WOWOWオリジナル音楽レギュラー番組「INVITATION」|ユニコーンがPUFFY、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)とコラボ!古舘伊知郎とのトークも盛り上がった第5回収録現場レポート

WOWOWのオリジナル音楽レギュラー番組「INVITATION」の第5回にユニコーンが登場する。今回彼らが披露するのは、最新アルバム「ツイス島&シャウ島」の収録曲や、ライブの定番曲「WAO!」、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのカバーなど5曲。さらにPUFFYと「エッサフォッサ」、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)と「デジタルスープ」でコラボする。音楽ナタリーでは、番組ナビゲーター古舘伊知郎とのトークもひと際盛り上がったこの回の収録の模様をユニコーンのコメントも交えてレポートする。

取材・文 / 平山雄一撮影 / 三浦憲治

80年代バンドブームの中心的存在として活躍し、2009年に再始動してからはますます自由度を上げて活動しているユニコーン。その存在感は唯一無二で、ベテランなのに軽いフットワークでアルバム作りとツアーを行う姿は、リスナーはもちろん若いバンドからも熱いリスペクトを集めている。ユニコーンの最大の特長は全員がソングライターであり、全員がリードボーカルを取れ、全員がいろいろな楽器を演奏できること。そのすべては「音楽を楽しむ」「音楽で遊ぶ」「バンドを楽しむ」という彼らのポリシーに端を発している。今回の「INVITATION」でもその特長は思い切り発揮されている。

ニューアルバム「ツイス島&シャウ島」を完成させ、全国ツアー「ユニコーンツアー2021『ドライブしようよ』」のスタートを間近に控えた収録当日、ABEDON、EBI、奥田民生、川西幸一、手島いさむの5人は元気な姿でスタジオに入ってきた。いつものようにリラックスして、まずは「WAO!」を撮る。活動再開を告げたシングル曲で、奥田のカウベルがポイントになっている。彼らは収録で1曲につき、カメラリハーサル、本番2回の計3回演奏する。

奥田 今日、何曲やるんだっけ?

EBI 7曲。

奥田 ていうことは×3で21曲だよね。そりゃしんどいわ。

ボヤキつつも5人は演奏を楽しんでいる。最初のコラボ相手はUNISON SQUARE GARDEN、XIIXの斎藤宏介(Vo, G)で、曲は「デジタルスープ」。ABEDONが作詞作曲を手がけたこの曲は、デジタル化する世界と人間性の葛藤を描いた傑作だ。斎藤は2013年リリースのユニコーンのカバーアルバム「ユニコーン・カバーズ」にUNISON SQUARE GARDENとして参加。ユニコーンをカバーする場合、たいてい解散前の楽曲が選ばれるが、UNISON SQUARE GARDENはこのアルバムのとき、再始動後のこの曲を選んだ。しかも斎藤は声が高いので、キーをかなり上げての演奏となった。すると驚くべきことに曲の様相がまったく変わってしまったのだ。また斎藤の歌にハモをつけるABEDONは、高音の限界を要求される。しかしその変化や限界さえ楽しんでしまうのがユニコーンなのだ。斎藤も楽しかったようで、収録後は満足した表情で記念撮影に応じていた。

ABEDON 私、声が枯れております。

奥田 斎藤くんのキーがすごく高くて、別の曲みたいに新鮮だった。ABEDONがちょっとやられましたけど(笑)。

ABEDON 上のハモだからね。必死でした。さすが斎藤くんだなと。

EBI 歌う人が変わるだけで曲ってこんなに変わるんだなって新鮮でびっくりしましたね。斎藤くんは繊細な声だなって思った。だから繊細な曲になったっていうか。

ABEDON 倍音が違う。

EBI 違うバンドの人とやることってほとんどないんで、いい経験をさせてもらいました。

次のコラボ相手はPUFFY。奥田のプロデュースによりデビューしたPUFFYは、ユニコーンにとって仲間とも言える存在だ。曲は、彼女たちの25周年を祝うアルバム「THE PUFFY」にABEDONが提供した「エッサフォッサ」。この曲はユニコーンのメンバーによってレコーディングされ、両者の初コラボ作品となった。それを今回は共に演奏する。セッションは、気心の知れた同士という雰囲気で、笑いの絶えない収録となった。

EBI PUFFYもよかったですね。改めてですけど、2人の合わさった声って無敵だなと思いました。

奥田 独特よね。

EBI どこ探してもいないと思いますよ。

奥田 たまたま一緒にやってみて今の形になった。

EBI ものすごい出会いですよね。

奥田 みんな、ちょっとはPUFFYと絡んでるんじゃないの?

川西 僕はあの2人とはライブでけっこうやってたから、懐かしいなと思いました。「エッサフォッサ」を生でやってみて、改めていい曲だなと。きっと今後のライブで盛り上がっていくんじゃないですかね。

手島 レコーディングでやった通りにやりましたよ、気合い入れて。

ABEDON やっぱり華やかだね、女子がボーカルっていうのは。1人だけだとPUFFYの感じがしないし、2人で歌わないとPUFFYになんないんだなーっていう。不思議だね。

奥田 どっちの声かたまにわからなくなるね。合わせるとPUFFYの声になる。

「ツイス島&シャウ島」からの新曲「ZG」や「米米米」(マイベイベイと読む)など、快調に収録が進む。古舘伊知郎とのトークも、実にユニコーンらしいものになった。古舘と向かい合って、前列に2人、後列に3人という配置だ。するとステージセットに入って来たメンバーが、席順をジャンケンで決めると言い出した。しかも「古舘さんも一緒にジャンケンしませんか?」と誘うものだから、スタジオは爆笑に包まれる。結局、前列にABEDONと川西、後列に手島、奥田、EBIという席順になったのだった。

川西 古舘さんとのトークは、あっという間の2時間でしたね。僕はジャンケンで前の位置も取りましたしね。

ABEDON 古舘さんはやっぱりプロだなって。たぶん僕たちのことを丁寧に調べてくれてて、しっかり要点を把握してましたよね。 

手島 もともと音楽には明るい人なんで、わかってくれてるなあっていう気がした。あと、声の抑揚がすごい。

EBI そんなに会える人じゃないですからね。ずっと凝視してました。

奥田 まあそうよね。

白熱のトークは番組でじっくり観ていただくとして、何よりロックンロールスピリットあふれるニューアルバムのタイトル曲「ツイス島&シャウ島」のパフォーマンスに期待してほしい。ここにユニコーンのエッセンスが詰まっている。音楽で遊びながら、自分たちの生き方をメッセージとして伝える。そんな彼らを多面的にとらえた「INVITATION/ユニコーン」をお楽しみに!!

収録を終えて

PUFFY

WOWOW「INVITATION」第5回収録より、PUFFY。

吉村由美 そもそもユニコーンとやったこと……。

大貫亜美 ない。2人そろってPUFFYの曲でっていうのは初めてな気がします。今日は「エッサフォッサ」を一緒にやってて「贅沢だな」と思いました。楽曲をいただいて、しかもユニコーンが演奏してくれるんだって客観的に思うと、やっぱり贅沢ですよ。レコーディングのときもそう思ってたけど、今日は実際に演奏を目の当たりにして、「すごいことしてるなー」って改めて思いました。 

由美 ABEDONさんの楽曲で、それをまるまるユニコーンに演奏してもらって。

亜美 この曲は、アニバーサリーアルバム「THE PUFFY」にユニコーンとのコラボ曲を入れたいよねって思ってて、それを見越して前から制作をお願いしてました。

由美 曲自体はだいぶ前に上がってたんですけど、レコーディングはユニコーンのアルバムのレコーディングと同じ時期に合わせて。

亜美 最初に曲をもらったときは「これこれ! ありがとうございます!」って思いましたね。ABEDONさんの曲っていろんなパターンあるじゃないですか。その中でも曲にストーリー性があってメロディが美しくて、壮大な感じもするし、イントロからワクワク感が止まらないみたいな。「これです!」って思いました。

由美 PUFFYっぽいけど新しい、でもみんなが思ってるPUFFYのイメージは絶対壊さない楽曲だなって。

亜美 25周年のご祝儀としてこの曲をもらえて、歌詞が私たちのことを歌っているのかなとも思えるし。

由美 そうだったらうれしいよね。

亜美 でも、歌詞の説明は絶対にしてくれないんですけどね。

由美 今日、念願叶って「ユニコーンに入れたな」っていう気もするんですけど、実はこの曲をレコーディングしたときに、ギャグセンスとか演奏のクオリティが高すぎてついていけなかった。だから今まで「ユニコーンのメンバーになりたい」って言ってたのをもうやめようと思ってます(笑)。あのメンバーでしか無理だなと思いましたよ。

斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)

WOWOW「INVITATION」第5回収録より、斎藤宏介(Vo ,G / UNISON SQUARE GARDEN、XIIX)。

やー、楽しかったですね。ずっとユニコーンさんと一緒にやりたいと思っていたので幸せでした。正直なことを言うと僕はユニコーンフォロワーではなかったんですけど、2011年のツアー「ユニコーンがやって来る zzz...」の日本武道館公演を観させてもらって、先輩方の音楽への姿勢に「これはすごい」と思ったんですよ。メンバーが宙吊りになりながら演奏しているのを見て「めちゃくちゃカッコいい!」と思って。無邪気に遊んでるんだけど、演奏はエグい! もう頭下げるしかないくらいのライブを見せられちゃったんで大好きになって。なので、再始動したあとにようやく魅力に気付けました。以前、UNISON SQUARE GARDENとしてカバーアルバム「ユニコーン・カバーズ」(2013年)に参加したときも、再始動後の曲の「デジタルスープ」をやらせてもらいました。今回はその「デジタルスープ」を一緒にやろうって言っていただけてうれしかったです。僕は声が高いんで、キーをカラオケでいうプラス5。2音半上げてます。男性キーと女性キーくらい違うかもしれませんね。そこに高いハモを付けるABEDONさんには申し訳なかったです(笑)。

ユニコーンさんを見ていると、バンド自身が楽しんでるっていうことが一番重要なんだなって思います。本当に楽しそうなんですよ。今回、初めて一緒にスタジオに入らせてもらったときも、みんなでドラムを叩いたり、ワチャワチャしてて楽しそうだなあと思って(笑)。それがありきでファンの方々がついてくるのが、バンドとして一番いい形だなって。理想を体現できてるユニコーンさんはすごいですよね。今日、実際に一緒にやってみて、音圧がすごく心地よかった。メンバーの皆さんの演奏を肌で感じながら歌えたのが楽しかったし、グルーヴが1曲の中ですごく揺れてた。今のバンドはクリックを聴きながら演奏することが多いので、その全部が音楽的で楽しかったですね。楽しそうなムードがバンドをうまく回していくんだと感じるので、僕らもそうありたいなって思ってます。

古舘伊知郎

WOWOW「INVITATION」第5回収録より、古舘伊知郎。

トークはものすごく心地よかったですね。ユニコーンの1人ひとりが語る道筋が楽しいから、話の主導権については考えてなくていいし、そこから外れることも楽しくて。僕はそういうのが好み。ちゃんとしたインタビューも好きだし、音楽の骨格を聞くことも大事なんだけど、同時にフワッとあんまり限定しない聞き方をして、予想外の話に行ってしまうっていうのが面白い。ユニコーンは脱力感もあるし、気負ってないし、しゃにむに笑いを取りに行くというのでもない。みんながそれぞれ同じところにいますよね。交通標識が見えないバンドなんですよ。「一時停止しなさい」とか、「この先 シアトル」とかがない。普通のバンドは目標が定まっていて、「ここに向かって何号線を走ってる」っていうのが明確でそれはそれで気持ちいいんですが、ユニコーンはそういう標識が見えない。でもなんの標識もない道路を走ってる感じが気持ちいいですね。

メンバーについて言えば、手島さんはすごくとぼけてて、真剣な顔で話してるときに、よく聞くとふざけてるんですよ。で、ふざけた言い回しのときに本当のことを言ってる。この人はいい意味で二重構造でしゃべるんだというのが印象に残りました。川西さんは一番年上でニコニコ笑って自由な感じでそこにいるくせに、実はみんなの話を回してるんですよ。「それは奥田くんが」とか「だってEBIちゃん」って。僕が司会者だからわかることなのかもしれないけど、あれはちゃんと進行役をしてる。僕が自分の定位置を見失ってズレた会話を楽しむことができたのは、そのフォローを川西さんがやってくれてたから。最大の功労者はあの人です。心の中で手を合わせてました。EBIさんは顔がちっちゃくて理知的で、しゃべることもきちっとしてて。公務員っぽいと言われたことがあるって言ってたけど、あの人の律儀さを感じましたね。ミュージシャンっぽくない感じが面白かった。ABEDONさんは、「ユニコーンがユニコーンであるためには、自分が嫌われ役になって周囲と交渉しないといけない。嫌な闘いも引き受ける」って言ってた。闘いの中に自由や遊びがあるんだと。闘わずして自由や遊びは獲得できないってね。一瞬、フランス革命入ってましたよ。民生さんはいつも通りで。でも今日は自分のペースだけじゃなくて、ユニコーンの一員としてけっこうしゃべってくれた。1人だともっとボソボソ話すじゃないですか。これはすごいなと。この5人がしゃべって雰囲気を作ってくれてたから、僕はナビゲーターという役職を放棄した感じで今日はやれましたね。

変な言い方ですけど、今日はユニコーンのメンバーが通う“プロフェッショナル高校”の文化祭にお邪魔したような気分になりました。高校だからアマチュアバンドがやってるんですよ。彼らはビジョンが見えなかったり、ぐちゃぐちゃにシャッフルしちゃうから、新鮮なんです。「あー、楽しかった」と思って出たら、「彼らはプロの高校生じゃん」っていうことに気付いた感じがするんですよね。楽しかったです。

ユニコーン
ユニコーン
1986年に広島で結成。翌1987年にアルバム「BOOM」でメジャーデビューを果たす。メンバーはABEDON、EBI、奥田民生、川西幸一、手島いさむの5人。全員が楽曲制作に携わりボーカルを取るフレキシブルなスタイルで、オリジナリティあふれる活動を展開する。「大迷惑」「働く男」「雪が降る町」「すばらしい日々」など数々のヒット曲を生み出すも1993年に惜しまれつつ解散。その後はそれぞれソロ活動を展開していたが、2009年に16年ぶりに再始動する。2月にシングル「WAO!」とアルバム「シャンブル」を発表し、3月より全国ツアー「蘇える勤労」を開催した。ソロ活動と並行してユニコーンとしての活動も行い、メンバーが50歳を迎えた際には「50祭」と銘打ったライブイベントを実施した。2017年10月にデビュー30周年を迎え、12月にリマスタリングボックス「UC30 若返る勤労」をリリース。同月より全国ツアー「UC30 若返る勤労」を開催した。2019年は再始動10周年、現メンバーとなって初のアルバム「服部」リリースから30周年、川西の生誕60周年を迎えることを受けて“ユニコーン100周年”と銘打って活動。3月に「UC100V」、10月に「UC100W」とアルバムを2作発表し、2020年には初の展覧会「ユニコーン100周年展~百が如く~」を東京・表参道ヒルズ内スペース オーにて開催した。2021年8月に2年ぶりとなるアルバム「ツイス島&シャウ島」をリリースし、同月末より全国ツアーを開催中。

2021年9月17日更新