LiSAインタビュー|「ソードアート・オンライン」と共に駆け抜けた10年、Ayaseとの共作「往け」に込めたアスナへの思い (2/2)

Ayaseのシーケンスと生演奏の融合

──Ayaseさんといえば、あのサウンドも含めてAyase節というか、パソコン1台ですべてを作り上げるラップトップミュージックの人という印象が強いので、バンドサウンドと重厚なストリングスによる生演奏にまず驚きました。Ayaseさんらしいキャッチーさと、江口亮さんのカオティックなアレンジの融合に。

あははは。私とAyaseさんと江口さんが混ざり合ったときに何か新しいものが生まれるかもしれない、それを「SAO」に持っていきたいという気持ちが大きかったです。でも、Ayaseさんの軸となるメロディの繊細さ、キラキラした感覚、だけど奥底にある切なさみたいなものが伝わってくるシーケンスはAyaseさんならではのものだなと思ったので、それを生かしながら私が歌詞を書き、江口さんが巧妙な味付けをして(笑)、という。

──なるほど。Ayaseさんのデモには後ろで走っているシーケンスのようなアレンジが施されていた?

そうなんです。そのデモが持っていた雰囲気をもとに膨らませていった感じですね。江口さんが私とAyaseさんのお父さんのような役割をしてくれました(笑)。

──「お前たちの言いたいことはよくわかるよ」みたいな。

そうそう(笑)。

──打ち込みで緻密に作り込まれたAyaseさんのサウンドに慣れているYOASOBIファンは驚くかもしれませんね。

そうですね。このメロディを歌い続けてるikuraさんはすごいなと思いました。

──さらっと歌っているように聞こえるだけに。

信じられないですね。難しい。私はついアクセルをベタ踏みしたくなっちゃうタイプで(笑)、でもそうすると最後までたどり着けないんですよ。ちゃんと計画を立てて歌いこなしていかないと走り切れない。

心の中を身体で表現するダンス

──ミュージックビデオはまたアニメの世界観とは離れたところで楽曲を表現されていますよね。シンプルに身体と光のみで表現しているというか。コンテンポラリーダンスに近い表現だと思いますが、前作「HADASHi NO STEP」(参照:LiSA「HADASHi NO STEP」インタビュー)のMVに続いてダンス、身体表現がメインになっていることが興味深く。

なるほど。この曲を受け取ってくださった深津昌和監督から、何かで説明するというよりは、自分の心中を自分自身で表現するところを撮りたいと提案をいただいたんです。シンプルな世界観の中で、私自身が表現するものを見たいと。そうなると、よりごまかしの利かない……自分自身もそうですし、カメラワークも照明も、皆さんも一緒に心を研ぎ澄ました中で撮らなくちゃいけない。セッションをしているような感覚でしたね。

──この空間と椅子がある、あとは歌があってリップシンクがある。という決まり事以外は、自由に?

そうです。

──こういった取材の場でフォトセッションの様子を見ていても、LiSAさんは身体表現が豊かな人だなという印象があったんですね。2作続けてダンスで表現するLiSAさんを見て、すごく伸びしろを感じたというか、極端な話、コンテンポラリーダンスのみのステージも観てみたいなと思いました。

あはははは。ちょっと面白いことに、このMVは「往け」の楽曲を流さずに撮ったんですよ。私は音を体で取ってしまうので、感情を体で表現するというよりは、音を表現してしまう。でも監督は、音ではなく心を表現するところが見たいんだとおっしゃっていて。それで、「往け」ではないBGMをかけながら撮っているんです、実は。違う曲がかかっているんだけど、私は「往け」の歌詞をなぞりながら踊っている。カメラマンさんも照明さんも私の心の音を聴いているわけじゃないから、それぞれ感じたものを撮ってくださっているんです。

「ああ、海外でライブがしたいな……」

──「往け」から間髪入れず、早くも次のシングル「明け星 / 白銀」の発売が決定しました。テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編のオープニング / エンディングテーマを収めた作品ということで、この話は別の機会にお聞きできたら。アウトプットが続きますが、インプットはできていますか? 最近観たり聴いたりしたものの中で興味を持ったもの、新しい価値観を感じたものなどあれば教えていただきたいと思っていたのですが。

最近、「スウィング・キッズ」という韓国映画を観たんですよ。タップダンスをする人たちを描いた映画なんですけど、同時に戦争映画でもあって。生まれた国も言語も考え方も違う人たちがタップダンスを通して仲間になっていくんです。最後に完成するタップダンスも素晴らしいですし、音楽を通してお互いを理解しようとする気持ち……私がパンクを好きになったときと同じように、生まれも育ちも年齢も違う人たちが音楽を通して一緒に楽しめるんだ、という音楽の描かれ方にすごく感動して。今自分がやっていることの可能性を感じた、というと大袈裟ですけど。漠然と「ああ、海外でライブがしたいな……」と思いました(笑)。

──(笑)。

「SAO」や「鬼滅の刃」もそうですけど、日本のアニメやアニメソングの素晴らしさは、言葉じゃないところで伝わっている部分も多いんじゃないかなって。今は国内でもあまりライブができていないけど、「スウィング・キッズ」を観て海外にも届けたいという思いが強くなりました。

プロフィール

LiSA(リサ)

6月24日、岐阜県生まれ。2010年春、テレビアニメ「Angel Beats!」の劇中バンドGirls Dead Monsterの2代目ボーカル・ユイ役の歌い手に抜擢され、同年5月にGirls Dead Monster名義のシングル「Thousand Enemies」をリリース。2011年4月にLiSA名義のミニアルバム「Letters to U」でソロデビューを果たす。2014年1月に初の東京・日本武道館ワンマン「LiVE is Smile Always ~今日もいい日だっ~」を行い、翌2015年1月には日本武道館2DAYS「LiVE is Smile Always~PiNK&BLACK~」を成功させた。2019年4月にシングルとしてリリースしたテレビアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマ「紅蓮華」が大ヒットを記録し、同年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。2020年には映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌「炎(ほむら)」で「第62回日本レコード大賞」大賞を受賞した。2021年5月、ソロデビュー10周年を記念したミニアルバム「LADYBUG」を発表。その後も9月にはTBS系テレビドラマ「プロミス・シンデレラ」の主題歌「HADASHi NO STEP」、10月には映画「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」の主題歌「往け」、11月にはテレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編のオープニング / エンディングテーマ「明け星 / 白銀」と立て続けに新曲をリリースする。

2021年11月17日更新