ORESAMA「TREK TRUNK」インタビュー|さらなる飛躍のための“活動休止”という選択

ORESAMAが今秋より一時活動を休止し、充電期間に入る。

2014年のデビュー以降、数々のアニメタイアップ曲の制作、3枚のアルバムリリース、積極的な楽曲提供など、約8年にわたって休むことなく活動を続けてきたORESAMA。一時活動休止はネガティブな意味合いではなく、ぽん(Vo)と小島英也(G)がそれぞれ自分自身と向き合うための時間を必要とした結果であるとアナウンスされている。音楽ナタリーでは休止前に発表する新作EPとライブBlu-rayをセットにしたボックス作品「TREK TRUNK」を制作中の2人にインタビュー。活動休止を決めた経緯や、休止を控えた今の気持ち、10月にリリースされる新作に収録されている新曲に込めた2人の思いを聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / 山崎玲士

ORESAMAがもう一段階進化するために

──秋から活動休止期間に入ると聞いて驚きました。なぜそのような決断を?

小島英也(G) デビューシングルの「オオカミハート」が2014年リリースなので、およそ8年間、僕とぽんちゃんの音楽活動って本当にORESAMA中心だったんですよね。8年やってきて、次の一手がないとかそういう意味ではまったくなくて。アイデアに詰まったときに散歩をしたり、シャワーを浴びたりするような気分転換のような意味合いで、ORESAMAから離れて個々の活動に専念することで、僕もぽんちゃんももう一段階進化できる、ORESAMAのさらなる飛躍が絶対にできるな、と考えていました。「活動休止」と発言することはすごく勇気の必要なことだし、散歩に例えると聞こえが悪いかもしれませんが、僕らの進歩にはいつか必要なことだなとはずっと考えていて。

ぽん(Vo) 私は本当に不器用な性格なので、1つのことにすべてを注がないと物事に集中できないタイプというか。だからこの8年間、ほとんどすべてをORESAMAに注いできて、私の人生がORESAMAそのものになりすぎちゃったところはあって。もちろん、それでいい気持ちもあるんだけど、個人のお仕事をいただけるようになってきたこのタイミングで、もっといろんな経験をしてもう一度集まったらどんなことができるようになるんだろう、というその可能性を知りたくなって。もっといろんなことをORESAMAが表現するために必要なことのかな、という気持ちがあります。

ORESAMA

ORESAMA

──ORESAMAはライブを頻繁に開催しているアーティストでもないので、「活動休止」と大きく発表せずに活動を縮小させる方法もあったのではと思いますが……。

ぽん 制作ユニットとしてのORESAMAは今後も続いていくわけですから、実際にチーム内でも「活動休止と言わないほうがいいのでは」という意見はあって、そこはすごく悩みました。発表することに踏み切ったのは、ORESAMAのことを応援してくださる皆さんのことを「最近ライブしないね」とか「リリースはないの?」みたいに、不安にさせたくなかったというのが大きいですね。ちゃんと活動休止前の最後にリリースをして、ライブを開催して、私たちとしてもファンの方と一緒にひと区切りして、活動休止の期間を迎えたほうがいいと思って。

「自分だったらこうする」を取っ払う期間

──充電期間中、お二人はどう過ごすんでしょうか?

小島 とにかく自分で作り上げてしまった“自分らしさ”“ORESAMAらしさ”というものをふるいにかけたい思いが強いですね。「僕が作るとこういう音になる」という固定観念を壊すまではいかなくても、ちゃんと精査したい。最近だとゲームのBGM制作をさせてもらったり、かなりいろんな分野の音楽に携わる機会が増えてきて、ジャンルはもちろん自分の手癖だったり、自分の考える方法論以外のところから刺激を受けることも多くて。今までの「自分だったらこうする」という先入観を取っ払って、もっと自由な発想で楽曲制作にトライしてみたいですね。ぽんちゃんは?

ぽん 制作ユニットとしては続いていくから、作詞の仕事は引き続き取り組むとして、ORESAMAのぽんとして歌う、プレイヤーとしてはお休みになるんですよね。私が歌う活動をするなら、ORESAMAが本拠地になることは間違いないから、再び歩き出したときに置いていかれないように鍛錬を積んでおかねばならないですね(笑)。あと、作詞というのは、自分の経験から引き出して書くことが多いから、いろんな経験をしなくちゃいけないなって。

小島英也(G)

小島英也(G)

小島 活動を再開させるとき、「やっぱりORESAMAはこれだよね」という懐かしい感じになるのか、それとも全部まっさらになって新しいORESAMAの音楽が鳴らせるのか、それが僕はすごく楽しみですね。

──今お話いただいた以外に、もっとプライベートで挑戦してみたいことなどはありますか?

ぽん あります?(笑)

小島 この期間に実現するかわからないんですが、自然の中にスタジオを作りたいとずっと考えていて。自然の中で生まれ育ってきた身からすると、やっぱり自然に囲まれるとすごいパワーを得られるんです。都会の喧騒から離れて音楽制作できる場所を築きたいなと思って、いろいろ候補地を考えています。

ぽん 住む場所を変えるのはすごくいいことかも。

小島 ぽんちゃんは何かないの?

ぽん そうだなあ。今はまだ最後のEPの制作があって、あまり先のことが考えられていないんですよね。何かあればSNSだって動かすだろうし、ORESAMAのぽんである時間が短くなるくらいの実感しかまだなくて。あ、小島くんは自動車免許とかも取ったら?

小島 それはそうだよね。地方にスタジオを構えたら必須になるし。

ぽん バイクとかいいじゃん!

小島 検討します(笑)。

ぽん(Vo)

ぽん(Vo)

これまで通り最高のORESAMAを1枚に

──10月7日には新作EPを含んだBOX作品「TREK TRUNK」がリリースされます。活動休止前の最後の作品、どのように作り始めましたか?

ぽん まず活動休止に入る前に音源をリリースするというのは最初から決めていました。こういうタイミングだからこそ人生の分岐点を駅や空港のようなものに例えて考えたときに、「TREK TRUNK」という言葉を思い付いて。これから先、私たちはもちろん、ORESAMAの音楽を「好き」と言ってくれるみんなにも十人十色のルートがあって、それぞれが乗り降りを繰り返しながらその先に進んでいく。いつかまた乗り合わせたら一緒に走っていこうよ、という思いを書きたくて、リード曲はもちろん、活動休止前のラストライブのタイトルも「TREK TRUNK」にしています。

小島 ぽんちゃんからこの言葉をもらったとき、「TRUNK」と付いているからには今までのORESAMAの活動を残らずこのトランクに詰め込まなきゃいけないよなと思って。トランクだから、僕は飛行機に乗る旅行を思い浮かべて。

ぽん 飛行機とは限らないよ!

小島 僕のイメージは飛行機だったの(笑)。だから曲のタイトルを「TREK TRUNK」に決めた段階で飛行機の離陸音を入れようと考えていたし。最後の1枚だからといって聴いてくれる人に別れを伝えるような作品にはしたくなくて。旅がテーマではあるものの、今回僕が心がけていたのは、これまで通り最高のORESAMAを音で表現すること。自分が自信を持って出せる最高の新曲にしたくてこの曲を作りました。なので、僕としてはこの曲をEPの最初で聴いてもらいたかったんですが……。

ぽん 「この曲は最後に収録したい!」って私がゴリ押して(笑)。

小島 毎回意見がぶつかっちゃうんだよね。

ぽん 小島くんが入れてくれた離陸音がすごく素敵だったから、最後はそれを聴いてさわやかに終わりたくて。

──アウトロがほかの曲よりもちょっと長いですよね?

小島 そう! この曲にはこの長さのアウトロが必要だったんです。トレンドとしてはイントロを短くする傾向や、ギターソロはスキップして聴く、みたいな話もあり、もしかしたらアウトロも短くしたほうが好まれるかもしれないんですが、僕は曲に求められたらイントロの長さ、ギターソロ、アウトロの余韻はそれ相応に必要だと考えていて。「TREK TRUNK」は飛行機が飛び立つ離陸音がアウトロに入っているんですが、飛行機を見送る人たちのことまで思い浮かんできて。だったらもうちょっと長いほうが……と試していたら、けっこう長く時間を取ることになりました。

ORESAMA

ORESAMA

──僕はてっきりEPの最後の曲だからアウトロが長いのかな、とも思ったんですが、これが1曲目に収録されてもこの長さでしたか?

小島 はい。この長さでした。このアウトロの長さは歌と同じくらいこの曲に必要なものだと思っていますから。

ぽん すごいこだわり。

小島 迷ったのはフェードアウトで終わらせるかどうか。フェードアウトで終わったほうがこれからも続いていくことを示唆できるかなと思ったんですが、曲のメロディとフェードアウトがあまり合わなくて。なので、1曲前の「NIGHT BEAT」がフェードアウトで終わる構成になっています。デモの段階では「NIGHT BEAT」がEPの最後になるだろうなと想定していたのもあって(笑)。

ぽん 「NIGHT BEAT」は私たちがORESAMAに向けて歌う子守唄みたいなイメージ。すごく優しい曲で、小島くんがEPの最後に収録したい気持ちもすごくわかるんですが、活動休止前にリリースする作品であるならば、明るくさわやかに手を振る作品であってほしいなという気持ちが強くあって。みんなの明るい未来が見えるような言葉で別れたくて、「グッドラック」というひと言で終わる「TREK TRUNK」を最後にさせてもらいました。

小島 意見はぶつかったけど、「TREK TRUNK」で最後を迎える音源になってよかったと思うよ。