「氣志團万博2024 ~シン・キシダンバンパク~」WOWOW放送・配信記念|決して譲れないものを守り続けながら、進化と変化を恐れない 唯一無二のフェスDAY2のハイライトをおさらい 出演アーティストに聞く「あなたにとって『氣志團万博』とは?」

11月9、10日に千葉・幕張メッセ国際展示場9~11ホールで行われた氣志團主催の音楽フェスティバル「氣志團万博2024 ~シン・キシダンバンパク~」。WOWOWライブおよびオンデマンドではDAY1公演に続いて、2月9日にDAY2公演の模様が独占放送・配信される。

「氣志團万博」と言えば氣志團の地元、千葉・袖ケ浦海浜公園を舞台にした夏の終わりの恒例イベントというイメージが強かったが、今回は開催時期を11月に、そして会場を幕張に移し、従来の魅力はそのままに新たなフェスに生まれ変わった。音楽ナタリーではWOWOWでの放送・配信に合わせて公開したDAY1公演の特集(参照:WOWOW「氣志團万博2024」DAY1の見どころ紹介、出演者に聞く「あなたにとって『氣志團万博』とは?」)に続き、DAY2公演の見どころを紹介。毎回欠かさず「氣志團万博」に参加し、今回も2日間ともに現地でライブを鑑賞したライターのフジジュンが公演のハイライトをつづる。さらに出演アーティストたちに「あなたにとって『氣志團万博』とは?」という質問をぶつけ、それぞれからコメントを寄せてもらった。

なお、3月16日には「氣志團万博2024」のバックステージの模様を収めたWOWOWの特番が放送・配信される。

文 / フジジュン

「氣志團万博2024」DAY2 見どころ紹介

初回開催から見届けてきた者として感じたこと

「氣志團万博、生まれ変わります」という綾小路 翔(氣志團)の声明のもと、“シン・キシダンバンパク”をサブタイトルに掲げて、2024年11月9、10日に千葉・幕張メッセ国際展示場で開催された「氣志團万博 2024 ~シン・キシダンバンパク~」。DAY1の特集にも書いたが、正直、時期や場所の変更に対して不安や寂しさはあった。しかし当日を迎え、いざ幕張メッセに行くとそんな気持ちは一発でブッ飛ばされた。そこには「氣志團万博」ならではのワクワク感に満ちた空間があり、最強かつカオティックなラインナップによるぜいたくすぎるライブをたっぷり堪能して2日間を観終えた僕から出た感想は、「やっぱり『氣志團万博』最高かよ!」という単純明快かつ清々しいものだった。

そして、「氣志團万博」の歴史を初回開催から見届けてきた者としてもう1つ思ったのは、「今回は開催時期や場所の変更というわかりやすい変革があったが、これまでも『氣志團万博』の歴史は決して譲れないものを守り続けながら変わることを恐れない、進化と変化の繰り返しだったじゃないか」ということだった。

「氣志團万博2024 ~シン・キシダンバンパク~」の様子。(撮影:青木カズロー)

出演者に関して言うと、DAY1に出演したHYDEやこの日のトリを務めたももいろクローバーZ、DAY2に出演したゴールデンボンバーや湘南乃風といった、初回から参加している戦友たちとの絆は「氣志團万博」が決して譲れないもの。そして、時に矢沢永吉や山下達郎といったレジェンドが光臨したり、音楽フェス出演なんて考えられなかったテレビの人気者を招聘したり、その時代や最先端の音楽シーンを反映した新進気鋭のアーティストが参戦したりと、想像を遥かに超えたラインナップで世を驚かせ、ジャンルや世代の壁をぶっ壊し、出演アーティストの振り幅を年々広げていったのは進化と変化の賜物だ。

また、出演者も観客も1日を楽しく快適に過ごせるようにと、配慮を尽くしたホスピタリティも「氣志團万博」が決して譲れないもの。考え抜かれた会場設備などが年々進化し続けた結果、袖ケ浦時代は会場に観覧車まで登場! もはやテーマパークと化していた中、それと同時にオーディエンスが出演者のパフォーマンスに存分に熱狂できる環境作りにも妥協を許さず、“最強のロックフェスであること”という何より大切な部分を守り続けたことで「氣志團万博」は信頼と実績、そしてその歴史を積み重ねてきた。今回、開催時期が変わり会場が屋内になっても「氣志團万博」は「氣志團万博」のままだと感じたのは、そういった“決して譲れないもの”を変わらず守り続けていたからだろうと改めて思う。

そんな「氣志團万博2024」のDAY2公演全アーティストのライブの模様が、2月9日にWOWOWライブおよびオンデマンドにて計6時間にわたって独占放送・配信される。DAY2にはゴールデンボンバー、岡崎体育、湘南乃風といった、「氣志團万博」の歴史をともに作ってきた常連組が多数出演。さらにサバシスター、ano、Kroiといった新進気鋭のアーティストや綾小路が愛してやまないNEWSが初出演と、トピックスが満載! そして大トリ、総大将の氣志團はどんなステージを見せたのか!? 決して譲れないものと、変わることを恐れない進化と変化の精神。その両方をしっかり詰め込み、氣志團万博に新たな歴史を刻んだ「氣志團万博2024」DAY2のライブを存分に堪能してほしい。

ゴールデンボンバーや岡崎体育から伝わる万博愛

用意されたステージはYASSAI STAGEとMOSSAI STAGEの2つ。DAY2はWELCOME ACTとしてDJダイノジがMOSSAI STAGEに登場した。フジファブリック「Sugar!!」でDJパフォーマンスがスタートすると、大谷ノブ彦は「今日1日、全力で楽しむためのお手伝いに参りました!」と叫び、大地洋輔とダンサーたちの扇動を受けて会場中が笑顔で踊る。長い1日を楽しむ準備は万全だ。OPENING CEREMONY ACTとしてYASSAI STAGEに登場した君島大空(独奏)は仄暗いステージにたった1人で現れるや否や、クラシックギターを華麗に爪弾き、1曲目「- - nps - -」から美しく繊細なファルセットで会場中を魅了する。さらにMCで「すご~い、みんな朝強いんですね」とシャイな笑顔を見せて観客の心をつかんだと思えば、「向こう髪」の感傷的なボーカルと超絶ギターテクでフロアを圧倒。演奏後、拍手と歓声が鳴り止まぬ中、「氣志團万博2024」の開会を宣言した。

DJダイノジ(撮影:木村泰之)
君島大空(撮影:釘野孝宏)

そして、いよいよ本編が幕を開けた「氣志團万博2024」DAY2。この日の“特攻隊長”は、通算10回目の出演となったゴールデンボンバーだ。もはや万博恒例となっている全裸姿の煽りVTRから爆笑をかっさらい、つかみはOK。メンバーそれぞれのラップパートにタオル回しと見どころ満載な「Hey Yo!」で会場をブチアゲると、この日のために仕込んだネタを次々投下していく。会場中が笑顔で踊ったラストの「女々しくて」まで、樽美酒研二(Dr)が肉離れで松葉杖姿であることも気にならないほどアグレッシブなライブを見せた金爆。本編のトッパーという重要な任務を任されたからにはその期待に全力で応えたいという思い、万博への愛をしっかり感じた。

「氣志團万博」初出演時からYASSAI STAGEへの出演を懇願するも願い叶わず、その恨み節から“MOSSAI様”に変化。2022年にYASSAI STAGEへの出演を果たすも、MOSSAI様の祟りでドシャ降りに見舞われてしまう……。そんな物語を背負ってMOSSAI STAGEに再登場した岡崎体育は、フロアを埋める“MOSSAI様”のハンドサインに迎えられて堂々と客前へ。突き上げるダンスビートと巧みなステージ運びで観客の心と体を踊らせ、「Q-DUB(氣志團万博ver.)」の大合唱&ヘドバンで一体感を生むと、魂込めたバラードソング「エクレア」をしっかり聴かせてライブをフィニッシュ。彼からもまた、会場が変わってもMOSSAI STAGEを守りたいという思いをビンビンに感じた。

ゴールデンボンバー(撮影:釘野孝宏)
岡崎体育(撮影:木村泰之)

初出演組も示した「氣志團万博」へのリスペクト、the GazettEは6年ぶり出演

1曲目「黄金魂」から爆音を鳴らし、ブチアゲ曲を惜しみなく連投してフロアの熱気を急上昇させたのは湘南乃風。熱くまっすぐな愛を届けた「純恋歌」では会場中を埋めるペンライトの光が美しく揺れ、氣志團メンバーが乱入した「睡蓮花」ではタオル回しで爆風を巻き起こした。気合い十分、“鯖姉妹”の刺繍を背負ったそろいのツナギ姿でステージに上がった万博初登場のサバシスターは、「覚悟を決めろ!」でこのライブに対する自分たちの覚悟を見せつつ、「ポテサラ」「ジャージ」といった等身大の楽曲でキュートな表情を見せ、かわいらしくエネルギッシュな魅力全開のパフォーマンスを繰り広げた。

湘南乃風(撮影:青木カズロー)
サバシスター(撮影:釘野孝宏)

BiSH時代に出演経験がある「氣志團万博」にソロアーティストとして帰還したアイナ・ジ・エンドは「Frail」でライブがスタートした瞬間、艶やかでパワフルな歌声で会場を自分色に染め上げる。バックバンドとダンサーを従え、完成度の高いステージを披露してみせたアイナ。「私んとこ こないか?」というセリフで始まった「One Night Carnival」のカバーなど、彼女のパフォーマンスには氣志團への愛とリスペクトがたっぷり込められていた。怒号のような歓声に迎えられて登場したHEY-SMITHは、疾走感あふれる「Say My Name」でフロアをぶっかき回し、高らかにホーンを響かせる。その後も矢継ぎ早に投下されるパワフルで痛快な楽曲たちに、ステージの勢いとフロアの熱気は増すばかり。ラストは「音楽を好きな気持ち、氣志團を好きな気持ち、爆発させろ!」という猪狩秀平(G, Vo)の煽りとともに「Endless Sorrow」でフロアをぐっちゃぐちゃにし、百戦錬磨のフェス荒らしの本領を発揮した。

アイナ・ジ・エンド(撮影:青木カズロー)
HEY-SMITH(撮影:HayachiN)

紹介VTRの「the GazettEが、あの5人が帰ってきます」という綾小路の言葉にファンが絶叫。続いては6年ぶり5度目の「氣志團万博」出演となるthe GazettEが、2024年4月に亡くなったREITA(B)の魂を連れてステージへと上がった。5人で轟音を鳴らした「TOMORROW NEVER DIES」をはじめ、ファンの愛にあふれたヘドバンの風が天まで届く突風を起こす。彼らのライブはまさに“LOVE&WIND”だった。“愛脳”と書かれた「氣志團万博」仕様のオリジナル刺繍ランを羽織って登場したのは、万博初出演のano。音楽シーンのみならずさまざまな分野で活躍する彼女が「ボクはボクらしく、ステージに立たせてもらってます」と挑んだステージには、バンドサウンドに乗せてエレキギターを掻き鳴らして歌う勇ましい姿や、学ラン姿の女性ダンサーと振付を合わせるキュートな姿、「絶絶絶絶対聖域」の狂気をはらんだパフォーマンスなど、アーティストとしての多面的な魅力が詰まっていた。

the GazettE(撮影:木村泰之)
ano(撮影:堀内れい)

綾小路 翔がNEWSと夢のコラボ「とにかくもう死んでもいい!」

NEWSの万博初出演は、彼らのファンクラブに加入するほどの大ファンの綾小路にとって悲願の出来事。「weeeek」「チャンカパーナ」と人気曲が惜しみなく連投されると、フロアが大きく盛り上がる。綾小路と早乙女光を迎え、夢のコラボが実現した「One Night Carnival」では、綾小路が「とにかくもう死んでもいい!」と万感の思いを叫び、綾小路作詞&星野英彦(BUCK-TICK)作曲の「We are Team NEWS」では星野がまさかのサプライズ登場! 6人が並ぶ貴重かつぜいたくな映像は、古い言い方をするなら永久保存版としてビデオの爪を折って残してほしいほどだ。

世界基準のラウドロックでオーディエンスを圧倒したcoldrainは、呪術師のごとく轟音で大渦を生むと、壁を作っては破壊するような、観客を右へ左へと飛ばすパフォーマンスで空間を完全掌握。「Survive」で観客とともにジャンプして会場を揺らしたのち、「さっき『足りねえぞ』って声が聞こえましたけど、フェスなんて足りねえもんなんだよ、ライブハウスに遊びに来い!」と言い放ったMasato(Vo)。coldrainのライブを体験したことがない人はぜひライブハウスに足を運び、彼らの呪術を生で体験してほしい。

NEWSの増田貴久と氣志團の綾小路翔、早乙女光。(撮影:釘野孝宏)
coldrain(撮影:青木カズロー)

「GACKT様って実在するんだ!」といった驚きも含め、貴重すぎるという意味で生で観てほしかったアーティストがGACKT YELLOW FRIED CHICKENzだ。8年ぶりの「氣志團万博」、しかも12年ぶりに期間限定で活動再開を発表したばかりのYFCでの出演と、プレミアム感満載だったこのライブ。GACKTは和テイストの「斬 ~ZAN~」でパフォーマンスを開始すると、激しく妖しくミステリアスな独創的すぎるライブ世界へと聴衆を誘った。ギラギラとカリスマ性を放ちまくるGACKTの勇姿はもちろん、楽器隊の超絶プレイも必見!

万博初登場にして、MOSSAI STAGEのトリを務めたKroiは、“観てほしい”ではなく“今観るべき”バンド。綾小路に「次元が違いすぎて、妬み嫉みもない」と言わしめた彼らのライブは、さまざまなジャンルを吸収したハイセンスな音楽性と異常なほどの歌や演奏スキルの高さに見惚れながら、とにかく楽しくしっかり踊らされるという最高の体験だった。「俺あの日、Kroiのライブ観てるんだよ!」と自慢できる日はそう遠くないはず。

GACKT(撮影:木村泰之)
Kroi(撮影:堀内れい)

「氣志團万博」の総大将、ここにあり

そして、「氣志團万博2024」の大トリを務めたのはもちろん氣志團だ。出演者たちの思いを背負って2日間のお祭り騒ぎをビシッと締めくくる、総大将としての意地とプライドを懸けたこのステージ。「トップバッターから大トリまでやらせてもらいます」と力強く告げた煽りVTRを経て、バイクにまたがり登場した綾小路はいつになく眼光鋭く、気迫に満ちてるように見えた。「俺達には土曜日しかない」の全力パフォーマンスで派手やかにライブをスタートさせたのち、故郷への思いや友への誓いをつづった「房総魂」を気持ちいっぱいに届け、クライマックス感を増大させていく氣志團。決めポーズで拍子木の音が鳴らず、綾小路が必死で言い訳をするというカッコつけきれない展開もご愛嬌だ。いつか“あの地”に戻れるようにと願い祈るように歌った「落陽」から「One Night Carnival」へとなだれ込むと会場中の気持ちがひとつに。「氣志團万博」の総大将ここにありと思わされる、たくましく堂々としたステージで「氣志團万博2024」が大団円に導かれた。

氣志團(撮影:青木カズロー)

決して譲れないものを守り続けながら、変わることを恐れず進化と変化を繰り返す。「氣志團万博」の歴史を振り返ったときに感じたものは、リーゼントに学ラン姿の“ヤンクロック”という決して譲れない自身のスタイルを頑なに守りながら、新たな表現方法もフレキシブルに取り込んでいく氣志團の生き様そのものなのかもしれない。新たな歴史の始まりとなった“シン・キシダンバンパク”を大成功させ、現在は“シン・氣志團現象”と名付けた全国ツアーを開催中の氣志團。「氣志團万博2024」DAY2の映像・配信を堪能したあとは、ここから始まる氣志團の新たな歴史も見届けてほしい。