ORESAMA|睡眠ファンタジーコメディ「魔王城でおやすみ」を彩るORESAMA的“睡眠ソング”

テレビ東京系ほかで放送中のテレビアニメ「魔王城でおやすみ」は、魔王タソガレにさらわれて魔王城に幽閉されたスヤリス姫が快適な寝床を手に入れるために奮闘する“睡眠ファンタジーコメディ”。このアニメにエンディングテーマ「Gimmme!」を提供したのがORESAMAだ。2人はORESAMAらしいダンスミュージックを軸に、アニメの物語に寄り添ったドリーミーな世界観を描いている。音楽ナタリーではORESAMAの2人にインタビューを行い、「Gimmme!」の制作過程から睡眠へのこだわり、さらにワンマンライブ「ORESAMA ONEMAN LIVE "Gimmme!"」に対する思いまで、幅広く話を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 斎藤大嗣

体感する音楽を

──シングルの話に入る前に、春から夏にかけてORESAMAの2人がどのようなことを考えながら過ごしてきたのか聞かせてください。

ぽん(Vo) 年明けくらいから新型コロナウイルスのニュースを気にしてはいたんですけど、まさか自分たちのライブが中止になるとまでは思っていなくて。私たちはアニソンを担当することも多いんですが、アニメの放送もどんどん延期してしまうし、ライブもできなくなるし……。ORESAMAの音楽をどうやってみんなに届けるか、すごく考えなければいけない時期でした。

小島英也(G) 時代に合わせた音楽の発信方法があるのは前提として、今回はそれが半ば強制的に、そして急速に変わったんだと僕は捉えていて。ORESAMAの音楽を待ってくれている人にどうやって僕らの音楽を伝えられるか、僕とぽんちゃんだけじゃなくて、チームのみんなで話し合う機会も多くて、すごく考えさせられた半年間でした。

左からぽん(Vo)、小島英也(G)。

ぽん 私たちはSNSがあまり得意じゃなくて、ネットを介したコミュニケーションがちょっと苦手なんです。そういう私たちにとって、ファンの方、応援してくださる方とコミュニケーションが取れる場所がライブだったんですよね。それができなくなって、ライブという場が自分たちにとってすごく大事な交流の場だったことに改めて気付かされたんです。先日、初めて配信ライブをやってみたんですけど、画面を通して音楽を届ける難しさをすごく感じました。実際にライブ会場に集まるのと違って同じ空間を共有できないから、画面のこちら側と向こう側で温度差が生まれてしまうと思うし……。ただ、ライブが終わったあとに「最初は横になりながら観てたけど、最後のほうは一緒に踊ってました」といった温かいコメントもたくさんいただいて、離れていてもやれることはあるんだなという手応えもありました。

小島 コメントを追ってみたら「初めてORESAMAのライブを観ました」という方もけっこういて。ORESAMAは東京でライブをすることが多いから、普段僕らが回れない地方の方々にもライブを届けられたのはいいことでした。ただダンスミュージックは現場ありきの音楽というか、本来であれば低音を体で浴びてもらいたいんですよ。配信ライブだとどうしても視聴環境をお客さんに委ねなければいけないので、そこが非常に難しくて。

ぽん 大音量の出るウーファーの付いたスピーカーとか、みんな持っているわけじゃないからね。

小島 クラブのスピーカーの前で聴くダンスミュージックと、ヘッドフォンで聴くダンスミュージックは全然違うんですよ。耳だけじゃなくて体で感じる、体感する音楽を早くみんなと共有したいですね。

J-POP感×ドタバタ劇

──シングルの表題曲「Gimmme!」は10月スタートのテレビアニメ「魔王城でおやすみ」のエンディングテーマとして制作されたものです。アニメサイドからはどのようなオーダーがあったのでしょうか?

テレビアニメ「魔王城でおやすみ」キービジュアル

小島 1980〜90年代を彷彿とさせる懐かしさのあるサウンドで、にぎやかな感じ、というオーダーでした。「魔王城でおやすみ」という作品は、主人公・スヤリス姫が魔王に捕えられて、魔王城という特殊なシチュエーションで安眠するために奮闘する……というコメディチックな、ドタバタ劇なんです。曲作りのとっかかりとしては、作品のにぎやかな部分、明るい部分を曲にしたかったというのがあります。

ぽん スヤリス姫が眠りの質を高めるためにいろんなミッションを遂行するんですよ。それこそダンジョンを攻略するくらいの勢いで。それがすごく貪欲なんですよね。いろんな素材を集めて枕を作ってみたり、ベッドをよくするために魔法の素材を集めてみたり。私も眠るのは大好きで、スヤリス姫の気持ちに共感できたから「今すぐ眠りたい!」という気持ちをストレートに歌詞に落とし込んでみました。

テレビアニメ「魔王城でおやすみ」より、スヤリス姫。

小島 曲は「おやすみ」という静かな言葉から始まるんですが、決して穏やかな音楽ではないんですよね。どちらかと言うと、夢の中で繰り広げられている楽しいことをイメージしながら曲を作り始めて。ORESAMAの得意とするダンスミュージックを基盤に、かわいい音、レトロな音、ちょっと不気味な音までいろいろ入れ込んで、僕らの音楽とドリーミーな世界を融合しようと試行錯誤しながら作ったのが「Gimmme!」です。

ぽん アニメのエンディングでは90秒しか流れないんですけど、私は2番のAメロが大好き。

小島 今回はけっこうメロディに細かい変化を付けてみたんだよね。「Gimmme!」は1曲通して歌の入っている比率がとても高い曲で、J-POPの特徴でもある展開の激しさをさらに強調することで作中のドタバタ感が表現できないかなと思って。フル尺では僕の考える睡眠の音、オルゴールの音を入れてみたり、いい意味でガチャガチャした曲になったと思う。

ぽん 小島くんのイメージではオルゴールの音が睡眠の音なんだ。

小島 夢を見ていて目が覚めそうになる瞬間ってあるじゃないですか。「目を開けたらきっと夢から覚めてしまう」と思う瞬間にオルゴールが鳴っているような感覚があって。それと、実はオルゴールが鳴るところで、ヘッドフォンなら聞こえるかもしれないくらいの低音を入れているんです。沈んでいくような音。

ぽん お腹に来る感じの音?

小島 お腹に来るよりもっと低い音かな。この音は眠りの世界を表現するだけじゃなくて、作品の舞台である魔王の世界をイメージした音でもあって。細かい低音の使い方をした曲でもあるので、早く大きいスピーカーで演奏したい曲でもありますね。

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ぽんの願望を叶えたMV