ナタリー Super Power Push - 氣志團
「氣志團万博2013」開催への道
反省じゃなく「楽しいね!」の気持ちだけ
星グランマニエ(G) 今回やって一番よかったなって思ってるのは自分かもしれない。昔はレコーディングがどういうものか全然わかんない状態で、スタジオに入ることにものすごく恐怖感があったんですよ。とにかく魂を込めなきゃみたいな気持ちで、あとは勘だけでやってて。「これでいいのか」「これはどうなんだろう」みたいな感じでずっと過ごしてきてて。今回初めてちゃんと耳で音を聴けたというか、自分にとって過去の曲たちが初めてスタート地点に立ったみたいなのがあって、ものすごく楽しかった。あれだけ苦手なレコーディングだったのに「もっと前の曲もやらない?」って言い出すくらい、ずっとスタジオにいたいと思った。「音楽って楽しいんだ」っていうのを、ようやく自分で感じ取れるようになれたのが非常にうれしかったですね。
綾小路翔 ようやくそこに気付いたっていうね(笑)。
星グランマニエ 本当に(笑)。スタジオのブースって孤独すぎて。毎回ギリギリの状態で、ものすごく精神をすり減らしてやってたんですけど、今回からすごい楽しくなってきて。これは身体にもいいぞみたいな(笑)。これまで10年以上死ぬほど悩んできて、みんなにもあまり打ち明けられなかったんだけど。
西園寺瞳 僕、ランマと家が近いんで、レコーディングの帰りによくタクシーで一緒に帰るんです。これまではいつも今日はああだったとかこうだったとか、反省ばかりしてたんですけど、今回は「楽しいね!」しか言わなかったもんね(笑)。
白鳥松竹梅 あと、何が変わったって、歌が一番変わりましたね。
西園寺瞳 そう。歌が本当によくなった!
綾小路翔 歌はね、本当に今回録り直してよかったと一番思ったところで。ミュージシャンって、みんな自分の作品を友達にプレゼントしたりするじゃないですか。やっと僕も友達にプレゼントできる作品ができたなって。だからバンドとしてはデビューするタイミングがようやくこれで整ったっていう(笑)。ずっと永遠のシックスティーンって自分たちのことを言ってきましたけど、もうね、ブレイクするのはシックスティのときという体に切り替えましたので。60歳でブレイクするために再スタートを切った、その1年目としてはいいとこきてるじゃんっていうふうには思ってますね(笑)。
「One Night Carnival」は自分たちの財産
──今回の「氣志團入門」って、選曲も“ポップサイドオブ氣志團”という感じですし、ジャケットのアートワークも含めて「あのパンクバンド的な氣志團はどこに行ったんだろう?」と思う昔からのファンもいると思うんです。そこについては何か言っておきたいことはありますか?
綾小路翔 最初は「セルフカバーっていうのは、ロックバンドとしてはカッコいいことじゃないよね」とか「やっぱり新曲で勝負してくのが俺たちなんじゃないの?」とかって意見をメンバーからもらったんですよ。そこでみんなと話し合ったのは、見えない敵と闇雲に殴り合って自分たちのスタミナを減らしていくよりも、ちゃんと殴れる奴を殴ろうってことだったんですね。今、新しい状況にこのバンドがいるんだとしたら、それをポジティブに面白がっていったほうがいいって。だから原点回帰とは違うんですよね。とりあえずここで名刺をもう一度作り直さないかって。言っても、俺がこれだけメディアに出続けても、綾小路って言うと「きみまろ?」っていう人だっていっぱいいますからね。
──その象徴が今回の「One Night Carnival 2013」のシングルカットでもあるという?
綾小路翔 そう。今ってテレビを観てても新曲だけやらせてくれるところって本当に少なくて。ほとんどが往年の名曲でしょ? FNS歌謡祭もそうだし紅白歌合戦もそう。そうじゃないと視聴率がとれないからだろうけど、そういうのを「この曲が売れたのはわかるよね」とか言いながら観るのって、実は自分でも楽しかったりするんですよ。もちろんね、そこにはロックバンドとしてカッコいいことはひとつもないですよ。自分たちのかつてのヒット曲をもう一回焼き直すっていうのは、一見ダサい感じのことだし、僕らの思う理想のロックバンド像からはかけ離れたところにある。でも今回あえてわかっててそれをするのは、自分たちにとってはすごく攻めの気持ちで、とにかく今この瞬間を大事にしなきゃいけないっていう思いから生まれたものなんですよ。昨年もね、「氣志團万博」のプロモーションをするときに「『One Night Carnival』をやってくれるんなら出てもいいよ」って言ってくれる音楽番組がけっこうあったんです。僕らは「SUPER BOY FRIEND」をやりたいんだけど、「One Night Carnival」も一緒にやってくれるんならいいよって。そういうときにね、「俺ら10年経っても『One Night Carnival』の一発屋か」って落ち込んだりもしてきました。でも気持ちをひっくり返してみたら「それってすごいことじゃない?」って。10年経っても、たまたま見てたテレビ番組で「One Night Carnival」のイントロを使ってくれてたりする。見ず知らずのギャルに「フッフー♪」ってからかわれたりする。でもそれがあるのは財産だなって思ったんです。だとしたら、今年もう一回「氣志團万博」をやるってなったときに、去年までは新曲やりたいのにやらせてもらえないで落ち込んでたけど、自分たちでそれを引っくり返してみようと(笑)。「One Night Carnival」を新曲にすれば自分たちの心も落ち着くと(笑)。もちろん世の中の声は聞こえてきます。「こすりすぎ」だと。ただ、こすって気持ちいいなら、まだこすろうと。大人になってまだこんなにチンチンいじると思ってなかったです。でも、もうこうなったら何も出なくなるまでこすってみようと。
みんなとつながりたいと思ってる
綾小路翔 それと「One Night Carnival」って、本当にメンバー全員で作った曲なんですよね。最初、自分たちはインストバンドで、そこからいろんなものを吹っ切って最初に作ったのがこの曲なんですけど、そこから現在まで思い返してみても、この曲くらいみんなで一緒に作った曲はなくて。僕がメロディを持っていって、ランマがコードはこっちがいいんじゃないの?って言ってきて、トミーがとんでもないイントロつけてくれて、ユッキは「ディスコビートでやるならこういう感じじゃない?」って初めて四つ打ちを叩いてくれて、マツも頭のところのフレーズを考えてきてくれて、ひかるは振り付けを考えてきて。全員が全員で向き合って作った最初の曲なんですよ。それにみんな忘れてますけど、2001年にリリースした時点で、全然時代背景に合ってない曲なんですよ。一度も時代にリンクしたことがない(笑)。
──確かに。若い世代のリスナーはその感覚を共有できないかもしれないけど、当時から違和感バリバリの曲でしたよね。
綾小路翔 そう。言ってみればその違和感で愛された曲だった。だって“ツッパリ”でしょ? そこに「One Night Carnival」ってタイトルでしょ? 実はこのタイトル、暴走族の写真集からとったタイトルなんですけど、今じゃもうオークションにもほとんど出てこない絶版ものでほとんど知られてない。その上に音楽的にはディスコでしょ? 実は80年代と90年代の文化と風俗を混ぜて、それを10年後に出したみたいな、どの時代ともリンクしてない曲なんですよ。
──それが今では「当時のヒット曲」みたいなものと一緒くたになってる。そう考えると面白いですね。YouTubeとかのせいで時代の遠近法がよくわからなくなってる現在を象徴している。
綾小路翔 そう。最初っから懐かしい曲だったんですよ。そういうことも全部ふまえた上で今やれることは全部やろうよって。それでも僕はみんなとつながりたいと思ってるし、そこから先は自信があるからって。でも一度自分の部屋まで来てもらえないと、やれることもやれないっていうか。「氣志團いいよね」って思ってもらえた瞬間は、これまでもいっぱいあったと思うんですよ。テレビだったりフェスだったりね。だけどそれじゃセックスには届かないんですよ。部屋に来させるにはどうしたらいいかっていったら、俺んちに何々があるよとか、友達もいっぱいいるよとか、みんなでバーベキューやろうよとか、そういうことだと思うんですよ。それが今回の「氣志團入門」なんじゃないかなって。自分には美学もありますけど、今回学ランの下からサーッと己の持ってる美学のいくつかをゴミに詰めて捨ててきましたからね。誰にも見られないように。「もともとそんなこだわりなんてないっす」っていう体で。だから自分みたいな人間にとって、これは最高の攻めなんです。
- ニューシングル「One Night Carnival 2013」[CD+DVD] 2013年9月11日発売 / 1890円 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax) / AVCD-48704/B
- ニューシングル「One Night Carnival 2013」
CD収録曲
- One Night Carnival 2013
- 愛 羅 武 勇(2013)
- One Night Carnival 2013(KARAOKE)
- 愛 羅 武 勇 (2013)(KARAOKE)
DVD収録内容
- One Night Carnival 2013(MUSIC VIDEO)
- One Night Carnival 2013(KISHIDANCERCIZE<振付ビデオ>)
- 氣志團万博2012バックステージ映像
- ニューアルバム「氣志團入門」/ 2013年9月11日発売 / 影別苦須 虎津苦須(avex trax)
- CD+DVD / 3990円 / AVCD-38790/B
- CD / 3150円 / AVCD-38791
CD収録曲
- One Night Carnival 2013
- 黒い太陽(2013)
- 恋人(2013)
- 日本人
- キラ キラ!(2013)
- SUPER BOY FRIEND
- BOYS BRAVO!(2013)
- 朝がくる度(2013)
- 俺達には土曜日しかない(2013)
- Baby Baby Baby
- 落陽
- 鉄のハート(2013)
- 愛 羅 武 勇(2013)
- ありがとう ばかやろう
- SUPERSTAR(CDオンリー仕様に収録)
DVD収録内容
<MUSIC VIDEO>
- One Night Carnival 2013
- さよなら世界
- おまえだったんだ
- 愛してナイト!
- MY WAY
- SUPER BOY FRIEND
<GIG PERFORMANCE>
- 黒い太陽
- 俺達には土曜日しかない
- 高校与太郎組曲-喧嘩(クォーラル)ボンバー-
- オレたち
- 鉄のハート
- 愛 羅 武 勇
<KISHIDANCERCIZE(振付ビデオ)>
- スタンディング・ニッポン
- One Night Carnival 2013
- 恋人(2013)
- 俺達には土曜日しかない(2013)
- SUPER BOY FRIEND
氣志團(きしだん)
千葉県木更津市でカリスマ的人気を得ていた綾小路翔を中心に1997年に結成。メンバーは綾小路翔(Dragon Voice)、早乙女光(Dance & Scream)、西園寺瞳(G)、星グランマニエ(G)、白鳥松竹梅(B)、白鳥雪之丞(Drums & Drunk)の6名。「ヤンクロック」をキーワードに、学ランにリーゼントというスタイルでライブを行い、2001年12月から3カ月連続で発売されたVHSビデオで“メイジャーデビュー”を果たす。その後「One Night Carnival」「スウィンギン・ニッポン」などヒット曲を連発。2004年には東京ドームでワンマンライブを行い「NHK紅白歌合戦」にも出演した。2011年には計30公演におよぶ対バンギグシリーズ「極東ロックンロール・ハイスクール」を実施するなど精力的なライブ活動を継続。結成15周年を迎えた2012年に地元・千葉で大規模な野外イベント「氣志團万博2012」を開催し大成功に収めた。2013年9月にはシングル「One Night Carnival 2013」とアルバム「氣志團入門」をリリースし、「氣志團万博2013 房総爆音梁山泊」を開催する。
2013年9月12日更新