骨が折れる音とSUZUKAの悲鳴
RIN そんなふうにして「SNACKTIME」ができました。
SUZUKA 最初に「Pineapple Kryptonite」ができたんですけど、それからは私たちも挑戦してみたかったジャンルとか方向性を漠然とまとめて提案して、それをマークが「じゃあこういうのじゃない?」って、いろんな楽器や道具で音にしてくれて。まるでおもちゃ箱を持ってきて作り始めるような感じでした!
MIZYU 「Pineapple Kryptonite」はセッションでマークが楽器と一緒にパイナップルを持ってきたところが始まりなんですよね。「なんでパイナップル!」って私たちは爆笑したり、その日に作ったダダダダダダ!って感じのビートに乗せて「パイナポパイナポ」って連呼したりして。私たちは作詞経験も激浅だし、フリースタイルでラップができるわけでもないから、最初はお遊びで言っていたんです。
──遊びが曲になっていったんですね。
MIZYU 最初に会ったときに「恋ゲバ」のパフォーマンス映像を観たマークが「殴るシーンが好き」と言ってくれていて、この曲にもファイトシーンを入れたいという話もありましたね。それで骨が折れる音を入れようということになったんですけど、実際に骨を折るのは無理だから、マークが木の棒を折って、SUZUKAがマイクを持って録音することになって。でも、その音が思ったよりすごくて、それに驚いたSUZUKAが悲鳴を上げて。折れる音じゃなくて、悲鳴の方が使われることになりました。
SUZUKA そんなふうに楽しみながら制作が進んでいく中でいっぱい会話するようになり「心がワーッとつかまれるオーケストラのような壮大さが欲しい」とか「最後はピアノで終わりたい」とかマークに伝えていったら、それがしっかり落とし込まれて。
KANON 曲やMVについて考える中で、マークの頭の中で妄想がどんどん膨らんでいって、笑いながら英語で説明してくれるんですよ。それでエイリアンとかいろいろ出てきて、私たちもたくさんアイデアが浮かんであの世界観が生まれました。
MIZYU もともとはこの1曲だけを作る予定だったけど、「あと何曲か作ろう」ってマークのほうから言ってくれました。とてもうれしかったです。
──それで滞在期間が1カ月の予定から2カ月半に伸びたんですね。
RIN 「Pineapple Kryptonite」のMV撮影と、ほかの曲の制作を進めていたら、いつのまにか2カ月半になってました。
KANON EPとして出たのは5曲だけど、あと2曲くらい作っていたんです。それを同時進行で完成させていく感じでした。
戸越銀座を牛耳る男との出会い
──2曲目の「Free Your Mind」はどういう経緯で生まれたんですか?
MIZYU まず「ロックソングを作るのはどうか?」ってマークが提案してくれて。それで太陽に当たってると踊りたくなっちゃうよね、心を解放してみんなで歌って踊りたいよね、みたいな気持ちを歌詞のテーマにしたらどうかって私たちが提案しました。アメリカは日照時間がすごく長くて、日差しが強くて、夜8時くらいまですごく明るかったから。
SUZUKA MVは日本に帰ってから撮影したんですけど、LAのチームが「スケートビデオにしたら面白くない?」って提案してくれました。
──サウンドと合ってますよね。このMVにはJESSE(RIZE、The BONEZ)さんも出てきます。
SUZUKA MVの監督とJESSEさんにつながりがあって、JESSEさんが住む戸越銀座商店街で撮影できることになったんです。当日JESSEさんはママチャリでピャーって出てきて「あんたたちのTikTok、娘と見てるよ。握手握手」って固く握手してくれて、撮影もめっちゃ盛り上げてくださってカッコよかったです。
RIN 街中の人みんな知ってるみたいで、JESSEさんはその辺を歩いている男子学生に「おう、お帰りー!」みたいに話しかけていて。すごく素敵な方でした。
この曲でみんなを狂わせたい
KANON 3曲目の「CANDY」は「欲望をテーマにしたい」ってマークに伝えたところから始まりました。そしたら、マークは本当にいろんな知識があるので、飴の実験の話をしてくれたんです。
MIZYU どういう実験かは伝えず、飴がたくさん置いてある待合室にいろんな人がいる状態を作って、その人たちが飴を取るのか取らないのかを観察すると、お金持ちの人ほど何個も食べるし、カバンにまで入れて持って帰るんですって。そして、そうじゃない人ほど一粒を大切に食べる。欲望の差。それで飴、キャンディって、シュガーじゃないですか。シュガーは人間が最初に摂取するドラッグで、摂取すると血糖値が上がってハイになったあと、血糖値が下がって憂鬱な気持ちになる。そういうシュガーハイとシュガークラッシュがあるということもマークが話してくれて、歌詞のテーマができたところで、サウンドについて私たちから提案したんです。
SUZUKA みんなが狂うイカれたビッグサウンドをやりたいってな。この曲でみんなをハイにさせたいし、マジで好きっす。
RIN 全部推し曲だけど、この曲をフェスとか大きい箱でバーン!って響かせたいなってすごく思いますね。歌詞もハイのヴァースとローのヴァースでテンションの浮き沈みもあって奥が深いし、そういうところも意識して聴いてもらえるとうれしいです。
MIZYU 本当に今ヤバい曲を作ってるなと思いながら作ったし、完成したら「これが私たちの曲か……」って。新世界、新しい私たちだと思ってます。
実はまったく無意味な曲、焼肉屋のテーマソングにしてほしい曲
──4曲目の「Fantastico」、5曲目の「Happy Hormones」もかなりクセがあって面白い曲ですよね。
SUZUKA 「Fantastico」は「イタリアンディスコをやったらいいんじゃない?」ってマークのほうから提案があって。
RIN イタリア語を歌ってるように見せて、実は歌詞にはなんの意味もないという曲なんです。
SUZUKA 昔は英語の曲も歌詞の意味わからんけど、なんかカッコいいから踊ってたし、そういう感覚って正しいなと思います! 雰囲気で感じるのもいいねって。
KANON この曲に関しては、言語の壁とか関係なく意味がわからなくても口ずさめるからいいよね。
RIN 「Happy Hormones」は幸せについて歌いたくて、インターネットで検索したら「幸せなときに出る3つのホルモン!」って記事が目に付いて。そこに快感ホルモン・ドーパミン、安心ホルモン・セロトニン、愛情ホルモン・オキシトシンってあったんです。
MIZYU それを普通に読んだらマークが「そのまま歌ってみて」って。
KANON 1番は本当に幸せについて歌ってるんですけど、2番は焼肉のホルモンの部位を入れようと知恵を振り絞ってます。「き(ミノ)頑張りに」とか。
SUZUKA 「コリコリ!センマイ!シマチョウ!」はもう普通に言っちゃってますけど「やる気!元気!いわき!」くらいのニュアンスで言わせていただきたいなと……。
RIN 焼肉屋さんのテーマソングにしてほしい。
SUZUKA してほしいな! 売り込みにいこう!
MIZYU 牛角はLAにもあったね。この曲の歌詞について、もう少し話すと「二酸化炭素ちょうだい」の部分はSUZUKAが制作中に歌っていて、RINが「二酸化炭素はいらなーい」って何気なくツッコんだんだよね。それでSUZUKAが「間違えた酸素だわー♪」って歌でアンサーしたら、RINが本当に酸素がなくなるくらいウケちゃって。この状況がすごく楽しいから、そのまま使うことになりました。
SUZUKA あんときめっちゃ盛り上がったなあ。
RIN みんな寝起きだったんですけどね。
──本当にLAでの日々がそのまま詰め込まれたような作品なんですね。ショーンから本作の制作について意見はなかったんですか?
RIN ショーンがマークのことを信頼し切ってる感じだったんですよね。「うちのリーダーズをよろしく」じゃないけど、そういう感じでマークに伝えてくれてるから伸び伸びとやれました。