音楽ナタリー Power Push - GLIM SPANKY × 南石聡巳 meets h.ear go

ハイレゾ音源で聴く名盤10選

GLIM SPANKYが選んだ5枚

ドラムは“皮を叩く”楽器なんだなって感じられる

The Beach Boys「Pet Sounds」

The Beach Boys「Pet Sounds」

The Beach Boys「Pet Sounds」

松尾レミ(GLIM SPANKY / Vo) 2曲目の「You Still Believe in Me」って曲が、人生で初めて好きになった洋楽なんです。幼稚園生のときに父がこの曲を流しているのを聴いたとき、まるで「オズの魔法使い」の世界が広がったように感じて恋に落ちました。

亀本寛貴(GLIM SPANKY / G) 大学生のときに僕の家の車の中で流れたのを聴いて、レミさんが突然「この曲!」って言ったのを覚えてる。

松尾 そう。小さい頃の私は恥ずかしくて父に曲名を聞けなかったんです。だから、タイトルを知ったのは大学生のときでした。メロディに物語性があるのがすごくいいですよね。CDの音と比べると、ハイレゾ音源で聴いたほうが立体的だね。すごい奥行きがある。いろんな人の声が重なっているので、こうやって立体的に聞こえたほうがより音の力が増しますね。

南石聡巳 CD音源とハイレゾ音源の違いがはっきりとわかりますね。それにしてもh.ear goは小さいのに音がしっかりしている。

亀本 僕、こういったコンパクトなスピーカーはけっこう持っていて。家で作業をしながらスピーカーで音楽を聴くことも多いんですが、h.ear goはとてもクリアな出音で、普段聴いているものと全然違います。あと、低音が嫌な感じに膨れてしまうスピーカーも多いんですけど、これはそんな感じもなくて心地よいです。

左から南石聡巳、松尾レミ、亀本寛貴。
Led Zeppelin「Physical Graffiti」

Led Zeppelin「Physical Graffiti」

Led Zeppelin「Physical Graffiti」
亀本寛貴

亀本 最近ツェッペリン後期の作品にハマっていて。特に「In the Light」のイントロのシンセのメロディが好きなんですよね。CDの音とハイレゾ音源を聴き比べると全然違います。CDで聴いていたときはそんなにくっきりとした音ではないと思っていたんだけど、ハイレゾ音源で聴くと音源の情報量が多いだけあって、「こんな音の成分あったんだ」と気付きがありました。あと、ドラムは“皮を叩く”楽器なんだなっていうことが感じられました。

南石 うん、やっぱり違いが感じられましたね。僕、ハイレゾ音源大好きなんですけど、ハイレゾとCD音源との違いってローからハイエンドまでの奥行き感に一番出る。亀本くんが「ドラムは皮を叩く楽器だ」と言ったように、楽器そのものの音がちゃんと表現できるのがいいところだと思います。

松尾 ちなみに南石さんはいつもハイレゾで音楽を聴いているんですか?

南石 リリースされていれば、ハイレゾ音源を聴くようにしています。あと、アナログレコードも好んで聴くね。

松尾 そうなんですね。音のプロフェッショナルである南石さんがいつもハイレゾで音楽を聴いているっていうのは、ハイレゾに対しての信頼度がすごく増しますね。

B.B. キング「Live at the Regal」

B.B. キング「Live at the Regal」

B.B. キング「Live at the Regal」
松尾レミ

松尾 ベースを重点的に聴いてみたんですが、CD音源だと割れたような平べったい音に感じるのが、ハイレゾだとちゃんと手で弾いているのがわかる。絵が立体物になったような感覚ですね。

南石 表現力が格段に違うね。実際に録音されている場で鳴っていた音が、ハイレゾで再現されているというか。僕はアナログレコードで表現できていたものがCDでは再現できていないと思っているんですが、ハイレゾだとまたレコード並みの立体感がある表現ができるようになる……そんな印象ですね。

亀本 YouTubeで探したりすると座り込んでゆったり歌うB.B. キングの映像がよく出てくるから「B.B. キングってこういう人なんだ」って思っていたんですけど、この時代のB.B. キングはキレキレですごいですね! 歌のパワーが全然違う。こんなにパンチのある歌を歌えるんだ。ハイレゾだとそれをより実感できますね。

過去の音が“リアルな音”になる

ベック「Mutations」

ベック「Mutations」

ベック「Mutations」

松尾 1曲目の「Cold Brains」はベックの歌が目立つきれいなバラードなんですけど、ハイレゾ音源ではより歌声が生々しく聞こえます。私、ハイレゾで音楽を聴くと、自分の曲をミックスダウンしているときの感覚がよみがえるんです。CDやMP3ではわからない音がわかるから。ハイレゾ音源はレコーディングの際に鳴っていた音が再現されていると思うので、ミュージシャン的には「こういうふうにレコーディングしたんだろうな」とも思えて勉強になりますね。

南石 まさにその通りだと思います。

亀本 しかも、こんなに小さなスピーカーでそれがわかるっていうね。手軽にぜいたくができるようになったよね。

ジョン・レノン「Imagine」

ジョン・レノン「Imagine」

ジョン・レノン「Imagine」

松尾 2曲目の「Crippled Inside」のボーカルにかかっているショートディレイ(間隔の短い反響効果)の部分をハイレゾで聴きたいと思って、この作品を選びました。でも、いざ聴いてみたら、そこよりもアコギの弦のカシャカシャした感じやスライドギターのリアルな音質が際立っています。私、中学生の頃The Beatlesやジョン・レノンのCDを聴いたとき、「過去の音だな」って思っていたんですよ。でもハイレゾ音源で聴くととてもリアルで、「この人はこうやって歌っている」ってイメージが湧く。だから若い人にも、古い音源をハイレゾで聴いてみてほしいなって思いますね。

南石 2人は若いのに古い音楽をちゃんと愛している感じがいいよね。僕らおじさんからしたらうれしい限り。音楽やっててよかったと思います(笑)。

左から亀本寛貴、松尾レミ。
GLIM SPANKY「Next One」
GLIM SPANKY「Next One」
アナログ盤 / 2016年10月26日発売 / 3564円 / Virgin Music / TYJT-59001
ハイレゾ版
SIDE A
  1. NEXT ONE
  2. 怒りをくれよ
  3. 闇に目を凝らせば
  4. grand port
  5. 時代のヒーロー
SIDE B
  1. 話をしよう
  2. NIGHT LAN DOT
  3. いざメキシコへ
  4. 風に唄えば
  5. ワイルド・サイドを行け
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)

GLIM SPANKY

松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに、松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「Move Over」が使われ、松尾の歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリースした。7月20日に2ndアルバム「Next One」を発表。このアルバムには映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌の「怒りをくれよ」、映画「少女」主題歌の「闇に目を凝らせば」などが収録されている。

南石聡巳(ナンセキトシミ)

1990年代にレコーディングエンジニアとしての活動を開始。Blankey Jet City、blood thirsty butchers、THE HIGH-LOWS、ギターウルフ、eastern youthなどのロックンロールバンドのほか、YUKI、Chara、木村カエラなどのレコーディングを担当。硬派なロックサウンドを得意としながら、若手からベテランまで幅広いアーティストを手がけている。GLIM SPANKYの作品では、アルバム「Next One」などでその手腕を発揮した。