ステージナタリー Power Push - 博多座「熱血!ブラバン少女。」博多華丸&星野真里インタビュー
現役の高校生にぜひ観てほしい
取材に訪れたのは、東京での稽古最終日となった2月下旬。「明日は久々の福岡だな」「いよいよだね」とキャストたちの会話が聞こえる中、まずはシーンを抜粋して、音合わせが行われた。
演出のG2がテキパキと指示を出し、同じシーンを何度も繰り返す。G2がこだわっているのは、音とセリフのタイミングだ。ゆったりしたメロディーに突然、金管楽器の音が切り込み、曲調がガラリと変わるシーンでは、異変を告げる俳優のセリフと曲調が変わるタイミングを、ぴたりと重ね合わせるように稽古が続けられた。「音楽に負けないで!」と言いながら、G2は席から立ち上がり、指揮者のように俳優と音響スタッフに手で合図したり、俳優の横に立って具体的な動きをつけていったりと忙しい。博多華丸はそんなG2の動きを、自分が出ていないシーンの間も稽古場の端に佇んで、真剣な眼差しで見つめていた。
そしていよいよ、華丸の出演シーンへ。華丸は武勝先生を、実直で朴訥な好人物として表現する。大人にも生徒にも媚びることなく、自分の信じる道に邁進するその姿は、「ああ、あんな先生に出会いたかった!」と思わされるほど。一方、星野真里演じる生島聡美は、武勝先生に振り回されながらもそれを楽しむかのように、終始笑顔を絶やさない。困難にぶつかっても機転を利かせ、素早い行動力で高校生たちをぐいぐいと引っ張っていく。そこに斉藤優演じる牟田口正義や、金子昇演じる吹奏楽部顧問の小椎尾真司ら、個性的かつ憎めない登場人物が次々と加わって、武勝先生の周りには大きな人の輪ができていく。
また、宮﨑香蓮、入来茉里、神田朝香、上野遥(HKT48)らが演じる吹奏楽部員たちの奮闘ぶりにも注目だ。彼女たちがそれぞれの楽器を手に、合奏の楽しさを語るシーンでは、人と協働することのうれしさ、そしてそれを共に楽しめる喜びが、セリフの一言ひとことから溢れ出し、全員がキラキラと眩しく光る。メンバーの中には今回初めて楽器に触れた者もおり、舞台稽古と並行して演奏の稽古も積んだという。本番では、彼女たちも精華女子高等学校吹奏楽部に交わって演奏を繰り広げるので、ぜひそこにも注目しよう。
さらに劇中では、切実な思いを抱える陽加里の義母・八尋仁美(田中美里)、怪しげな雰囲気を醸し出す理事長・鐘ヶ江猛(宇梶剛士)、太陽のような存在感の校長・津留崎耀子(鳳蘭)とさまざまな人物が登場し、思いを錯綜させる。シリアスなシーンもあるが、カラッとした笑いと温かみのある博多弁のおかげで、作品全体は稽古場の空気そのまま、柔和で明るいムードに包み込まれた。
なお、稽古中に居酒屋のとあるシーンで一旦進行が中断し、G2がキャスト一人ひとりに細かく演出をつけていく時間があった。5分程度の間ではあったが、華丸は目の前にあった箸を1本ふと手に持って、稽古場に流れる音楽に合わせ、1人で黙々と指揮の練習をしていた。
- 作・演出:G2
- 出演:博多華丸、星野真里、金子昇、田中美里、宇梶剛士、森田順平、鳳蘭 / 宮﨑香蓮、入来茉里、神田朝香、上野遥(HKT48) / 武内由紀子、斉藤優、是近敦之、松永玲子
- 特別ゲスト:精華女子高等学校吹奏楽部
博多華丸(ハカタハナマル)
1970年福岡県福岡市早良区出身。福岡大学の落語研究会で出会った博多大吉と漫才コンビ「博多華丸・大吉」を結成した。ピンでは、RKBのラジオ番組「博多華丸のくろいさでつながるバイ!」を担当。また「R-1ぐらんぷり2006」に出演し優勝を収めた。俳優としては、映画「死にぞこないの青」、大河ドラマ「真田丸」などの話題作に出演。中でも、2013年に放送された、明太子の老舗「ふくや」をモチーフにしたドラマ「めんたいぴりり」で創業者役を演じ、好評を博した。それを受けて続編ドラマ、舞台も制作され、2015年の舞台版「めんたいぴりり」にて博多座で初舞台を踏んだ。今回が2度目の舞台出演となる。
星野真里(ホシノマリ)
1981年埼玉県出身。7歳より子役として活動をはじめ、1995年よりテレビドラマ「3年B組金八先生」シリーズに坂本金八の娘・乙女役として出演し、注目を集める。2001年には「新・星の金貨」に主演。その後もテレビドラマ「大奥」「プラトニック・セックス」、映画「私は猫ストーカー」など話題作に次々と出演する。特に、古厩智之監督「さよならみどりちゃん」で第27回ナント3大陸映画祭で主演女優賞、是枝裕和監督「空気人形」で 高崎映画祭最優秀助演女優賞を受賞した。舞台経験も豊富で、伊坂幸太郎原作「ポテチ」をはじめ、「晩秋」「ゼブラ」「春子ブックセンター」などに出演している。