ORESAMA|変わりながらも続いていく世界で鳴らす音楽

ORESAMAがニューアルバム「CONTINEW WORLD」を10月27日にリリースする。

「CONTINEW WORLD」は、2018年4月発売の「Hi-Fi POPS」以来、3年6カ月ぶりにリリースされるオリジナルアルバム。「Gimmme!」「OPEN THE WORLDS」「CATCH YOUR SWEET MIND」といったタイアップソングに、「パラレルモーション」「Chewy Candy」「CONTINEW WORLD」など書き下ろしの新曲を加えた12曲が収録される。シングル作品ではタイアップソングをリリースすることが多いORESAMAは、3年半ぶりのオリジナルアルバムをどのように作り上げたのか? ライブが思うように開催できなくなるなど、時流の変化を受けとめながらORESAMAが思い描く“新しい世界”について話を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / 星野耕作

ORESAMAの基本をすべて詰め込んだ曲

──普段タイアップシングルのリリースが多いORESAMAにとって、オリジナルアルバムは特別感のあるリリースアイテムですよね。

小島英也(G) はい。前回のアルバム「Hi-Fi POPS」のリリースが3年半も前だったので、今回はこれまでORESAMAで見せたことがなかった一面を音楽で表現できるんじゃないかとワクワクする気持ちが大きくて。この3年半の間に、僕は楽曲提供、ぽんちゃんは歌詞提供のお仕事もあって、個々の活動も充実していたんですよね。3年半分のORESAMAの成長をどれだけ1枚に凝縮できるか、ということを課題としてアルバム作りをスタートさせました。

ぽん(Vo)

ぽん(Vo) 私が考えていたことは、“時間の流れ”みたいなことをテーマに置きつつ、変わり続けていくことをアルバムで示したいなということでした。緊急事態宣言や自粛期間があって、ここ1年半くらいは今まで経験したことのない時間の流れを感じたので、そんな中で生まれた悔しさやもどかしさ、こんなときだからこそ生まれた強さや前向きさをORESAMAとして音楽に昇華したくて。命ある限り、私たちの人生は何があっても続いていくものだから。その中でどう在りたいか、どう変わりながら生きていくかを考えて、自分の願いのようなものが強く込められたアルバムになったのかなと思っています。

──今の話は「CONTINEW WORLD」というアルバムタイトルにもつながる話ですよね。

ぽん はい。「続く」という意味の「CONTINUE」と、「新しい世界」という意味の「NEW WORLD」を掛け合わせて、「CONTINEW WORLD」という言葉が浮かんできたときに「これだ!」と思って。

小島 アルバムのタイトルが決まったときに、まずは「CONTINEW WORLD」という表題曲に自分たちの過去も、これまでも、そしてこれからもすべて詰め込まなきゃいけないなと思って。だから前向きで踊れるディスコ調、さらにハッピーな感じがする、ORESAMAの基本とするところを全部詰め込んだ曲になっています。

ぽん 小島くんはこの曲をアルバムの1曲目のつもりで作っていたんだよね。でも私はどうしてもこの曲を最後にしたくて、私のお願いを聴いてもらいました。

──なぜこの曲を最後にしたかったんですか?

ぽん 「世界が続いていく」というメッセージを発するなら、最後は明るく開けた感覚で終わりたかったんです。そうすることで、繰り返し聴いてもらってもうれしいし、晴れ晴れとした気持ちで、それぞれの世界に戻ってもらってもいいなと思って。

小島 「表題曲はアルバムの頭にあったほうがいい」という思いはあったんですが、ぽんちゃんの話を聞いて、歌詞と改めて向き合ったときに、この曲を最後にするのはアリだな、という結論に至りました。この曲が最後にあることで“to be continued感”が出るし、すごく素敵なフィナーレを迎えられるアルバムになったと思います。

ぽん その節はありがとうございました。

小島 いえいえこちらこそ(笑)。

3年半の経験が生きた「Chewy Candy」

──アルバムを作るとなったときに小島さんが意識したことはなんですか?

小島 まず自分の好きなジャンルの音楽や、やってみたかったことみたいなことをほぼすべてアルバムに詰め込むことを意識しました。アルバムの書き下ろし曲は6曲なんですけど、そこで表現できなかったことはDISC 2のDressup cover(ORESAMAが自身のYouTube公式チャンネルに投稿している既発曲のセルフカバー企画)で形にしていますから、今回はいろんな表現をORESAMAの音楽で試せたと思います。そういう意味では本当に僕の趣味趣向が出た、個人的にすごく思い入れのある、満足した1枚になったと感じています。

ぽん 小島くんの好みがかなり濃く表れた作品になったよね。

──特にスウィング調の「Chewy Candy」には驚きました。ぽんさんのスキャットで曲が進行していくナンバーで、ORESAMAの中でも珍しい1曲ですよね。

小島 以前作った「cute cute」という曲がエレクトロスウィング調で、ライブでも盛り上がる1曲になったので、こういう路線でもう1曲作ってみたいなと思っていたんです。で、仮メロを送ってみたら、ぽんちゃんから意外な反応があって。

ぽん 小島くんに「歌で遊ぶ曲が欲しい」と無理なお願いをしたんです(笑)。

小島 うん。難しいんだよね。「遊びが欲しい」という要望は、いろんな解釈ができるから、どうするのが一番いいのかなって。

ぽん 歌詞がほぼない、スキャットで好きに歌うような曲は今までなかったので、すごく楽しい曲になりました。ただ、スキャット以外の歌詞に書かれている部分はちょっと重いんですよ。私たちが作っている音楽が、噛んで味がなくなったら吐き捨てられてしまうチューイングガムのようなものではなくて、噛むことで聞き手の中に溶け込むものであってほしい、という思いが込められていて。スキャットを軽やかに歌いつつ、実は重いメッセージ性を込められているというアンバランスさが気に入っています。

小島 この曲は前回のアルバムでは作れなかったものだと思っています。こういう遊びができるようになったところに、3年半の経験が生きているのかなって。

ORESAMA
ORESAMA

年を取ることで丸くなることはない

──3年半でお互いどのように成長したと思いますか?

ぽん 3年半前かあ……。小島くんなんか変わった?

小島 わからないってことは変わってないのかもね(笑)。ぽんちゃんは歌詞のアプローチがすごくよくなったと思うよ。「小島くんはこういう言葉が好きでしょ?」みたいなところをちゃんと押さえてくるんだよね。

ぽん それは歌詞の内容?

小島 内容はもちろん、メロディに対する音のハメ方とか、「ここは母音で始めたいところでしょ?」みたいな勘所とか。

ぽん 小島くんはどんどんいろんな音楽を吸収してORESAMAでの表現につなげているよね。

小島英也(G)

小島 うん。「歳を取ることで丸くなる」みたいなことをよく言うけど、僕はけっこう逆だと思っていて。歳を追うごとに「こういうことをやってもいいな」というものが見つかるし、今まで目についていなかった面白いことをやりたいという欲求も出てきている。「Chewy Candy」のような曲も今までのORESAMAの流れにはなかった曲だけど、面白いし、こういうことをやりたいという思いが素直に出てきた感覚があって。

ぽん Dressup coverを始めたことが大きかったかもね。Dressup coverに関しては、本当に小島くんの好きなようにやってもらっていたから、私はファンのみんなと同じ立場で楽しませてもらっていたんです。「この曲がこうなるんだ!」みたいな驚きがあって、今までのORESAMAの曲を使いながらも、今までのORESAMAにない音楽性を打ち出すことができたのかなって。

小島 自分のやりたいジャンルの曲を、以前作った曲のメロディを借りてやっているのがDressup coverのイメージなんだよね。自分にとってはほぼ別の曲を作っている感覚があるんです。Dressup coverは、もともとアルバムに入れるつもりがなかった音源なんですよ。ありがたいことに「CDにしてほしい」という要望を多くいただいたので、今回アルバムのDISC 2としてまとめさせてもらいました。