ナタリー Super Power Push - 氣志團
「氣志團万博2013」開催への道
物販ブースでやたらとCDが売れるフェス
──翔さんにとって、出演オファーをする基準っていうのはどこにあるんですか?
僕、本当に好きなアーティストがいっぱいいて、出てほしいアーティストがいっぱいいるんですけど、そこで線引きをしなくちゃいけなくなったときに、やっぱりポピュラリティの部分を大事にするのがこのフェスの役割だと思ってるんです。木更津の田舎者が観て「うわあ!」ってなるというのが1つ大事なことだと思っていて。やっぱりありえないことをやりたいんですよ。「この人とこの人が同じステージに立つってありえないよな」っていうのがやりたくて。だからなるべく他のフェスとはかぶらずにいきたいなと思うし、出演者同士の間に生まれる相乗効果、化学反応を大切にしたいんですよね。今年で言うなら、黒夢とVAMPSが同じ日に出るっていうのはすごいことだと思うし、BUCK-TICKが夏の野外に出てくるのもありえないことだと思うし。そういうとんでもない人たちを自分の地元に連れて帰って、ありえないような事件を目撃してほしいなっていう。
──まさに「故郷に錦を飾る」というロマンですよね。
ロマンと、やっぱり1つの使命感だと思ってます。相変わらず音楽業界にはあんまり明るいニュースはなくて、個々にはあるんだろうけど、全体が明るい感じではなくて。そんな中、フェスをはじめとして、すべてがルーチン化していて。もちろんルーチンとして成り立ってるんだったらそれはいいことなんですけど、もっとサプライズっていうか、「嘘だろ!」みたいな衝撃を、あんまり感じることがないなって。自分がこの時代に生まれてきたことの意味というか、自分がここにいることの意味というか、そういうことを考えていったら、みんなへの恩返しじゃないですけど、そういうサプライズを自分たちが仕掛けていかないとダメなんじゃないかなって思うようになって。それと実は、今回「もう一回やりたい」って思った最大の原動力になったのは、去年の「氣志團万博」でCDがすごく売れたことなんです。TSUTAYAさんがCDの物販ブースを出してくれたんですけど、そこが異常に盛り上がってやたらCDが売れるっていう。これはフェスの新しいあり方になったんじゃないのって。
──インディーズのアーティストにとって、ライブハウスでのCDの物販は不可欠なことですけど、その延長上にあるものとして巨大フェスを成立させることができるんだという?
そう。やっぱり生で観ることで、初めて安心感を持ってCDを買うことができるんだなって。あるいはフェスのお土産としてCDを買ってくれたってことですよね。みんなでライブで盛り上がって、その曲を帰りの車でも聴きたいっていう。選挙の投票券をつけるのもCDを売るための1つの形ですけど、「フェスのお土産」っていうのもCDを売る1つの形になるんだなって。単純に物販ってことを考えたら、Tシャツやタオルやリストバンドのほうがよっぽど利益率はいいですよ。でもその中でCDを買ってもらえる場所があるっていうのは、とても大事なことだなあと思って。その意義は出演者の皆さんにもわかってもらえたんじゃないかと思うんですよね。
固定観念を全部壊してやる
──それとやっぱり、これだけ異なるジャンルの猛者たちが集まるフェスというのも、他にはないですよね。中には戸惑うお客さんもいるのでは、と思うんですが。
それに関してはね、けっこうサディスティックな気持ちでやってます。ガタガタ言ってないでまずここに来ればいい。そしたらこっちがその固定観念を全部壊してやるからって。逆に出演者の皆さんにはね、「こいつら(観客)の今まで凝り固まったもの、全部ボコボコにしてやってください」ってお願いするような気持ちですね。マキシマム ザ ホルモンを聴いてるゴリゴリのハードコアが好きな人間が、黒夢に夢中になって帰る。乃木坂46だけを応援していた人たちが、仙台貨物に夢中になって帰る。その逆もしかりっていうね。みんなモンスタークラスですから、予備知識とか関係ないんですよ。僕自身がそうですもん。去年いろんな出演者のステージを観てボコボコにされましたからね。やっぱりね、本物ってすごいんですよ。僕たちの先入観とか普段の価値観なんて何も通用しない。
──逆に言うとそれだけの理想がないとがんばれるものじゃないですよね、フェスって。大変すぎて。
まあ、そうですね。この感じでやってる限りは絶対に儲からないですしね。さすがに今年は去年みたいな大赤字にだけにはしたくないですけど(笑)。
他のフェスとは向いてるベクトルが逆かもしれない
──他のフェスと比べて、フェス慣れしてないお客さんが多いというのも「氣志團万博」の特徴の1つだと思います。それについては主催者としてどのように対処していこうと思ってますか?
フェス慣れしてないお客さんが多いのは当然のことなんですよね。なぜなら「氣志團万博」には他のフェスにあまり出演されない方々が集まるので。だから実際に現場に来てみて「この格好だと大変だな」って思ったら、すぐにどうにかなれるようなものもグッズとして置いておこうと。なるべく価格もおさえて。本当だったら「物販でこんなことやりたい!」っていうアイデアも山盛りであるんですけど、それよりも来ちゃったはいいけど困ったっていうときに、すぐに使えるものだけを置くことを優先しようと思ってます。それが一番お客さんのためだと思って。とにかくね、日本の夏といえば花火大会、それに海水浴、その次に何かって言ったらフェス、みたいになってきてる中で、できるだけ門戸を広げたいんですよね。フェスに行く層を広げたら、やがてその人たちの何%かが単独のコンサートにも行くようになる。それを信じて草の根運動をしている感じですね。
──面白いですね。フジロックとかロック・イン・ジャパンとか、昔は音楽好きしか集まらなかったようなフェスが、年々リア充の遊び場と化している。その逆に「氣志團万博」は、もともとリア充な人たちを集めて、その人たちを音楽好きにしていこうとしている。
そうですね。始まった時代が違うというのもありますけど、向いてるベクトルが逆かもしれないですね。自分にはとにかく「日本の音楽界にはこれだけすごいものがあるのに、それを知らないで死んでいくのはもったいないよ」っていう思いがあるんですよ。僕はもともとジャンルレスで生きてきた人間で、ジャンルなんて何も気にしてなかったから。僕らが育ったバンドブームの頃って、音楽シーン自体が今よりもっとごった煮で、あいつらのやってること面白いみたいな、そういう単純な理由でつながりが増えていったんですよ。だからもっともっとミュージシャン同士でつながりたい。最初はね、「なんだ、あの野郎!」でいいと思うんですよね。で、お互いステージで出せるものを出しきったあとに、そこで初めて生まれる友情みたいな。そういうものを今でも信じてるからこそ、毎日ブッキングや準備に悲鳴を上げながらも、この「氣志團万博」をやってるんだと思うんです。
- ニューシングル「One Night Carnival 2013」[CD+DVD] 2013年9月11日発売 / 1890円 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax) / AVCD-48704/B
- ニューシングル「One Night Carnival 2013」
CD収録曲
- One Night Carnival 2013
- 愛 羅 武 勇(2013)
- One Night Carnival 2013(KARAOKE)
- 愛 羅 武 勇 (2013)(KARAOKE)
DVD収録内容
- One Night Carnival 2013(MUSIC VIDEO)
- One Night Carnival 2013(KISHIDANCERCIZE<振付ビデオ>)
- 氣志團万博2012バックステージ映像
- ニューアルバム「氣志團入門」/ 2013年9月11日発売 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax)
- CD+DVD / 3990円 / AVCD-38790/B
- CD / 3150円 / AVCD-38791
CD収録曲
- One Night Carnival 2013
- 黒い太陽(2013)
- 恋人(2013)
- 日本人
- キラ キラ!(2013)
- SUPER BOY FRIEND
- BOYS BRAVO!(2013)
- 朝がくる度(2013)
- 俺達には土曜日しかない(2013)
- Baby Baby Baby
- 落陽
- 鉄のハート(2013)
- 愛 羅 武 勇(2013)
- ありがとう ばかやろう
- SUPERSTAR(CDオンリー仕様に収録)
DVD収録内容
<MUSIC VIDEO>
- One Night Carnival 2013
- さよなら世界
- おまえだったんだ
- 愛してナイト!
- MY WAY
- SUPER BOY FRIEND
<GIG PERFORMANCE>
- 黒い太陽
- 俺達には土曜日しかない
- 高校与太郎組曲-喧嘩(クォーラル)ボンバー-
- オレたち
- 鉄のハート
- 愛 羅 武 勇
<KISHIDANCERCIZE(振付ビデオ)>
- スタンディング・ニッポン
- One Night Carnival 2013
- 恋人(2013)
- 俺達には土曜日しかない(2013)
- SUPER BOY FRIEND
氣志團(きしだん)
千葉県木更津市でカリスマ的人気を得ていた綾小路翔を中心に1997年に結成。メンバーは綾小路翔(Dragon Voice)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk)の6名。「ヤンクロック」をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでライブを行い、2001年12月から3カ月連続で発売されたVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。その後「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発。2004年には東京ドームでワンマンライブを行い「NHK紅白歌合戦」にも出演した。2011年には計30公演におよぶ対バンギグシリーズ「極東ロックンロール・ハイスクール」を実施するなど精力的なライブ活動を継続。結成15周年を迎えた2012年に地元・千葉で大規模な野外イベント「氣志團万博2012」を開催し大成功に収めた。2013年9月にはシングル「One Night Carnival 2013」とアルバム「氣志團入門」をリリースし、「氣志團万博2013 房総爆音梁山泊」を開催する。
2013年9月12日更新