ナタリー PowerPush - THE STARBEMS

震災+ウルトラセブン+面白おじさん! 日高央のラウドロックバンドの作り方

バンド加入の主な理由は「うだうだしてたから」

──そうした復興支援活動にはヒダカトオル(BAND SET)も積極的に参加されていましたよね。

日高 はい。ただ、被災地ではBEAT CRUSADERSの懐かしいナンバーに対するリクエストがすごく多かったので、そうした声にきっちり応えたんですけど、そうすると被災地以外では「解散したのになんでBEAT CRUSADERSの曲をやるんだ」っていう声もあったりして。もちろん俺としてはやりたくないことをやってたわけではなく、よかれと思ってやってたんですけど、ネット上で批判の対象にもなったんですよ。まあ、そのネット上の匿名の議論を目の当たりして自分の中でズレやジレンマが生まれたおかげで日高央という漢字表記の本名で、しかもお面を脱いで素顔で活動する決意ができたわけですし、その議論が震災直後のツアーや復興支援ライブを行うきっかけにもなったので、よかったなって感じではあるんですけどね。

──その後、ソロからバンドへと発展していく流れの中で、今のメンバーはどのように集まっていったんですか?

寺尾順平(B) 僕は2010年の「COUNTDOWN JAPAN」に出た3人編成のヒダカトオル(BAND SET)に最初から参加させてもらっているんですけど、もともとはBEAT CRUSADERSが“散開”したとき、日高さんに「次にバンドやるときは僕も一緒にやらせてください」って連絡したのがきっかけですね。

左から後藤裕亮(G)、菊池篤(G)

後藤裕亮(G) 僕はもともとやってたLOCAL SOUND STYLEってバンドが活動休止したあと、しばらくうだうだしてたんですけど、元Yacht.のピロ(大日野武則)から「今、日高さんのバンドでサポートをやっているんだけど、もう1人のギターがお休みだから、やってみない?」って連絡をもらって、2012年の1月からバンドに合流しました。

高地広明(Dr) 僕も自分のやってたSHENKY GUNSっていうバンドが2012年の3月に解散して、「どうしようかな?」と思っていて。ちょうどその時期のヒダカトオル(BAND SET)には、今HUSKING BEEでドラムを叩いている山崎(聖之)くんが参加していたんですけど、彼の都合が悪くなったということで、当時のヒダカトオル(BAND SET)のサポートギタリストにして僕の先輩でもあるDOACOCKの内藤(こうすけ)さんから「よかったらやってみない?」と声をかけていただいて。2012年の4月から参加することになったんです。

越川和磨(G) その次が僕になるんですけど、もともと毛皮のマリーズをやってて、解散後に同じくうだうだしてた頃、マリーズもお世話になっていたDECKRECっていうレーベルのオーナー、ネモト・ド・ショボーレと日高さんがたまたま会って「ギタリストを探してるよ」っていう話になったらしくて。その流れで2012年の5月に入った感じですね。

菊池篤(G) そして最後に入ったのが僕なんですけど、もともとはFed MUSICでベースを弾いていて、去年の夏までヒダカトオルとフェッドミュージックとして活動していたんですけど、メンバーが抜けることをきっかけにバンドが活動休止することもあらかじめ決まっていたんですね。で、日高さんもそういう状況を身近で見てわかっていたから「お前ヒマそうだからバンド手伝ってみない? 枠が空いてる鍵盤かギター、好きなほうをやっていいよ」って誘ってくれて。2012年の9月からギターで参加しました。

BEAT CRUSADERSをなぞっても意味がない

──THE STARBEMSは日高さんが最初に構想していたバンドのアイデアとは違うということですが、当初はどんなバンド像をイメージしていたんですか?

日高 最初はDJとかキーボードがいて、ピコピコしてて、それこそBEAT CRUSADERSから大きく逸脱してない音楽性、よくも悪くももうちょっと今風になるのかなって思っていたというか。自分としても今のTHE STARBEMSのように、ここまで変わることができるとは思ってなかったんです。あとメンバーのバランスについてもそうですね。もうちょっと地味な感じになるのかなって思っていたんですけど、何人かは地味なものの(笑)、いい具合に個性的なメンバーになったので、結果としてはよかったなと思ってます。

──このバンドはギタリストが3人在籍しているところも大きな特徴ではありますが、ギターのアンサンブルについてはどうお考えですか?

左から日高央(Vo)、越川和磨(G)

日高 自分も千葉出身だし地元の仲間も多いので、最初は千葉の人間だけのバンド、THE CHIBA'Sみたいな(笑)、そんな感じになるかなと思っていたんですよ。実際、今でこそ千葉人脈は寺尾と高地の2人だけになったものの、以前は同郷の後輩バンド、Asphalt frustrationの(後藤)大輔にキーボードを弾いてもらっていたし。でも、キーボードがいるとどうしてもBEAT CRUSADERSみたいになっちゃうんですよね。そのことを初めてスタジオで指摘してくれたのが西くん(越川)で。

越川 初めてリハへ行くとき、俺の中では「同じことをやっても意味ないな」って思ったんですよね。同じギタリストとしてBEAT CRUSADERSのプレイをなぞってもしょうがないし、なぞるようなプレイを求められるんやったら「新しくラウドなバンドがやりたい」という体で誘われた俺には加入する必然性がないなって。だから、最初のリハでは曲のキーとある程度の尺だけを覚えておいて、あとは好きにやってやろうと思っていたんですけど、ほかのみんなはデモに忠実に演奏してたから「新しくバンドをやっていく上で、そこはそれぞれのパーソナリティを発揮しないと意味がないやん、もっと自分らしさを出せへん?」って話をしたんです。

デモ音源にはなぜかキーボードの音が……

──作品を聴かせてもらって、1曲に、あるいは全体にものすごい情報量が詰め込まれているように感じられたのは、メンバーそれぞれの自己主張の結果でもあるわけですね。

越川 そうですね。最初は3人のギタリストがみんなコードを弾いたり、同じようなことをやってたんですけど、それではごちゃごちゃになっちゃうんですよね。だから、そこは3人の役割を分けようよっていうところからまずは始まったんですけど、日高さんから送られてくるデモには、なぜかこのバンドに存在しないキーボードが入っていて(笑)。

日高 (笑)。ギターを弾いてデモを作るのが面倒くさかったので、キーボードを弾いちゃったんです。

越川 だから「このデモをどうしたろかなぁ……」ってところから、自然な流れでゴスケ(後藤)はデモのキーボードをギターに置き換えたパート、篤はルックスそのままに低音の利いた重たいギター、そして俺はオーソドックスなギターという振り分けになっていったんです。

ニューアルバム「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」 / 2013年6月5日発売 / DefSTAR Records
初回限定盤 [CD+DVD] / 3200円 / DFCL-2008~9
通常盤 [CD] / 2800円 / DFCL-2010
CD収録曲
  1. DESTINY
  2. The Crackin'
  3. MAXIMUM ROCK'N'ROLL
  4. WISE BLOOD
  5. ARE U SURE?
  6. INSIDE OUT
  7. No Reaction
  8. FUCKIN' IN THE AIR
  9. HIGH RISK
  10. FORGIVENESS
  11. HUMAN RIGHTS
  12. DREADRONE
  13. GOOD-BYE LOVE
初回限定盤DVD収録内容
  • THE SEARCH FOR ANIMAL CHIN~東北ライブハウス大作戦ツアー“PLACE TO PLAY 2013”
THE STARBEMS(ざ・すたーべむず)

THE STARBEMS

2010年のBEAT CRUSADERS“散開”後、日高央(Vo)が展開していたソロユニット「ヒダカトオル(BAND SET)」がその前身。ヒダカトオル(BAND SET)のサポートメンバーとして寺尾順平(B / ex. ワイルドマイルド)、後藤裕亮(G / LOCAL SOUND STYLE)、高地広明(Dr / SHENKY GUNS)、越川和磨(G / ex. 毛皮のマリーズ)、菊池篤(G / Fed MUSIC)が続々と集結し、2012年9月よりTHE STARBEMSとして活動を開始する。2013年3月、ユニコーンのトリビュートアルバム「ユニコーン・カバーズ」に提供した「I’m a loser」のカバーがTHE STARBEMS名義での初音源となり、翌4月に1stシングル「FUTURE PRIMITIVE e.p.」を4444枚限定でリリース。そして6月、1stアルバム「SAD MARATHON WITH VOMITING BLOOD」をリリースする。