コクーン アクターズ スタジオ 第2期生が第1期生に質問 / 松尾スズキのメッセージ / ブルードラゴン稽古場日誌 (2/2)

主任・松尾スズキが思う、2年目のコクーン アクターズ スタジオ
松尾スズキ

松尾スズキ

第1期生がこのくらいの時期、どんな感じだったのか思い出せないのですが、第1期生と第2期生は当然個性もそれぞれですし、雰囲気も全然違います。第2期生はスタートして3カ月、まだまだ課題はありますが、これからのレッスンできっといい人が出てくると思っています。レッスンでは、第1期生が4名アシスタントで入ってくれているのでかなり助かっています。むしろ昨年は、アシスタントなしでどうやっていたんだろうなって思うくらい(笑)。4人とも積極的で、きっと今後も伸びるんじゃないかと思います。

今、第2期生のレッスンとブルードラゴンの稽古が並行して行われているので、ちょっと大変ではあるのですが、今のところブルードラゴンのほうは自主稽古がメイン。みんなが予想以上にクリエイティヴに積極的な俳優になってくれていると感じます。私も時々様子を見に行ってはいますが、7月後半になったらダダダッと詰めていく予定です。

ブルードラゴンは、第1期生が卒業する際に「この後、残りたい人?」と聞いて残ったメンバー11人と結成することになりました。全員、「一人前になりたい」という気持ちがすごく強いので、なんとか応えてやりたいと思って一緒にやることになりました。ただ8月の公演については、完全新作を書き下ろすことは難しかったので、2023年に上演した「シブヤデマタアイマショウ」の若者版という形で、歌ありダンスありコントありの作品にしようと思い、そのような形をとりました。シアターコクーン休館前に「シブヤデマタアイマショウ」で終わって、ブルードラゴンが「シブヤデマチマショウ」でつないでくれるのは面白いんじゃないかなとも思うし、彼らはコクーンの再開業前の最後を見届けるみたいな人たちなんで、そこに意味を感じてしまう部分はあります。

コクーン アクターズ スタジオは場当たり的に始めたのではなく、だいぶ温めていた企画。私は今62(歳)で、今くらい動いて指導できるのはあと4・5年……よく見積もって10年かなと思いますが、逆にそこに絞り込んでがんばりたいなと思っています。

プロフィール

松尾スズキ(マツオスズキ)

1962年、福岡県生まれ。1988年に大人計画を旗揚げし、1997年「ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~」で第41回岸田國士戯曲賞を受賞。2004年に映画「恋の門」で長編監督デビュー後、2008年には映画「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。2015年に映画「ジヌよさらば~かむろば村へ~」(監督・脚本・出演)、2019年に映画「108~海馬五郎の復讐と冒険~」(監督・脚本・主演)が公開された。小説「クワイエットルームにようこそ」「老人賭博」「もう『はい』としか言えない」で芥川龍之介賞にノミネートされるなど、作家としても活躍。2019年に上演した「命、ギガ長ス」が第71回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞。2020年、Bunkamura シアターコクーンの芸術監督、2023年より京都芸術大学舞台芸術研究センター教授に就任。

ブルードラゴン「シブヤデマチマショウ」稽古場日誌

ここでは、コクーン アクターズ スタジオ第1期生の有志11人と松尾スズキによる新ユニット・ブルードラゴンが、8月の公演「シブヤデマチマショウ」の稽古の日々をつづる。なお「シブヤデマチマショウ」は、2023年にシアターコクーン休館前に上演された「シブヤデマタアイマショウ」の流れを汲んだ作品で、松尾が過去に書き下ろした短編作品のほかダンスや歌を交えたエンターテインメントショウとなる。

ここでは座談会に登場した4名を除く、石田とねり、羽衣、大嵜逸生、嶋村連太郎、高橋卓臣、新関峻、森本彩日が4月からの稽古の様子を寄稿している。

2025年4月下旬某日 / 新関峻

ブルードラゴンとして初めての稽古が行われた際、「楽器ができる子はもってきて」とのお達しがあり、稽古の終わりに松尾さんから「せっかくだから、今一曲みんなで作ろう」とのお声がかかりました。
石田と私で歌い、周りの生徒達もそれに合わせて自分の楽器をひいたり、ゴミ箱や掃除用具などその場にあるものを思い思いに叩いてリズムを生み出したり、即興で踊る生徒もいました。
演奏が終わると松尾さんが「これで演目が一つできたね」と。シブヤデマチマショウの指針が決まった大事な日でした。

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

新関峻(撮影:伊藤大介)

新関峻(撮影:伊藤大介)

プロフィール

新関峻(ニイゼキシュン)

2000年生まれ。高校卒業後、Los Angeles City College Theater Artsに入学するもコロナ禍で中退。実家の醤油蔵に就職するが、CASへの入学を機に演劇活動を再開。特技はラップ、カホン。2025年9月 劇団柿食う客 「超音波」神奈川公演に出演。

2025年5月上旬 / 高橋卓臣

今日はショーとして披露できる企画の案出しです。創作をしていく稽古においてホワイトボードは常に必需品。とりあえずみんなで多くの案を出して、書いては消して、書いては消して、書いては消して……(4時間ほど経過)。決して妥協はできません。そんな中、クリエイティブな空間で突発的に生まれる奇跡のひらめき。ついに立ち上がり歓喜するみんなの一体感。長時間座り続けた身体のこわばりも、耐えきれない音の空腹感も、この仕上がりにはもう関係ありません。
やるべきことは成すごとに、山のように積もっていきますが、一つ一つをクリアにしていきます。何より、お客様に楽しんでいただくために。まずは自分たちが大いに楽しんでいく段階です!

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

高橋卓臣(撮影:伊藤大介)

高橋卓臣(撮影:伊藤大介)

プロフィール

高橋卓臣(タカハシタクト)

2000年生まれ、東京都出身。日韓ハーフ。小中高と筑波大学附属で過ごしたののち、桜美林大学芸術文化学群演劇・ダンス専修卒業。東京学生映画祭入賞の映画や大学 WEB CM などにも出演。特技はピアノ(3歳から現在まで)、剣道(三段取得)、乗馬(ライセンス取得)。

2025年5月中旬某日 / 石田とねり

「なんかテーマソングがあったらいいよね」というフワッとした目的のもと朝から集合。ホワイトボードを囲んでワードハントが始まりました。自分の生活や将来に結びつくような単語や文節を思いつくままに並べてゆきます。並び替えたり、足したり消したり。
「さすがにこの歌詞はダサいでしょー」「いいや! そのダサさが良いんだよー」なんてワイワイやっているうちに、たちまち夕方に!やばい、これって無事に完成するのかしらと不安に震えた1日でした。

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

石田とねり(撮影:伊藤大介)

石田とねり(撮影:伊藤大介)

プロフィール

石田とねり(イシダトネリ)

2002年生まれ。2025年3月に上智大学外国語学部英語学科を卒業。高校生のときよりギターの弾き語り動画をインターネットで配信。ジョン・ニッセル杯ほか英語スピーチ大会の受賞歴多数。

2025年5月下旬某日 / 嶋村連太郎

コクーンでの稽古の前にメンバー全員でファミレスに集まり、公演に向けての案出しをしました! 急に暑くなったこの日、漏れなくほぼ全員が銀色の器の冷麺を食し、いつもより冷たく、いつもよりキムチの匂いが気になりました! その後、公演の軸になるストーリーを大きな舞台の小さなエリアでホワイトボードを囲んで頭を悩ませました。渋谷で待つとは……私たちにできることとは……なんかいい感じにならないかと考え組み合わせるみんなの背中は小さかったですが、頭の中のアイデアは大きく、あっという間の時間でした! ただ、考えすぎて帰り道に頭がジワーっと。メンバー内で知恵を集結させ創作を楽しんでいます!

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

嶋村連太郎(撮影:伊藤大介)

嶋村連太郎(撮影:伊藤大介)

プロフィール

嶋村連太郎(シマムラレンタロウ)

2003年生まれ。日本大学芸術学部映画学科演技コース在学中。大学では日本舞踊やアフレコなどを学び、自身が監督を務める作品を含め映像作品36本、舞台5本に出演。現在、フリーで活動。

2025年6月上旬某日 / 森本彩日

初荒通し。構成や配役などまだ確定していない中での無理矢理通しではあったが、“とりあえずやってみる”ということの大切さを痛感。今後の課題や作品全体の流れが少しずつ見えてきて、問題点が具体的になった。スタッフワークも並行して行い、松尾さんにむけて小道具や衣装案の初出しの日でもあったが、イメージがより立体的になり、見落とし部分も多々見つかる。自分たちの力で作品を立ち上げることはとても大変な分、お客様に届き、楽しんで頂けた時の喜びはより大きくなるに違いない。そう思うとワクワクした。
通し後、松尾さんからアドバイスを頂いた上で、オープニングを固める。私たちらしく、ここからブラッシュアップしていきたい。本番まで約1ヶ月半。大切に紡ぎます。

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

森本彩日(撮影:伊藤大介)

森本彩日(撮影:伊藤大介)

プロフィール

森本彩日(モリモトアヤカ)

2000年生まれ。東京俳優・映画&放送専門学校卒業。円・演劇研究所にて芝居を学ぶ。「花瓶の中の海」で小劇場にて舞台初主演。主な出演にNetflix「全裸監督 シーズン2」など。8月20日から24日まで劇団イン・ノート「月の爆撃機」に出演。

2025年6月下旬某日 / 大嵜逸生

無理くり通した前回の稽古を経て、やっぱり無理があった箇所をどうしたら良くなるかみんなで話し合った。ブルードラゴンはとにかく話し合う。経験も出自もバラバラな11人だけど、それぞれの個性と知恵をかき集めてお客さまに楽しんでもらうべく試行錯誤中。もちろん自分たちもめいっぱい楽しめるように! この日はそれまで考えていた構成の土台から考え直した。こんなにも裁量を持たせてもらえて、僕らはほんとうに恵まれています。しかもコクーン規模で。それ相応のプレッシャーは当然あるけど、きっとこのエネルギーは糧になるしそれが舞台に乗っかるはず。みててください。僕ら11人が連なってコクーンの上で舞う姿を!

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

大嵜逸生(撮影:伊藤大介)

大嵜逸生(撮影:伊藤大介)

プロフィール

大嵜逸生(オオサキイッセイ)

1996年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。元くによし組劇団員。役者として劇団公演を中心に活動するほか、舞台音響として劇団「地蔵中毒」やコンプソンズ、いいへんじ、ウンゲツィーファ、猿博打など有望な若手団体にも多数参加。舞台映像配信チーム・ニュービデオシステムの一員でもある。

2025年6月下旬某日 / 羽衣

今日は歌とダンスの調整日でした! まずは、ブルードラゴンのテーマソング! 石田を中心に、音源を聴きながらメロディーの調整とリズムの取り方を再構築しました! 歌詞によって歌うリズムを変えたり、この曲で伝えたいことを再確認したり、みんなで熱量高く創作する時間は、とても尊かったです。
そして、羽衣と等々力を中心に、全員で歌い踊る曲の振付と構成の調整もしました! 俳優の強みやそれぞれの個性を活かしながら、お客様に楽しんでいただけるよう創作しております!

ブルードラゴン稽古の様子。

ブルードラゴン稽古の様子。

羽衣(撮影:伊藤大介)

羽衣(撮影:伊藤大介)

プロフィール

羽衣(ウイ)

2001年生まれ。多摩美術大学演劇ゼミ卒業。8歳よりダンス、中学から音楽と幅広く芸術にふれる。特技は即興ダンス。ヒップホップやコンテンポラリーなどジャンル不問。CMやMVなど出演多数。2026年1月から2月にかけてCOCOON PRODUCTION 2026「クワイエットルームにようこそ The Musical」に出演。