しているんですね。血のつながりがなくても彼女は深い愛情を持って娘に接している。僕は家族というものは、そういう意志的につながっていく、仲良くしようとする努力が必要だと思っています。
──圓生の「文七元結」では、お兼が「自分の腹を痛めた子ではない。しかし、あんな良い娘はいない」とお久を褒めます。「義理の仲ですが、それだからこそなおかばい合い、いたわり合う」……“なさぬ仲”である母娘の情を描きたいと語った芸談も残っています。
山田 優れた工夫ですよね。僕は、やたら血のつながりを重視する考えは、ちょっと人間として冷たいんじゃないかな、と思っているんです。お兼は人間としてお久を愛していると思うから。「男はつらいよ」の寅さんとさくらだって、腹違いの兄妹でしょう? おじちゃんとおばちゃんは兄の子供たちを面倒みたわけですし……しょっちゅう「とらや」にやってくるタコ社長なんて、全くの他人じゃないですか(笑)。
獅童 思い返すと、ご近所付き合いとか長屋文化って、僕が小さな頃にはまだ少しその名残がありましたね。醤油がなければ借りに行っていました。
山田 新しく引っ越してきた人が近所の人と仲良くなるために、かつては醤油をわざわざ借りに行っていたという説があるんですよ。ちゃんと返す人間だということがわかってもらえるし、何かを添えて戻せば交流も生まれる。人と人が仲良くなっていくための知恵ですね。
寺島 なるほど、知恵なんですね。
獅童 小さい頃、近所でシクシク泣いている男の子に声をかけて、うちで一緒にご飯を食べた……なんてこともありました。翌日きれいなお母さんがあいさつに来て。夜のお仕事をされている方でした。あの男の子は、夜1人で家にいるのが心細かったんだろうな。
山田洋次監督が構想する、中村獅童・寺島しのぶの映画
──ある程度人生経験を積んだお二人が、今、この年齢でご共演されるというのもステキなことです。
獅童 気づけば50年生きてきましたからね。四十代でやるのとはまったく違う長兵衛とお兼になると思います。
寺島 みきちゃん(獅童の本名・幹弘)とは小さな頃からの付き合いですから、私、そのときから時間が止まっていたんですよ。でも記者会見なんかで堂々とお話される姿がすごく立派で、「頼もしいな、大人になったなあ」と感心しながら眺めました(笑)。
獅童 あははは、しのぶちゃんはプレッシャーもあるかもしれないけど、一度きりの人生、やっぱりお互いに気持ちよくスタートを切って、思い切りチャレンジしたいからね。
山田 お二人の様子を見ていて、こういう映画のプロットを思いつきましたよ。幼馴染の2人がいて、お互いにケンカばかりしているけれども、ある日ふっと恋心が芽生える……どうですか?
寺島 あら、色っぽいですねえ。みきちゃんと大人の恋愛ものなんて……。
獅童 「笑っちゃう」って顔してる(笑)。でもね、うちの亡くなったお袋は、しのぶちゃんのことが大好きだったんですよ。竹を割ったようなチャキチャキした性格だったから、「しのぶちゃんをお嫁さんに欲しい」と常に言っていました。
寺島 みきちゃん本人がそんなこと考えもしなかったでしょー?(笑) でも私もおばちゃまをものすごくリスペクトしています。(尾上)眞秀の舞台のために夢中になっていると、ふとあの姿を思い出すんですよ。まだみきちゃんが小さかったころ、大きなつづらを担いで歌舞伎座の2階まで運んでいらしたでしょう?
獅童 鏡台を背負って運んでくれていたんですよ。
寺島 すごいですよねえ。お着物のセンスもカッコよくて、達筆で……みきちゃんが、ちょっとヘコんで「歌舞伎を辞める」というたびに「ああ、辞めればいいよ」と言いつつ、最後に決まって「負け犬!」と付け加えるのが忘れられないって教えてくれたじゃない? 今私、それを眞秀に使わせてもらっています(笑)。
獅童 「負け犬」なんて、そう言われる言葉じゃないから強烈なんだよ(笑)。21歳ぐらいのとき、京都公演の途中で大ゲンカして、母が怒って東京に帰っちゃったんですね。でもホテルに帰ったら「あなたは自分を信じて自分の道を行きなさい。あなたならできる」って置き手紙があって……思い出すと涙ぐんじゃうんだけど。
山田 「負け犬」と言っていたのが「あなたならできる」と書き置きするんだから、お母様は大したものだね。
寺島 とにかくカッコいいんですよ、おばちゃまは。
──しのぶさんは今回、鏡台はどうされるんですか?
寺島 今は眞秀が使わせてもらっている祖父(七世尾上梅幸)の鏡台を借ります……そういえば今回、私は誰の部屋に入るの?
獅童 そりゃ、一人部屋でしょう。
寺島 ……みきちゃんの部屋でいいよ。お互い目の前で着替えたって全然平気なんだから(笑)。
獅童 失礼しちゃう。
一同 あははは!
山田 たとえケンカしてもちゃんと回復できる自信を持っている、好き勝手なことを言い合える仲なんですね。「笠碁」という落語があってね、毎日一緒に碁を打っていた男2人がケンカをする。でも数日経つとまた一緒に碁を打ちたくてうずうずしてくるって噺なんだけど……まんまその“碁仇(ごがたき)”ですね(笑)。
プロフィール
山田洋次(ヤマダヨウジ)
1931年9月13日、大阪府生まれ。1954年に東京大学法学部を卒業し、同年に助監督として松竹に入社。1961年に「二階の他人」で監督デビューし、1969年に「男はつらいよ」シリーズをスタート。舞台作品も数多く手がけており、脚本・演出を担当した近年の作品に劇団新派「東京物語」「家族はつらいよ」、音楽劇「マリウス」ほか。現在、90本目となる監督作、映画「こんにちは、母さん」が公開中。
中村獅童(ナカムラシドウ)
1972年9月14日、東京都生まれ。1981年に歌舞伎座「妹背山婦女庭訓」で二代目中村獅童を名乗り初舞台。歌舞伎俳優として活躍する傍ら、2002年に公開された映画「ピンポン」で注目を集める。2015年に絵本を原作とした新作歌舞伎「あらしのよるに」を上演し、再演を重ねる人気作に。2016年には、バーチャルシンガーの初音ミクとコラボした超歌舞伎「今昔饗宴千本桜」を発表。現在、上映中の映画「怪物」「王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン」、配信中のドラマ「ケンシロウによろしく」に出演。11月に映画「首」、12月に映画「怪物の木こり」の公開を控えている。歌舞伎座12月興行に出演。
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寺島しのぶ(テラジマシノブ)
1972年12月28日生まれ、京都府京都市出身。文学座を経て舞台・映画・ドラマで活躍。荒戸源次郎監督の「赤目四十八瀧心中未遂」と廣木隆一監督の「ヴァイブレータ」(共に2003年公開)で国内外の映画賞の女優賞を数多く受賞し、若松孝二監督の「キャタピラー」(2010年公開)ではベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を獲得し、平柳敦子監督の「OH LUCY!」(2018年公開)ではインディペンデント・スピリット賞主演女優賞にノミネートされた。山田洋次監督「キネマの神様」、吉田恵輔監督「空白」で2021年報知映画賞最優秀助演女優賞を受賞。近年の舞台出演作に「物語なき、この世界。」「海辺のカフカ」「ヘッダ・ガブラー」ほか。
齋藤雅文が語る黙阿弥・前編
河竹黙阿弥の一人娘、糸を主人公にした新派の新作舞台「糸桜~黙阿弥家の人々~」(参照:波乃久里子「糸桜」決定版が上演へ、齋藤雅文「今、見るべきです、走り続ける波乃久里子を!」)が、10月12日と13日に再演される。本作は、河竹登志夫(黙阿弥の曾孫、歌舞伎研究家)の著書「作者の家」を原作とし、波乃久里子に当てて書き下ろされた作品で、劇中では、生涯独身で黙阿弥の著作を守り抜いた娘、糸女の情熱が描かれる。10月の上演に向け、同作の脚本・演出を手がける新派文芸部の齋藤雅文に、作品に込めた思いを聞く。
──「糸桜」は2016年、黙阿弥生誕200年記念として初演された作品です。今回、同作を上演する思いを伺えますか。
この舞台は、黙阿弥の長女であるお糸さんが黙阿弥の全作品を守り、新劇青年だった養子の繁俊先生と妻みつさんに託すまでの物語です。おそらく、この人たちの愛情と働きがなければ、黙阿弥の劇作家としての幅の広さと深さを伝える資料が現在のようには残らなかったでしょう。そこをどうしても取り上げたかったという思いが大きいですね。
それと、お糸さんの偉大さと情熱を通して、伝統芸能における女性の関わり方について表現したいと強く思いました。劇団新派は女流が中心の珍しい劇団ですし、女性がショービジネスを渡っていくことには、楽しさと面白さと華やかさと同時に、大変な困難が伴いますから。
──再々演となる今回、「新編」としてアップデートされる部分を教えてください。
原作では、関東大震災から4日間、お糸さん、繁俊先生、みつの3人が生き別れとなり、再会する部分が描かれています。血のつながらない彼らが、本当の親子として抱き合う場面がどうしても作りたかったんです。その画を、今回はセリフではなく、画としてお見せしたいと思っています。それともう1つの眼目は、ストレートプレイ初挑戦の尾上菊之丞さんという、魅力的な人材と出会えたこと。舞踊家は、季節も人物も、風の音でさえ身一つで表現できてしまうすごい存在です。今回は久里子も含めて、モノローグをいくつか書きました。そのモノローグを読む菊之丞さんが素敵なんです! ご期待ください。
──繁俊と菊之丞さんだけではなく、糸と久里子さん、みつと大和悠河さん、それぞれが役とご本人が肉薄する、齋藤先生ならではの“当て書き”部分も想像して観ると面白そうだなと。
僕は新派の文芸部として、現場で育って学んだことが多いので、役者さんに当てて書くこと以外、やったことがないんですよ。久里子は、女性として十七代目(父である十七世中村勘三郎)の遺志を継いでいると思いますし、逆に言うと、十七代目が男だからできなかったことをやろうとしている気がしています。僕の中で糸と久里子は、もう限りなく二重写しになっていますね。だから、どのセリフもお糸さんであり、久里子である。この虚実皮膜なところが、当て書きの楽しいところです。大和さんは、宝塚を辞めた後も芸事を続けられています。女性であるからこそ受ける困難も含めての思い、阪神淡路大震災で大変ご苦労なさったことなどを、この作品に重ね合わせてくださいとお伝えしました。
──久里子さんがもし歌舞伎俳優だったら演じてほしい黙阿弥作品を教えてください。
「髪結新三」ですね。(久里子は)優しいけれど、やっぱり怖いところがありますから。本当に良いものを見て育ってしまった、幸せと不幸せ、選ばれた者の不安と恍惚みたいな……僕なんかが生意気言っちゃいけませんが、十七代目のどこか草書体のような柔らかさと我流が久里子にもある気がします。リアルなキャラクターが似合うと思いますね。
──今月、歌舞伎座で上演される「水戸黄門」も齋藤さんの演出。2つの作品を観られます。
黄門様は、近代日本の庶民が憧れた典型的なヒーロー、痛快なエンタテインメントですね。これは黙阿弥作品が受け入れられる構造と同じで、庶民がつらくて苦しくて悲しいときに「じゃあいっそ盗賊にでもなって好き放題やりたい」と思うと同時に、「誰か偉い人がドーンと現れて、悪人を全部やっつけてほしい」とも思うじゃないですか。陰と陽、両方とも王道なんです。だから、どちらも堂々とやらせていただきます(笑)。
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