音楽ナタリー Power Push - GLIM SPANKY × 南石聡巳 meets h.ear go

ハイレゾ音源で聴く名盤10選

南石聡巳が選んだ5枚

スピーカーの中にトッド・ラングレンがいるんじゃない?

トッド・ラングレン「Runt」

トッド・ラングレン「Runt」

トッド・ラングレン「Runt」
南石聡巳

南石 トッド・ラングレンはすごく音にこだわるアーティストなんです。こだわりある人がこだわりを持って作ったこの作品が、ハイレゾだとどうなるかが気になったのでこの作品を選びました。「ハイレゾだとピアノの音がよくわかるんじゃないかな?」って思っていたんだけど、やはり奥行き感が違いましたね。

亀本 なんだか「スピーカーの中にトッド・ラングレンがいるんじゃない?」ってくらい歌声がリアル(笑)。ピアノの音もより映えますね。僕らは自分たちの曲でピアノをあまり使わないし、これまで意識して聴くことがなかったけど、ピアノ使いたくなるなあ。

松尾 そうだね。

南石 彼の声の感じにも注目してほしいですね。ハイトーンな男性ボーカルの声がいい感じに再現されています。

デヴィッド・ボウイ「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」

デヴィッド・ボウイ
「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」

デヴィッド・ボウイ「The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」

南石 僕は今年、ボウイ三昧で。これは一番の代表作で、彼は実験的な録音の仕方にトライしていたのでピアノの感じもさっきのトッド・ラングレンとは違うんです。やはりハイレゾの再現力のよさが感じられました。

松尾 私この作品はアナログレコードで持っているんですけど、聴き心地が全然違う! “生きている音”という感じがする。

亀本 そう、レミさんが持っているアナログレコードを1度聴いたことがあって、そのときはローファイな音質だなと感じていたんですけど、こうやって聴くとすごいクリアだなって思う。

松尾 私のレコード、歪んでるのかな?

南石 じゃあ、ぜひh.ear goを使ってハイレゾで聴いてください(笑)。

左から松尾レミ、亀本寛貴、南石聡巳。
Queen「A Day at the Races」

Queen「A Day at the Races」

Queen「A Day at the Races」

南石 僕がレコーディングエンジニアという職業に興味を持つきっかけが、Queenだったんです。1970年代は多重録音が登場して、さまざまなレコーディングの手法も生まれた時代。「Long Away」はギタリストのブライアン・メイが歌っていて、12弦ギターの音色が特徴の曲なんですね。その12弦ギターの音色、ハイレゾ音源だと純粋にいい音だなあと感じる。

亀本 そうですね。ギターの音がいいです。

松尾 ボーカルの声もいいよ。ブライアン・メイのいい声がより魅力的に聴こえる。

亀本 こういったポータブルスピーカーを使うシチュエーションって“ながら聴き”をするときが多いと思うんですけど、今みたいにがっつりとスピーカーに向かって聴くのもいいじゃんって思いました。家で音楽を聴くなら、もうこの1台で事足りるんじゃないかな。

Nirvana「In Utero」

Nirvana「In Utero」

Nirvana「In Utero」
南石聡巳

南石 Nirvanaはスティーブ・アルビニっていうエンジニアがレコーディングをやっているんですけど、僕、彼の我流でラウドな音楽にも合う録音の手法に憧れていたんです。最初はCDで聴いていたんですけど、あるとき180gのレコードで聴いたら「実はこんな音だったんだ!」って、すごく違いを感じました。僕はハイレゾ音源はアナログの音に近いと思っているので、この作品をハイレゾで聴くとどうなんだろう、とチョイスしました。やはりアナログっぽくて、奥行きがしっかりあるなと感じましたね。

亀本 僕はこの作品をCDで聴いていたけど、個人的に1980~90年代前半くらいのCDってどことなく聴きづらい印象がずっとあるんですよ。「あれ? 曇ってないですか?」みたいな。

松尾 わかる。でも今日ハイレゾ音源を聴いてみたら、そういう“時代感”がいい意味で関係なくなると思った。時代背景を踏まえた音ではありつつも、クリアに聴こえるから、より身近なものとして過去の作品を受け入れることができるんじゃないかな。

Led Zeppelin「Led Zeppelin II」

Led Zeppelin「Led Zeppelin II」

Led Zeppelin「Led Zeppelin II」

南石 この作品のエンジニアはエディ・クレイマーで、彼はツェッペリンの特徴の1つであるジョン・ボーナムのドラムの音を作り上げた人物です。僕はこの作品がツェッペリンの中でも一番音がいいと思っていて、最初にレコード聴いた時の衝撃が大きかったな。CDだとツルッとした感じだったシンバルの音が、ハイレゾで聴くといいザラザラ感を感じられて。h.ear goのスピーカーは小さいのにローエンドからハイまでよく表現できているなあと思いました。

亀本 あとこのh.ear go、むやみに大きな音を出さなくてもしっかりと再生してくれるところがいいですね。僕、住まいが賃貸なので(笑)。このサイズでも音が破たんせず、いい感じのバランスで聴けるところがすごくいい。

南石 確かにすごくバランスいいよね。

松尾 ミュージシャンとしても、自分たちが聴いてほしい音が鳴っていると思えるな。

左から南石聡巳、松尾レミ、亀本寛貴。
GLIM SPANKY「Next One」
GLIM SPANKY「Next One」
アナログ盤 / 2016年10月26日発売 / 3564円 / Virgin Music / TYJT-59001
ハイレゾ版
SIDE A
  1. NEXT ONE
  2. 怒りをくれよ
  3. 闇に目を凝らせば
  4. grand port
  5. 時代のヒーロー
SIDE B
  1. 話をしよう
  2. NIGHT LAN DOT
  3. いざメキシコへ
  4. 風に唄えば
  5. ワイルド・サイドを行け
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)

GLIM SPANKY

松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに、松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「Move Over」が使われ、松尾の歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリースした。7月20日に2ndアルバム「Next One」を発表。このアルバムには映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌の「怒りをくれよ」、映画「少女」主題歌の「闇に目を凝らせば」などが収録されている。

南石聡巳(ナンセキトシミ)

1990年代にレコーディングエンジニアとしての活動を開始。Blankey Jet City、blood thirsty butchers、THE HIGH-LOWS、ギターウルフ、eastern youthなどのロックンロールバンドのほか、YUKI、Chara、木村カエラなどのレコーディングを担当。硬派なロックサウンドを得意としながら、若手からベテランまで幅広いアーティストを手がけている。GLIM SPANKYの作品では、アルバム「Next One」などでその手腕を発揮した。