これは必ず名曲になる
──リード曲の「carpool」は1つひとつの楽器の音色やボーカルそれぞれが際立っていて素敵ですね。この曲はどのように作っていったのでしょうか?
「carpool」はけっこう後半のほうにできた曲で。アルバムはリリース時期が決まっているから、スケジュールを逆算していつまでにミュージックビデオを撮らなきゃいけないというのが決まっていて。「carpool」がまだできていない頃に、「シュレディンガー・ガール」ともう1曲の別の曲どちらかでMVを撮るという案もあったんですよ。自分的にはどちらもすごく気に入っている曲だけど、MVを作ってリードにするとなるとしっくりこなくて、結局別の曲は「in bloom」に収録するのもやめて。そうなったときに「1回考えをリセットして、シンプルに自分の好きなコードを手癖で弾いてそこから考えよう」と思ったんです。それでパっとサビまで歌って、同時にほぼサビの歌詞もできて、それをレーベルに送ったら「これはすごくいい!」と言ってもらえて。Sakuさんが「これは必ず名曲になるから絶対に俺にアレンジをやらせてほしい」と言ってくれたのはうれしかったですね。そのとき僕は半信半疑で「本当かな?」「まだわからん」みたいに返してましたけど(笑)。そこからするっとフルコーラスができて、そのときには「この曲がリードだな」という気持ちでした。不思議なもので、あまり考えずにメロディや歌詞が浮かんでくるような曲ってすごく聴きやすくて。「デート」とかもそうなんですけど、ひさしぶりにそのときと同じ感覚になりました。チーム内では「やっぱり俺たちが好きな曲はこういう曲なんだ!」「俺たちがやりたいのはこういうバンドなんだ!」みたいな話になりましたね(笑)。冬に出るアルバムのリードということもあって、グッドメロディなんだけどどこか影があるような、どちらの要素もあるような楽曲にしたいというふうに思っていて。それが土壇場で生み出せて助かりました。
──ギリギリにできたからこそ、今のご自身のモードが一番出ている曲になったんですかね。
そうかもしれないですね。
──続いてラップが印象的な「BOOKMARK」について聞かせてください。Jさんという方と連名ではありますが、アルバム収録曲の中で唯一編曲まで斉藤さんが担当されていますね。ちなみにこの曲のゲストボーカリストはどなたですか?
ゲストボーカリストもJさんですね。昔からの友人です。本来は「BOOKMARK」の元になった曲を、先ほどお話したリリース予定だった3曲入りシングルに入れようかなと思っていたんです。でも配信シングルをリリースすることに変更したところで保留にしていて。その音源をたまたまJさんに聴いてもらう機会があって、そうしたらすごくカッコいいアレンジとラップを入れてくれたんです。それをプロデューサーの方に聴いてもらったら「これはいいんじゃないか」と言ってもらえて。アレンジも2人でやった異色作ですね。学生がオールして、朝4時ぐらいに周りを見渡すともう空が青くなっていて、「時間を無駄にしてしまったな」という気持ちもありつつ決して悪い気もしない、みたいな感覚を描いた曲です。もしかしたらアルバムの中では一番ストレートな青春っぽい楽曲なのかなという気がします。あとJさん、いい声してますね。ラップうまいんだよなー(笑)。アルバムの中にこういう立ち位置の曲があるというのも、アクセントになって面白いなと思いますね。
──Jさん、ご友人だったんですね。Jさんとどんな話し合いをして「BOOKMARK」を完成させたんですか?
僕が元となる曲をフルコーラスで作っていたので、そこにラップをどのくらいの配分で入れるかというのは相談しました。あとこれは時代だなと思いますが、ほぼ完全にリモートで作って、Jさんと直接会ったのはレコーディングのときくらい。距離や時間といった制約にとらわれずに楽曲を作れるのは、それはそれで楽しかったです。
──「BOOKMARK」はストレートな表現のナンバーですが、その一方で斉藤さんが書く曲には余白のある表現の歌詞が多いなと感じていて。
ああ、そうかもしれないですね。難しい言葉を使って難しいことを言うのは実は簡単だと思っていて。今回は特に今までと書き方を変えていますね。簡単な言葉を2つつなげることによって新しいものを生み出していけるというのが言葉の面白さだ、というのが今のムードで。まだまだ手探りな中ではありますが、自分的には今作で、今までとはまた違う面白さのある歌詞が書けたのかな、なんて思いますね。
ファンと作っていく「space」
──今後の活動についても聞かせてください。12月11日にオフィシャルファンクラブ「space」が開設されましたね。今後ファンクラブを通じて、どのようにファンの方とつながっていきたいですか?
今後リリースやライブなどをやっていく中で、応援してくださっている方に安心してCDを手に取っていただいたり、ライブに来ていただける場所を作っていきたいなって思いまして、みんなで作っていく場という意味で「space」という名前を付けました。この名前には斉藤のペースとか、宇宙とか、場所とか、いろいろな意味を込めています。もともとなるべくゆるやかに長く、音楽をやらせてもらえたらいいなと思っていたこともあって。これから「space」がどんなふうに成長していくのかわからないですが、応援してくださる皆様にとっていい場所になっていけばいいなと思っています。
──来年4月から5月にかけてはライブツアー「We are in bloom!」も行われますね。
現実的な問題とすり合わせていかないと、今後状況がどうなっていくかはわからないですけど、楽しみにしています。1stアルバムをリリースしたあとに1stライブをやらせていただいたのですが、そのときからかなり楽曲も増えているので、今回のアルバム収録曲に限定しないセットリストにするつもりです。ぜひ楽しみにお待ちいただけたら。あとは1stライブのときにも思ったのですが、やっぱり元バンドキッズとしては生バンドで歌えるというのは本当に幸せで楽しいことだなと。正直最初はライブというものをそこまで熱望していたわけではなかったのですが、一度ライブをしてみて、ここでしか味わえないものがあるなということがわかりました。次にどんなパフォーマンスがお届けできるのかというのは、僕自身も楽しみにしているところではあるので、ぜひじっくりお待ちいただけたらうれしいです。
ツアー情報
- 斉藤壮馬 Live Tour 2021 “We are in bloom!”
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- 2021年4月17日(土) 福岡県 福岡サンパレス ホテル&ホール
- 2021年4月24日(土) 愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2021年5月2日(日) 大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)メインホール
- 2021年5月22日(土) 東京都 東京ガーデンシアター
- 2021年5月23日(日) 東京都 東京ガーデンシアター