ORESAMA|睡眠ファンタジーコメディ「魔王城でおやすみ」を彩るORESAMA的“睡眠ソング”

歌のイメージでぶつかった「夜行ノ雨」

──シングルには表題曲のほかに「夜行ノ雨」というバラードナンバーが収録されていますね。

小島 僕の作る楽曲イメージとしてアップテンポなダンスミュージックを思い浮かべる方も多いと思うんですが、意外とスローバラードを作るのも大好きで。今回はスローで歌と歌詞をより楽しめる音楽を作りたいなと思って、まずはピアノと歌だけのスケッチを作ったんです。

ぽん 最近、小島くんがオススメしてくれる音楽もけっこうスローな曲が多いよね。

小島 世間的にもBPMはだんだん下がっている傾向にあるなと感じていて。一時期流行したチルミュージック的なものの流れを汲んだ1曲ですね。

ぽん 「Gimmme!」が完全に“陽”のイメージなので、もう1曲入れるなら性分的に“陰”の曲を入れたかったんです。この話をしたときにスタッフさんが「ホームパーティみたい」という例えをしていて、「あ、本当にその通りだな」と思ったんです。

──ホームパーティですか。

ぽん みんなが集まって遊んでいるときは楽しいけど、パーティが終わってみんなが帰ったあと1人で片付けをしているとき「ああ、終わっちゃったな」という寂しさを感じると思うんです。2曲入れるなら、楽しい曲とその影になる曲を作りたくて、今回は“眠り”にまつわる曲というテーマのもとに180°違う曲を入れることにしました。

──「夜行ノ雨」で描かれている“雨”というモチーフはどこからきたんですか?

ぽん 以前から雨の曲を書きたくて、ずっと考えていたんです。小島くんは雨って苦手でしょ?

小島 まあ、好きではないね。

ぽん 雨って陰鬱な気持ちになることも多いから私も得意ではないんですけど、雨が降っているからこそ何かに許されているような気持ちになることもあって。行き場のない気持ちとか、夜眠れないときの不安とかを全部かき集めて、「雨が降り続けてくれればいいのに」という思いを歌う曲にしました。この曲はレコーディングにすごく難航した曲で……。

小島 僕もぽんちゃんも表現したいことが明確にありすぎたからか、歌のイメージでけっこうぶつかるところがあったんだよね。

ぽん 落ちサビのところ、私は雨が上がってしまう絶望を歌いたくて、聞こえるか聞こえないかくらいのささやきにしたかったんですよ。でも小島くんからは歌として声がもうちょっと出てほしい、みたいな要望があって。ひさびさに意見がぶつかったよね(笑)。

左からぽん(Vo)、小島英也(G)。

小島 「ここの歌はこういうニュアンスじゃないの?」「いや、こういうニュアンスでは書いてない」みたいなことが起こった。ただ最終的にはサウンド面でもぽんちゃんの書いた歌詞に感化された部分が多くて、歌詞からインスパイアされて入れた音も多いんですよ。例えば曲中に雨の音を入れたのは歌詞が完成してからだし、その雨の音が2番のサビのあとで消えるんですよ。これはさっきぽんちゃんが言った「雨が上がってしまう絶望を歌いたい」という意図を表現したかったからですね。

ぽん ずっと自粛でネットを介してやり取りしてたから、意見がぶつかり合ってちょっと空気が悪くなる瞬間もあったけど、「音楽を作ってる」という感覚があって楽しかったな(笑)。

小島 あまり「カップリング」という呼び方はしたくないんですけど、表題曲とは違った作り方ができるから、僕もぽんちゃんもお互いに「こういうのが作りたい」という欲が強く出てくるんですよね。だから「夜行ノ雨」も表題曲と同じくらい力の入ったものだし、シングルではあってもアルバムを聴いたときくらい楽しんでもらえるように曲の表情、曲の構成をすごく練っているんです。

ぽん 「Gimmme!」と「夜行ノ雨」の表情が違いすぎるから、曲間でどれくらい間を取るかとか、すごく話し合いました。

小島 僕は間を短くしたいタイプの人間なんですけど、ぽんちゃんが「もう1秒長くしてください。いや、もう1秒……」という感じでかなりこだわっていて。

ぽん 心の準備ができる前に聴くにはもったいない曲なんだもん!

小島 (笑)。お互いのこだわりがかなり入ったシングルになったよね。

ぽん インストまで含めて存分に楽しんでほしい1枚になりました。

音楽は現場で楽しんでほしい

──10月18日には観客を招いたライブが開催される予定です。ライブを重視されているORESAMAにとっても待ちに待った機会ですよね。

ぽん そうですね。自粛期間中、小島くんがずっとYouTubeでいろんな人たちのセッション動画を観ていたみたいなんですよ。

小島 ずっと1人で曲作りをしていたのもあって、VulfpeckやScary Pocketsみたいなスタジオセッションでそのままレコーディングするような音楽体験に飢えていて。ずっとセッション動画を観てました。

──小島さんはソングライター的な見られ方をすることが多いと思いますが、プレイヤーとしての欲求も強く持ったアーティストですよね。

小島 バンドで音楽を始めたのが大きいかもしれませんね。打ち込みメインで曲作りをしていますけど、基本的にはバンドでの演奏を想定して曲を作っていることが多いんですよ。1人でダンスミュージックを作っていても、自分はバンドの人間なんだという感覚が今でも染み付いているんです。

──今回のライブは大事な1日になりそうですね。

小島 はい。配信ライブも楽しかったんですけど、やっぱりお客さんを目の前にしたライブが好きなんですよ。例えばお客さんのリアクションを見ながら「もうちょっとソロ弾いちゃおうかな」みたいにアドリブを効かすこともありますし。最初に話をした「いいスピーカーで低音を体で感じてほしい」というのも、会場に来てもらわないと体験できないことですから。

ぽん 感染防止対策もあって収容人数が限られてしまうので、今回のライブは2部制にすることでより多くのお客さんと一緒に楽しみたいなと思っています。それに、ライブの翌日には同じ会場でライブ再現システムを活用した「ディスタンスビューイング」という新しい試みが行われることになっています。これは私たちがステージに立つのではなく、前日のワンマンの映像と音をライブハウスで上映するもので、私たち自身もどういうものになるかすごく楽しみにしています。

小島 もし今回のディスタンスビューイングでライブの臨場感をそのまま再現できるのであれば、リアルでのライブの1つの手段になっていくんじゃないかなと考えています。映像と音をライブハウスで再現できるわけですから、全国いろんな会場を借りて同時に上映することも可能ですし、ライブハウスのスピーカーをお借りするので、ちゃんと体で感じる低音も皆さんに味わってもらえるはずなので。僕もまだ全貌は把握できていないんですが、いいものになる可能性を秘めたすごいプロジェクトだと考えています。やっぱり音楽は現場で楽しんでほしいので、ぜひ会場に足を運んでみてもらいたいですね。

ライブ情報

ORESAMA ONEMAN LIVE "Gimmme!"
  • 2020年10月18日(日) 東京都 Veats Shibuya [1部]OPEN 16:00 / START 16:30 [2部]OPEN 19:00 / START 19:30
YAMAHA×ORESAMA×Veats Shibuya presents LIVE ON DISTANCE VIEWING "Gimmme!"
  • 2020年10月19日(月) 東京都 Veats Shibuya OPEN 19:00 / START 19:30
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