あなただけの思いを叶える、あなただけの音楽活動を──そんな理念を掲げるボーカリスト向けのサービスが存在することをご存じだろうか。「Music Planet(ミュージックプラネット)」と名付けられたそのサービスは、経験がなくても、自信がなくても、自分なりの音楽活動を楽しみたいと思っているボーカリストをプロがサポートするプログラム。今年9月には、本サービスを通じてオリジナル楽曲を制作した約50組のアーティストが、山口・山口きらら博記念公園で開催された音楽フェス「WILD BUNCH FEST. 2023」内の無料エリア・やまぐち富士商ドーム内に設置された「ミュージックプラネット ドームステージ」に立ち、パフォーマンスを披露した。
本特集ではミュージックプラネットのサービス概要や魅力を紹介するとともに、ヒダカトオル(THE STARBEMS)、竹渕慶、Rample Noteがゲスト出演した「WILD BUNCH FEST. 2023ミュージックプラネット ドームステージ」のライブレポートおよび全出演者のステージ写真を掲載する。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 平岩諒一、菰田麟太郎、北川悠馬
「ミュージックプラネット」って知ってる?
ミュージックプラネットは、レコード会社でも音楽プロダクションでもない、ボーカリスト向けのまったく新しいサービス。「ボーカリストとして活動してみたいが、何をどうすればステージに立てるのかわからない」「クオリティの高いオリジナル曲を作ってくれる知り合いもいなければ、オケを用意する方法もわからない」……そんな人向けに、プロのクリエイターが手がけるオリジナル楽曲をはじめとした“活動に必要なツール”をひと通り提供するサービスだ。
参加するためのオーディションにはスマホの録音データだけで気軽に参加できる。過去の実績も顔出しも必要なく、「歌いたい」という気持ちさえあれば誰でも挑戦することができる。オーディション通過後は、プロデューサー監修によるオリジナル楽曲制作、ボイストレーニング、カラオケ配信、アーティスト写真制作、レコーディングが行われ、プロデューサーとの面談の機会も用意されている。この一連の流れが、参加者本人の生活ペースに合わせて9カ月から1年半ほどの期間で実施される。
イメージとしては、路上教習に特化した自動車学校に入るようなものだ。よく「実地での経験に勝る学習はない」と言われるが、その意味において本プログラムで得られるものの大きさは計り知れない。実際にプロのクリエイターとともに自分のための楽曲を制作するという、専門学校でもなかなか経験できないような“プロの現場”を確実に踏むことができるからだ。相応の費用はかかるものの、ほかにない画期的なプログラムであることは間違いない。そのプロデューサー陣にはヒダカトオル(THE STARBEMS)や根岸孝旨、葉山たけしなど、著名な人材が名を連ねている。
プログラムを修了したあとは、アーティスト同士の交流の場や活動案内などが提供される「Music Planet+(ミュージックプラネットプラス)」というボーカリストコミュニティに所属することができる。さらにライブハウス・ASTRO LAB.の特別メンバーシップ(機材使用料およびチケットノルマなし)が付与されるほか、ミュージックプラネットが手がけるラジオ番組やネット番組への出演機会も設けられるなど、ボーカリストとしての活動が継続的にサポートされていく仕組みだ。
ミュージックプラネットでは、必ずしも参加アーティストがメジャーシーンで活躍することや楽曲のヒットなどを目的にしているわけではない。アーティストそれぞれが自分なりの価値観に基づいた音楽活動を継続的かつ安定的に行っていけることで得られる喜びを重視しており、実際に会社員など別に本業を持ちながらそれぞれのペースで音楽活動をしている参加者も多い。ミュージックプラネットはその手助けをするためのサービスという位置付けだ。
とはいえ、ミュージックプラネット出身アーティストが第一線で活躍しているケースもある。例えばテレビアニメ「15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ R2」のエンディングテーマ「無色透明」でソニー・ミュージックレーベルズよりメジャーデビューを果たした山下優太郎や、5人組アイドル・.BPMでリーダーを務める高任芹奈などが挙げられる。音楽活動の目的は人それぞれ違っていて当然であり、そのすべてを肯定するのがミュージックプラネットのスタンスというわけだ。
あの音楽フェスに「ミュージックプラネット」参加アーティストが多数出演
9月16日から18日にかけて山口・山口きらら博記念公園で行われた「WILD BUNCH FEST. 2023」において、ミュージックプラネットアーティストが出演するショーケースイベント「WILD BUNCH FEST. 2023 ミュージックプラネット ドームステージ」が開催された。フェス会場内の無料エリアに設けられた特設ステージに総勢60名にのぼるアーティストが集結し、ほぼ丸1日をかけて入れ替わり立ち替わり1曲ずつ披露。彼らが歌うのは、もちろんミュージックプラネットで制作したそれぞれのオリジナル楽曲だ。
ステージは10組前後ずつ4つのブロックに分けられたタイムテーブルで進行。第1ブロックにあたる「Vol.1」には13組18名のアーティストが出演し、年齢や性別はもちろん、音楽性もさまざまなアーティストたちが個性豊かなパフォーマンスを繰り広げた。このうち、優咲と椛のコラボで披露された疾走感のあるポップロック曲「My Best Friend!」と、ぎりちゃん。、真白龍、mana、リョオの4人で歌われたギターロック歌謡「LOVE CALL」の2曲は、この日のために書き下ろされた新曲とのこと。
続く第2ブロック「Vol.2」では、12組17名が熱唱。ここで披露されたLynne∞、汁、ユ。によるフォークロックナンバー「Master-Piece」も、この日のための書き下ろし曲だという。さらに、おかとやまと、ミヤジタカユキ、天野由香、奥田美和の4名は、JFL(日本フットボールリーグ)のチーム・クリアソン新宿の公式戦ハーフタイムショーのために制作されたオリジナル楽曲「Moment」をタオルを振り回しながらさわやかに歌唱した。
「今からでも全然遅くない。ぜひ一緒に音楽を」
4人と入れ替わりで姿を現したのは、プロデューサーとしてミュージックプラネットに関わる1人でもあるヒダカトオルだ。アコースティックギターをかき鳴らしながらOasis「Don't Look Back in Anger」を口ずさんでサウンドチェックを終えると、「東京から(アーティストを)応援に来ました」と宣言してギター弾き語りスタイルでのライブをスタートさせた。ヒダカは自身が在籍していたロックバンド・BEAT CRUSADERSやTHE STARBEMSの楽曲のみならず、ポール・マッカートニーや中村一義のカバーも惜しみなく披露していく中、MCでは「皆さんは、普段は仕事をしながら音楽をやっています。これを観ている皆さんも、誰でも音楽ができます」と力説。さらに「自分もただのサラリーマンだったが、まさかの35歳でメジャーデビューするという……そういう人生もありますんで、今からでも全然遅くないと思います。ぜひ一緒に音楽をやりましょう!」と力強く呼びかけた。
その後、ステージは第3ブロック「Vol.3」へ突入。14組18名が登場した同ブロックでは、RilとJ.Nによるディスコポップチューン「So Sweet」、miyu、ちょっぷ、音鳴向月葵、希来ひまりによるドラマチックなバラード「たわいもなくて」の2曲が新曲として披露され、続いて2組目のゲストアーティストとなる3人組コーラスグループ・Rample Noteが登場。メンバーのKENJIが社員としてミュージックプラネットに参画している彼らは、R&Bやレゲエ、ソウルなどを下敷きにしたスタイリッシュな楽曲群を美しいハーモニーで場内に響かせ、観客を大いに魅了した。
最後のブロックとなる「Vol.4」には、9組13名が出演。Akar!と白浜ゆあの2人が本ブロック唯一の書き下ろし新曲となる四つ打ちのポップロックナンバー「Perfect Love」を披露すると、それに続いてステージにはゲストの竹渕慶が登場。「ミュージックプラネットさんのコンセプトにはすごく共感している」という彼女は「Torch」など3曲を披露し、「歌い始めた頃と今とでは、歌っていることも全然違う。なので何歳から歌い始めても、そのときにしか歌えない歌があると思います」と聴衆やミュージックプラネットのアーティストたちにエールを送る。そして最後にはミュージックプラネットの上栗大雅、MIHO、クラマルイ、つかさあきのをステージに呼び込み、5人でアンセミックなEDMナンバー「Brand New Music」を歌い上げてこの長い1日を締めくくった。
ミュージックプラネットが見据える未来
ミュージックプラネットが目指すのは、“売れる / 売れない”だけに囚われない自由なアーティスト活動のあり方だ。多様性が叫ばれるこの時代にこうしたサービスが生まれたのは、ある種の必然であるとも言えよう。
最後に、「WILD BUNCH FEST. 2023 ミュージックプラネット ドームステージ」に出演した全アーティストのステージ写真を一挙掲載する。下は20歳から上は60歳まで、年齢も性別も職業もさまざまなアーティストたちがそれぞれに輝く姿はまさに多様性の形そのもの。ミュージックプラネットが実現しようとしているアーティスト活動の在り方の一端が、そこには確かに垣間見えるはずだ。