LiSA|楽しみながら大人になりたい ドラマ主題歌「HADASHi NO STEP」で新たな挑戦

4月に発売されたミニアルバム「LADYBUG」でデビュー11年目のスタートを切ったLiSAが、ニューシングル「HADASHi NO STEP」を9月8日にリリースした。

「HADASHi NO STEP」は二階堂ふみが主演を務めるTBS系ドラマ「プロミス・シンデレラ」の主題歌。これまで数々のアニメ主題歌を歌ってきたLiSAだが、テレビドラマの主題歌を歌うのはこれが2度目となる。ハードなロックサウンドを得意とするLiSAは、aikoやいきものがかりのアレンジを手がける島田昌典と初めてタッグを組み、これまでにないポップな楽曲でドラマの世界を彩っている。LiSAはこのドラマ主題歌にどのような思いで挑んだのか。盟友である“先輩”田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)とともに作り上げた表題曲およびカップリング曲について詳しく聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃

“ドラマ主題歌”を歌うLiSA

──5月にリリースされたミニアルバム「LADYBUG」について、LiSAさんは前回のインタビューで「10周年の締めくくりではなく、11年目の始まりに位置する作品」とおっしゃってました(参照:LiSA「LADYBUG」インタビュー)。実際、次の1歩と呼ぶにふさわしい新たな可能性に満ちた内容でしたが、2歩目の動き出しも早かったですね。「LADYBUG」の制作段階ですでに次のシングルの予定も立っていたんですか?

はい。「LADYBUG」を作っているときには、さらにその1歩先が見えている状態でした。「LADYBUG」は新しいアーティストさんや作家さんとの出会いを求めたアルバムでしたけど、「HADASHi NO STEP」には“ドラマ主題歌”という出会いがあって。

──LiSAさんはデビューからアニメのテーマソングを数多く歌ってきて、アニメ「鬼滅の刃」の主題歌である「紅蓮華」「炎」の大ヒットによって“アニソンシンガーLiSA”の存在はお茶の間レベルまで浸透しました。テレビドラマの主題歌は昨年の「愛錠」(東海テレビ・フジテレビ系ドラマ「13」主題歌)に続いて2度目ですが、アニメとは違う感覚がありますか?

「何か新しいものを作るぞ!」というよりは、新しい場所に向かうにあたって、じゃあどんな服を着ていくかと考えるような感覚で。今まではチュチュにドクターマーチンを合わせていた私が、もし舞踏会に行くならば、どんな格好をするべきか?みたいな。そのマナーを考えるような気分でしたね。マナーとしての着せ替えはしたけど、そこに向かって自分を変えて「この場になじむ女になるぞ」と考えるのではなく、自分らしく行くならば最低限のマナーは守りたいというか。

──その例えはすごくわかりやすいですね。アニメと同じタイアップソングの枠組みではあるけれど、「HADASHi NO STEP」はテレビドラマ主題歌としてのJ-POPマナーに則った楽曲という印象を強く持ちました。

そうなんですよ。テレビドラマ主題歌というLiSAの歴史としては新しいフィールドに挑戦するときに「誰と行きたいかな」と考えて……ブーツを履いて、テレビでも思い切り足を上げて演奏している田淵(智也 / UNISON SQUARE GARDEN)先輩を舞踏会に連れて行ったら面白いかなって(笑)。誘ったら先輩は何を着てくれるんだろう?というワクワクがあったのが、田淵先輩に曲をお願いした理由です。どんな格好で来てくれるかな、と思って待っていたら「えっ、タキシードで来たの!?」みたいな(笑)。

──すんごく伝わりやすい例えです(笑)。

先輩は先輩なりにマナーの上で踊ろうとしてくれた。それが「HADASHi NO STEP」かなと思います。

「楽しみながら大人になる」を目指して

──前回のインタビューではアニメ主題歌と実写映画主題歌の違いをお話しされていましたが、ドラマ「プロミス・シンデレラ」はマンガ原作です。原作のイメージから膨らませるという楽曲制作過程はアニメでもよくあると思いますが、そこには何か違いがありましたか?

ドラマだから何か特別なことをしなくちゃ、という構えた意識は全然なくて。アニメの楽曲を作るときも、小説やマンガが原作のときがあれば、台本だけをいただくこともありますし、いつもと同じ感覚ではありました。ただ、オープニングでこういう絵が付いて、エンディングはこういう感じで流れて、という形式とは違った形で主題歌が流れてくるドラマのフォーマットはちょっと想像しにくかったです。ドラマの主題歌はだいたいオープニングで流れるんじゃなくて、終盤のいいところで流れることも多いので。「東京ラブストーリー」でいう「チュクチューン!」が流れるタイミングをどう考えるか。

LiSA

──それも非常にわかりやすい例えですね(笑)。ドラマだと、ベストなタイミングで鳴る最高の「チュクチューン!」でどれだけカタルシスを得られるか、というのが重要ですもんね。

そう(笑)。自分が視聴者として楽しんできたテレビドラマの楽曲の使われ方は、やっぱり台本や原作だけではなかなかイメージできないので。マンガを読み込んで、主人公に共感できるところ、自分自身のものとして歌っていける言葉、ドラマのどこで流れてきても視聴者としてキュンとできるものを、という意識で作っていきました。「プロミス・シンデレラ」は恋愛が描かれてはいるんだけど、単なる恋愛ドラマではなくて。ドラマの製作陣は「恋愛でキュンキュンするドラマというよりは、意思のある強い女性としての主人公をフィーチャーしたい」とおっしゃっていて、そこの解釈は私が原作を読んで「この方向なら書けるかな」と感じたイメージとぴったりでした。主人公の早梅(はやめ)さんが二階堂ふみさんだと聞いたときは「めちゃくちゃぴったり!」と思って、それでよりイメージがしやすくなったところはありますね。

──「舞踏会にどんな服を着ていくか」という点では、楽曲制作においてアレンジが担う部分も大きいと思うのですが、島田昌典さんがLiSAさんの楽曲に参加するのは初めてですよね?

はい。島田さんはまさにそのシーンを作ってきた方なんですよね。「HADASHi NO STEP」では、島田さんの力を借りてJ-POPマナーを教えてもらったというか。

──確かに、島田さんが編曲を手がけたJ-POPアーティストのヒット曲が、ドラマなどお茶の間の世界における近年のスタンダードを作ってきたと言えますよね。

そうですね。アーティストが作った楽曲の芯の部分にあるしっかりと強い個性を、島田さんが汲み取ったうえで、より広く届きやすいアレンジにされていると思うんです。そんな島田さんなら、田淵先輩の魅力を損なわないように、その場のマナーに応じた服でコーディネイトしてくれるんじゃないかなって。島田さんのアレンジを聴いて「別に背筋を張ることはないんだよ、どんなステップで踊ってもいいんだよ」とアドバイスをもらえたような感じがしました。

──“テレビドラマ主題歌”という場に足を運んでみて、端的に楽しかったですか?

楽しかったですね。この曲で田淵先輩と一緒に新しいフィールドに挑戦したかったし、一緒に大人になりたいと思った。それはファンの子たちも同じで、これまでの“元気なキッズのLiSA”を作ってくれた先輩やファンのみんなと一緒に、恐れずに、楽しみながら大人になりたいと思ったんです。


2021年9月9日更新