ナタリー Super Power Push - 氣志團

「氣志團万博2013」開催への道

氣志團 インタビュー

氣志團がニューシングル「One Night Carnival 2013」とニューアルバム「氣志團入門」をリリースした。「氣志團万博2013 ~房総爆音梁山泊~」の開催を直前に控えた今、彼らがセルフカバー中心の入門編的作品をリリースする意図はどこにあるのか? ナタリーではメンバー全員にインタビューを行い(白鳥雪之丞は欠席)、その大胆な戦略と作品に込めた思いを明かしてもらった。

取材・文 / 宇野維正 撮影 / 井出眞諭

わかりやすい「入門編」が氣志團の“攻め”

氣志團

──今回、タイトルもズバリ「氣志團入門」という、ベスト盤的にして入門編的な作品をリリースすることになったわけですが。

綾小路翔(Dragon Voice) 自分たちでは「セルフカバー&ベストセレクト集」って言ってるんですけど、ベストというイメージではなくて、あくまでも「入門編」という位置付けなんですよ。ここ数年、Twitterをやるようになって、いろんな人から来る質問に軽いめまいと絶望を覚えることが多くて。だいたい言われることは「ケンカ強いんすか?」とか「単車何乗ってんですか?」とか「不良なんですか?」とか「その髪の毛は地毛なんですか?」とか、そんなものなんですよね。

──そして、それに1つひとつ丁寧に答えていく翔さんという(笑)。

綾小路翔 そう(笑)。自分たち的には11年前、それなりに華々しくメジャーデビューして、それからいろんなメディアに出させてもらって、ちゃんと行く場所行く場所で伝説となるようなことを仕掛けてきて。業界的にも注目していただいてきた中でいろいろやってきたっていう自負もあったんですけど(笑)、実際は俺たちのことなんて世の中の人は誰も知らないんだなって。これまで勘違いしていたんだってことを理解したんです。

──なるほど。

綾小路翔(Dragon Voice)

綾小路翔 最近出てきたバンドがうらやましいなって思うのは、WEBでナタリーさんとかがいろんなアーティストのことを詳しく追ってくれるようになって、不特定多数の人たちに情報がちゃんと届くようになったじゃないですか。僕ら、けっこう細かくいろんなことを仕込んできたつもりだったんですけど、デビューした頃ってようやく各バンドがホームページを持つのが当たり前になってきたような時期だったので、意外とコアなファンにしか情報が行き渡ってなかったんだなって。そう気付かされたのが2009年くらいのことで。そこから先の氣志團の活動は、もう1回セカンドウエーブを巻き起こしていかなきゃいけないとなってことに集約されていて。

──その成果の1つが、一昨年の対バンツアーであり、昨年の「氣志團万博2012」だったわけですよね。

綾小路翔 その過程で自分たちにとっての課題や反省がまだまだ見えてきて、新たな夢も自分の中で芽生えてきて、俺たちはまだ終わってないぞって確信が持てるようになってきたんですよね。で、今年もアルバムを作ろうということになって、曲はメンバーが作ってくれてるのがあったし、それぞれいい曲も多かったんだけど、ただ新曲を集めて、忙しい中でレコーディングして、それでも全然売れなくて傷つくっていう、その悪循環をやっていていいのかなあって。今の自分たちはやっぱり攻めなきゃダメだって思うんですけど、それって攻めなのかなあって。

──では攻めとしての、結成16年目の「入門編」ということなんですね。

綾小路翔 前回の取材でも言いましたけど、昨年の「氣志團万博」ではCDを買って帰ってくださった方がすごく多かったので、このタイミングを逃す手はないんじゃないかなと思ったのが1つ。あとはまた最近になってテレビやイベントなど、本当にいろんな方からお声をかけていただく機会が多くて。「氣志團万博」にあれだけの方々が毎年出演してくださるのもそうですけど、まだ我々のことを面白いと思ってくださる方がいて。そういう機会に自分たちに興味を持ってくれた方々がどのアルバムやシングルを買っていいかわからない。だったら一番わかりやすいものを作ってみるのはどうだろうと。長年、人に気付いてもらえないようなネタをたくさん作品に仕込んできた自分たちにとって、これだけわかりやすいものを作るというのは新しい挑戦なんですよね。

リスナーの思い入れ重視の再レコーディング

──メンバーの皆さんは、今回新たに代表曲を録り直すことをどのように受け止め、レコーディング作業に向かっていったんでしょうか?

西園寺瞳(G)

西園寺瞳(G) 例えばすごく好きなアーティストがいたとして、その人が1stアルバムの曲を十何年後かに録り直したとする。それって、きっといいものにはなってるはずなのよ。単純に演奏のスキルも上がってるし、レコーディングの技術も上がってるわけだから。でもリスナーの思い入れはそこにはないからね。思い入れがあるとやっぱり昔のやつに引っぱられちゃうよね。そこまではコントロールできないから。そこは聴く人に判断を委ねるしかないっていう話をみんなでしたよね。で、少なくとも俺ら的には、やってよかったなっていう結論が出て。

綾小路翔 事前にメンバー全員でけっこう話し合いをしたんですよ。自分たちの好きなアーティストがセルフカバーしたときにがっかりするのって、余計なこといっぱいしてるときなんですよ。でもそうしたくなる気持ちも今回よくわかった(笑)。

西園寺瞳 ミュージシャン的にはやっぱりいろいろやりたくなるんですよね(笑)。でも単純にサウンドが変わるだけでもけっこう曲の表情が変わるなってことに気付いて。そこからは変えようとしていたギターソロとかも極力原曲に即した感じにするようにして。

白鳥松竹梅(B)

白鳥松竹梅(B) やっぱりサウンドですね。昔録ったやつよりはいいサウンドにするっていう、それが一番。自己満足の世界なのかもしれないですけど、プレイヤーとしては昔のサウンドやリズム感を前回よりよいものにしないとやる意味がないから。

西園寺瞳 今回のベース、いいよね。いわゆるいい音みたいなのはレコーディング技術でどうにでもなるけど、もうちょっとね、エモーショナルな感じというか。「朝がくる度」のベースとか明らかに変じゃん(笑)。でも「こっちのほうが面白い!」ってものにちゃんとなってる。

ニューシングル「One Night Carnival 2013」[CD+DVD] 2013年9月11日発売 / 1890円 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax) / AVCD-48704/B
ニューシングル「One Night Carnival 2013」
CD収録曲
  1. One Night Carnival 2013
  2. 愛 羅 武 勇(2013)
  3. One Night Carnival 2013(KARAOKE)
  4. 愛 羅 武 勇 (2013)(KARAOKE)
DVD収録内容
  1. One Night Carnival 2013(MUSIC VIDEO)
  2. One Night Carnival 2013(KISHIDANCERCIZE<振付ビデオ>)
  3. 氣志團万博2012バックステージ映像
ニューアルバム「氣志團入門」/ 2013年9月11日発売 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax)
CD+DVD / 3990円 / AVCD-38790/B
CD / 3150円 / AVCD-38791
CD収録曲
  1. One Night Carnival 2013
  2. 黒い太陽(2013)
  3. 恋人(2013)
  4. 日本人
  5. キラ キラ!(2013)
  6. SUPER BOY FRIEND
  7. BOYS BRAVO!(2013)
  8. 朝がくる度(2013)
  9. 俺達には土曜日しかない(2013)
  10. Baby Baby Baby
  11. 落陽
  12. 鉄のハート(2013)
  13. 愛 羅 武 勇(2013)
  14. ありがとう ばかやろう
  15. SUPERSTAR(CDオンリー仕様に収録)
DVD収録内容

<MUSIC VIDEO>

  1. One Night Carnival 2013
  2. さよなら世界
  3. おまえだったんだ
  4. 愛してナイト!
  5. MY WAY
  6. SUPER BOY FRIEND

<GIG PERFORMANCE>

  1. 黒い太陽
  2. 俺達には土曜日しかない
  3. 高校与太郎組曲-喧嘩(クォーラル)ボンバー-
  4. オレたち
  5. 鉄のハート
  6. 愛 羅 武 勇

<KISHIDANCERCIZE(振付ビデオ)>

  1. スタンディング・ニッポン
  2. One Night Carnival 2013
  3. 恋人(2013)
  4. 俺達には土曜日しかない(2013)
  5. SUPER BOY FRIEND
氣志團(きしだん)

氣志團

千葉県木更津市でカリスマ的人気を得ていた綾小路翔を中心に1997年に結成。メンバーは綾小路翔(Dragon Voice)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk)の6名。「ヤンクロック」をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでライブを行い、2001年12月から3カ月連続で発売されたVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。その後「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発。2004年には東京ドームでワンマンライブを行い「NHK紅白歌合戦」にも出演した。2011年には計30公演におよぶ対バンギグシリーズ「極東ロックンロール・ハイスクール」を実施するなど精力的なライブ活動を継続。結成15周年を迎えた2012年に地元・千葉で大規模な野外イベント「氣志團万博2012」を開催し大成功に収めた。2013年9月にはシングル「One Night Carnival 2013」とアルバム「氣志團入門」をリリースし、「氣志團万博2013 房総爆音梁山泊」を開催する。


2013年9月12日更新