WOWOWオリジナル音楽レギュラー番組「INVITATION」|第7回はAIが登場!三浦大知、Awichと強いメッセージ放った収録現場レポート

WOWOWのオリジナル音楽レギュラー番組「INVITATION」の第7回には、ソウルフルな歌声とメッセージで聴く人を魅了するボーカリスト・AIが登場する。コラボゲストを務めるのは、どちらも公私ともにAIと親交のある三浦大知とAwich。果たしてAIは気心の知れた仲間たちと、どのようなステージを披露してくれるのか。音楽ナタリーでは収録の模様を、番組ナビゲーター古舘伊知郎のコメントとともに紹介する。

取材・文 / 平山雄一撮影 / 田中聖太郎

昨年スタートした「INVITATION」は、この1月でついに放送2年目に突入。毎回さまざまな実力派アーティストたちが、オリジナル曲はもちろん思い入れの強い楽曲をカバーしたり、意外性のあるコラボを行ったりする充実の内容で、音楽ファンからの注目を浴びている。そんな番組の記念すべき2022年初回に登場するのは、ソウルフルな歌声とメッセージでリスナーをストレートに揺さぶるボーカリストのAIだ。今回はドラムス、ベース、ギター、ピアノ、男女2人のコーラスと4人の女性ストリングスという豪華なバックを従えてのパフォーマンスとなった。「去年のツアーを一緒に回ったバンドです。ギタリストと男性コーラス以外は初めてのメンバーだったんですけど、みんな素晴らしい! ストリングスの入った大編成ツアーは、20周年記念というのもあって今回初めて実現しました」とAIは誇らしげに語る。ツアーで数多くのライブを重ねたAIとバンドの呼吸はぴったり。「Story」をはじめとする代表曲を楽しそうに収録していく。「『Story』はストリングスとピアノだけにアレンジを変えました。『アルデバラン』もストリングスがいるといないとじゃ全然違う。ストリングスがいると表現の幅が増えて、倍の感動がある。今回の収録をツアーと同じメンバーでできたのが、すごくありがたいなと思いました」。

10人のうち、女性が6人という比率のバンドにコラボゲストのAwichが加わると、華やかな雰囲気が漂い、AIが思わず「テンション上がりすぎてヤバい!」と叫ぶ。曲は「Not So Different」で、2020年12月に発表されたリミックスバージョンではAwichのラップがフィーチャーされた。今回はそのテイクを再現するライブになる。炸裂するドラムのケニー・モズリーのビートに反応して、Awichがしなやかに踊り出し、スタジオがセクシーなムードに染まっていく。「Awichが来ると無敵! 彼女みたいなラッパーは、今までいそうでいなかった。ただうまいだけじゃなくて、あの雰囲気が出せる人ってなかなかいないんですよ。『Not So Different Remix feat.Awich』には『生まれた時は みんなBaby 何もかもが 美しくて』『次の世界作るbabiesを抱いて』『We'll break the cycle(私たちが負のサイクルを壊していく)』というAwichのリリックがあるんです。いい意味で彼女のパワーをもらってます。できれば毎回来て欲しいな(笑)」。

一方、三浦大知とのコラボではAIが踊り出す。シングル「IN THE MIDDLE feat.三浦大知」で2人が歌とダンスのパフォーマンスを繰り広げるとスタジオ内の熱が一気に上がり、スタッフの体も揺れ出したのだった。「振り付けは大知くんが作ってくれたんですけど、超難しかった。このところあんまり動いてなかったから、膝が痛い(笑)。彼は『いつものことだから』みたいな感じでパッパッパとやるんですけど、私はがんばらないといけなかった。彼の安定感は本当に見事なんですよね。彼が弱っているのを見たことがない。すべて自然なんです。なんであんないい人なんですかね(笑)」。

収録は快調に進む。セット替えのたびにスタッフに感謝を伝えるAI。気遣いの塊のような人だ。AIの醸し出すピースフルなオーラに包まれて、収録はカバーのセクションに入っていく。「『His Eye Is on the Sparrow』は古くからある教会の曲なんですけど、『Sister Act 2(天使にラブ・ソングを2)』という映画でローリン・ヒルとターニャ・ブロントが歌って有名になりました。カッコいいなと思って小さい頃にたまに歌ってマネしていたのが、まさかこんなに大人になって収録で歌うとは思わなかった。今回はコーラスに高橋あず美ちゃんもいて。彼女はゴスペル専門なわけじゃないんですけど、ちっちゃいのにパワーがすごい。一緒に歌っていて泣きそうになりました。この曲は自分にとってすごく感情的になっちゃう曲で、『I sing because I'm happy(私は幸せだから歌うんだよ)』『I sing because I'm free(私は自由だから歌うんだよ)』って歌うと、『やっぱりそうだ!』って気持ちになる。この曲を歌わせてもらえたことで、ある意味初心に戻れたいい1日でした。テレビでゴスペルを歌ったのは初めてじゃないかな。ライブで歌ってたのを放映されたことはあるんですけど。しかもフルコーラスで歌えて、それがまたうれしかった。いつもテレビだと一番の見せ場がカットされたりするので(笑)」。2人のボーカルとピアノだけのゴスペルは、本当に感動的だった。またマイケル・ジャクソンのカバーメドレーも、バックはピアノのみという大胆な編成でのチャレンジになった。「マイケルのカバーはいろんな人がやってますけど、今回はピアノ1台と声だけでマイケルの曲を表現しました。ピアノだけだからこそ、マイケルの曲を自分らしく歌えたかなって。マイケルは小さいときから聴いていて、彼のメッセージだったり曲だったりライブだったりを、ちっちゃいときはいつも『なんでこんなにすごいの!?』と思って笑ってましたけど、大人になればなるほどマイケルのすごさとメッセージの強さに改めてハマっていくというか。マイケルが言ってることを私も言いたい。マイケルのエッセンスが私の中にすごく入ってる」。

カバーもコラボも選曲がバラエティに富んでいる。そこでAIに今回の選曲のテーマについて聞いてみた。「大知くんとの『IN THE MIDDLE feat.三浦大知』もAwichとの『Not So Different Remix feat.Awich』も、どちらもメッセージがある曲で、平和につながるテーマになったのかなっていうのはありますね。マイケルの『Man In The Mirror』も『Make that change(いいふうに変わっていこうよ)』というメッセージで終わるんですよ。メッセージが入れ込めるってことで、気持ちが入りましたよね。歌っていてすごく楽しかったです」。

収録は終始リラックスムードで進み、予定のスケジュールより早く終わった。それだけにAIの最後のひと言が印象的だった。「このバンドメンバーでのライブはツアーファイナルの国際フォーラムが最後だったんですけど、コロナのせいでキャンセルになってしまった公演もあったのでもったいないなと思っていました。だから今日が本当のフィナーレ、最後だって感じで名残惜しかったです。この番組のおかげで大好きなメンバーとまた一緒にやれたのは、本当に幸せでした」。アーティストのやりたいことを実現する場を、「INVITATION」が提供することのできた収録だった。その歓びの時間を、ぜひオンエアで堪能してほしい。

収録を終えて

Awich

WOWOW「INVITATION」第7回収録より、Awich。

以前からAIさんの歌が大好きだったんですけど、数年前にあるフェスの楽屋でスタッフから「AIさんが会いたいって言ってます」と言われて、「マジっすか!」って会いに行って、すぐに意気投合しました。それからもフェスで何度かお会いしたんですけど、音楽作りをご一緒させていただいたのは「Not So Different Remix feat.Awich」が初めてですね。もともと「Not So Different」という曲があって、それをリミックスするときに「Awichにラップを入れてほしいんだけど、どう?」とお話をいただいたんです。「もちろんやります」ってラップを乗せたら、「もうちょい、やってほしい」と言われて。それで一緒にスタジオに入って新しいバースを書きました。

私はアメリカで生活していたときに結婚して、子供もいるんですけど、旦那さんが事件に巻き込まれて亡くなってしまいました。日本では実感がないかもしれないけど、ほかの国では厳しい差別がまだ続いている。平和とかそういう概念や意識が国によって違うから、お互いを思いやってケンカをしないで理解し合おうという気持ちをずっと持っていて、それをAIさんが「Not So Different」で一緒に歌おうって言ってくれた。だから新しいバースを付けるときに、自分のパーソナルな気持ちや思い出を入れ込んで、より深みを足せたかなと思っています。最初、具体性を出すのは躊躇してたんですけど、やっぱり出したほうがリスナーが私の深いところにアクセスできる。つらかったときや苦しかった記憶を私がさらけ出すことで、聴いた人も自分を重ね合わせることができる。そういうパワーが音楽にはあるのかなと思っていて、それをやらせていただいた感じです。人はそんなに変わらないよ、あなたは他人のことを妬んだり文句を言ったりうらやましがったりしてるかもしれないけど、私たちはそんなに変わらない=「Not So Different」。みんな一緒で、みんなストーリーを持っていて、みんな悲しみも抱えてるし希望も持ってるから、そこを共有していけるようにわかり合う、そういう世界になったらいいねっていうコンセプトの曲です。

AIさんってしゃべり方がめっちゃなまってるんですよ(笑)。AIさんみたいな大物としゃべるときって、緊張するじゃないですか。でも「Not So Different」について最初に電話でしゃべったとき、「もっとAwichを出してほしいんだよね。私はAwichを世に出したいから」って鹿児島弁で言ってくれた。私も沖縄の出身なんで、言葉のあったかさに通じるものがある。なんか安心して、もっとやりたいって思えるようになりました。AIさんは本当に相手のよさを引き出してくれるんですよね。どの現場でもそう思います。「安心していいよ」と言ってくれる大きな人です。私の2022年は、3月14日の日本武道館を全力でやるつもり。女性ラッパーとして男社会に乗り込んで行ってる立場なので、その私が単独で武道館ライブをやるという責任もあるし、プレッシャーもあるんですけど、覚悟を決めているので絶対にやり遂げます。もっともっと突き進んで、いろんな壁を超えていく1年にしたいと思ってます。それが武道館ライブのタイトル「Welcome to the Queendom at 日本武道館」に込めた意味です。沖縄という小さな島国から上り詰めていく様子を、みんなに目撃していただきたい。刮目せよ! 私の下剋上物語を(笑)。

三浦大知

WOWOW「INVITATION」第7回収録より、三浦大知。

AIさんとはイベントや共通のトラックメイカーを通じて現場でちょこちょこ挨拶したり話したりしていて、ずっと近くにいた感じです。ただ一緒に楽曲制作をしたのは、「IN THE MIDDLE feat.三浦大知」が初めてですね。「いつかはやりたいよね」ってずっと話していながらも、お互いのスケジュールがなかなか合わなかったんですけど、ふとしたタイミングでAIさんが「いつリリースするとか関係なく、何か一緒にやらない? こういうテーマの曲を今作ってるから」と呼んでくれて、そこから始まりました。「IN THE MIDDLE」は、たぶんAIさんが持っていたメッセージだと思います。右でも左でもなく自分の真ん中=MIDDLEを持って、周りに惑わされるんじゃなく自分の目で見ていくというテーマだったので、それをAIさんと歌ったらとても素敵だなと思いましたし、そのテーマの中に自分も入れてもらえるのは光栄だなと思いながら作りました。「こっちがいい」とか「こっちが悪い」とかは、いつの時代にもある。でもSNSでいろんな人の意見を簡単に見られる世の中になって、果たしてこれが自分の意見なのかどうなのかわからなくなってしまうときが意外とあるのかなと思っていて。生活していて、自分自身も気を付けなきゃいけないなと思う瞬間がある。そういう意味でも、自分という中心をしっかり持つことは大事なんじゃないかな。とても共感できるなと思いました。

振り付けは振付師のDeeくんが半分作って、残り半分を僕が作って、それを組み合わせました。AIさんはもともとダンサーで、ヒップポップを基本にしたダンスをされていて、僕のダンスはヒップポップをベースにはしてるんですけど、もっといろんなものがごちゃまぜになってる。リズムダンスより細かい振り付けなので、AIさんがいつも踊られてるものより音の取り方が細かい部分があったと思うんですけど、すぐに覚えて自分のものにされて、ちゃんとAIさんのニュアンスを持った振り付けとして踊られてたので、さすがだなって感じでした。一緒に踊っていて楽しかったですよ。音楽のコラボレーションで一緒に踊るのは意外とないので、これはAIさんとだからできたのかなっていう。「最後はお互いに差し出した手を下ろして、向き合うみたいなエンディングはどうですか?」と話をしたら「いいねいいね」って感じで盛り上がりました。

AIさんは人としてライブ感がありますよね。生命力を感じる。だから会うたびにパワーをもらえるんだろうな。AIさんは昔から名前のごとく、人に“愛”を配ってる人みたいなイメージがありますよね。人に対して気遣いと思いやりと愛にあふれてる。本当に太陽みたいな人だなと思います。いつかまるまる1曲、AIさんに振り付けしたいです。それを踊ってるAIさんを客席から観たい(笑)。僕個人の2022年の目標としては、世の中は大変な時期がまだまだ続いていて、自分はまだ有観客のライブを解禁してないので、オフラインのライブをやっていけたら最高だなと思います。もしそうじゃなかったとしても、この2年間でオンラインでこんなことができるかもしれないという可能性を探ることができたので、1歩2歩進んで、オフラインだろうがオンラインだろうがしっかり面白いエンタテインメントを2022年も作っていけたらいいなと思ってます。

古舘伊知郎

WOWOW「INVITATION」第7回収録より、古舘伊知郎。

楽しかった! AIさんは嘘がない、竹を割ったようなざっくばらんな人でした。変に防衛本能がないので、こっちが油断しちゃいましたね。リハのとき、僕が広いスタジオの隅に座って見ていたら、スッと来て挨拶してくれた。そんなこと初めてです。気遣いの人ですね。歌ってるときは誰もが文句なしに「大したもんだ!」と思わせるのに、トークのときは「私、意外に普通なんです」って。話し始めて10分か15分で、この人には策を弄する必要がないなと感じました。普通、トークって計算ずくだったりするじゃないですか。でも今日は「こうしてああして」とかまったく考えなかった。完全にリラックスして、「これはこれで面白いな」と乗せられるままにしゃべってしまった。気持ちよかったです。大ヒット曲の「Story」とか「ハピネス」だけじゃなくて、NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌「アルデバラン」あり、マイケル・ジャクソンのカバーメドレーあり。AIさんは歌でもトークと同じ潔さで惜しげもなく歌ってくれた。「やるでしょ私?」みたいな(笑)。間近で全曲聴かせてもらって、歌唱力を堪能しました。コラボゲストのAwichさんは、AIさんの東京国際フォーラムのライブのときにゲストで“令和の人魚姫伝説”みたいなセクシーな衣装で出てきて、すごい人だなと思ってました。帰り際にご挨拶したんですけど、普段は普通の感じなんですよ。でもステージになると物の怪が取り憑いてるかのような、半分魔界側に入ってますよね? すごく奥深い人。三浦大知さんは4年前の番組ぶりだったんで、「ご無沙汰してます。その節はお世話になりました」と言ったら、「覚えててくださったんですね。ありがとうございます、古舘さん」って。これですよ、これ。大活躍されてる方だから、こちらは覚えてるに決まっているのに、「覚えててくださったんですね」って。なんであんなふうに全身オーガニック系になれるんですかね。Awichさんが魔界転生なら、大知さんは妖精です(笑)。

「INVITATION」が2年目に入って思うのは、この番組は豪華な八段雛飾りみたいだな、と。男雛女雛がいて、五人囃子も三人官女もいる。持ち歌だけじゃなくて、カバーもあるし、コラボもある。来る人来る人が興味深いので、その人の音楽性に直に触れてトークをしながら、それぞれの人間のクセとかいろんなものを感じながら勉強させてもらってます。これからも来る人来る人のお話のお相手をして、いい経験と勉強をしたいなと思うのみですね。だけど僕が面白いと思ってる雑談は、だいたいカットされちゃう(笑)。「INVITATION」は純粋に音楽番組なので、雑談がオンエアされなくても別に構わない。その代わり、出てくださった方を僕のやってるラジオ番組で必ず紹介してます。トークライブの「トーキングブルース」にフィードバックしたりもしてますね。そこが楽しいんですよ。これからも音楽もトークも楽しんでいこうと思ってますので、よろしくお願いします。

AI(アイ)
AI
1981年アメリカ・ロサンゼルス生まれ、鹿児島県育ちのシンガー。10代でLAに渡りゴスペルクワイアで歌、LA名門アートスクールでダンスを学ぶ。帰国後、2000年に1stシングル「Cry, just Cry」でメジャーデビュー。ソウルフルな歌唱力やリアルな言葉でつづられた歌詞で多くのリスナーを獲得し、数々のヒット曲を発表した。安室奈美恵やEXILE ATSUSHIなど国内アーティストに加え、クリス・ブラウンやスヌープ・ドッグ、The Jacksons、チャカ・カーンといった海外アーティストとのコラボレーションも行う。2019年にデビュー20周年を記念したベストアルバム「感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW & BEST -」、2020年7月にデビュー20周年記念作品第1弾のミニアルバム「IT'S ALL ME - Vol.1」、2021年2月に第2弾ミニアルバム「IT'S ALL ME - Vol.2」を発表。また同年6月に¥ellow Bucksとのコラボ曲「THE MOMENT feat. ¥ellow Bucks」、8月に三浦大知を迎えた「IN THE MIDDLE feat.三浦大知」をデジタルリリースした。森山直太朗作詞作曲による楽曲「アルデバラン」がNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の主題歌として使用されており、年末には4度目となる「NHK紅白歌合戦」に出場。5月からは全国ツアー「AI "DREAM TOUR"」を開催する。