ナタリー PowerPush - GREAT HUNTING 15周年記念オーディション「BAND ON THE RUN」
名門新人発掘部によるバンドオーディション徹底解剖
「BAND ON THE RUN」審査員 亀田誠治×木村豊×島田大介+加茂啓太郎 座談会
今回は加茂からの指名を受けた3人の審査員、亀田誠治、木村豊、島田大介が登場。加茂啓太郎も交えて、現在のシーンへの感想から、かつて新人だった“あの”アーティストの思い出や、今回の「BAND ON THE RUN」に際して期待する人材まで、それぞれの見地から大いに語ってもらった。オーディション応募者は無論必読だが、それ以外の読者にも十二分に楽しんでもらえる内容となっているので、ぜひ読んでほしい。
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 高田梓
現代のバンドを構成する3つの要素のスペシャリスト
──亀田さんと木村さんは東京事変の活動で一緒に仕事をされていて、それぞれ加茂さんとも古くから交流がありますが、島田さんと加茂さんは今日が初対面だということで。
島田大介 そうなんです。はじめまして(笑)。
加茂啓太郎 はじめまして。
亀田誠治 僕も初めてだ。はじめまして(笑)。
木村豊 (笑)。
──しかも木村さんと島田さんは、バンドはもとよりアーティスト発掘オーディションの審査員というのも初めてということで。
木村 そうですね。デザインとか、自分の仕事の範疇ならありましたけど。
島田 僕も同じです。
加茂 先日もナタリーでお話させていただいた通り、皆さんは音楽、ビジュアル、映像という、現代のバンドを構成する3つの要素のスペシャリストなので、それぞれの視点から応募者のリファレンス量を測っていただきたいと思っています。まず亀田さんは今回欠かせない人材だとすぐにお願いしました。木村さんは顔の見えるデザイナーがどんどん減ってきている昨今、きっちりとしたキャラクターで仕事をされている方だからお願いしました。そして島田さんは、今バンドやっている子たちの多くが憧れているRADWIMPSを手がけていらっしゃるから声をかけさせていただきました。島田さんとはまったく面識がなかったんですが、全員知り合いというよりも新鮮な気がしたので。金魚の飼育じゃないけれど、自分の中にある水槽の水を1/3程度入れ替える感覚でお願いしました(笑)。
音楽を深堀りしている人、してない人の二極化
──ではかなりざっくりした質問から入りますが、お三方それぞれの活動の領域から見ていて、最近の若い人たちにどんな印象をお持ちですか?
亀田 まず僕は、音楽を深堀りしている人、してない人の二極化が顕著な気がしています。決してどっちがいい、悪いということじゃなくて。それから、ネットの向こうの数字をものすごく信じて、指針にしている。例えば今回のオーディションのように、その道のトップランナーに論評してもらうことってすごく重要なことなんだけど、それよりも今どのくらいの数にウケているかのほうを気にしちゃっている人がいて。
木村 ああ、いくつ「いいね!」が付くか、みたいなことですか。
亀田 そうそう。または若い人たちは気に入った音楽をすごく掘り下げて聴いているんだけれど、持っている情報量に対してスキルや作品力というアウトプットの能力が追いついていなかったりする。
木村 でもそのまた一方では、「とにかくなんでも聴く」みたいな人が減ったような気がする。例えば渋谷系が流行った当時って、みんなものすごく音楽に詳しかったじゃないですか。
島田 そうですよね。あとは「このバンドっぽい音は、家で1人で作っているのかな?」という印象を受けるときもあります。今はバンドサウンドも宅録で録れますからね。
木村 宅録の意味合いがもう昔と違いますからね。昔はバンドできないから、メンバーや機材が足らないから宅録をしていたんだけど、今は「楽をするための宅録」なのかもしれない。
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GREAT HUNTING 15周年記念オーディション「BAND ON THE RUN」
- <応募条件>
- 12月14日に東京・原宿アストロホールで行われるライブ審査に参加可能であること。バンドであれば、音楽性、編成、年齢は問いません。
- <審査員>
- 亀田誠治 / 木村豊 / 島田大介
- <審査スケジュール>
- 2014年12月1日:応募締切(12月1日必着)
2014年12月8日:ファイナリスト発表
2014年12月14日:東京・原宿アストロホールにて最終ライブ審査
2015年2~4月:レコーディング、ビジュアル&ビデオ作成
亀田誠治(カメダセイジ)
1964年アメリカ・ニューヨーク生まれ。1989年に音楽プロデューサーおよびベーシストとしての活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、Do As Infinity、スガシカオ、アンジェラ・ アキ、JUJU、秦基博、いきものがかり、チャットモンチー、エレファントカシマシ、WEAVER、MIYAVI、赤い公園、東京スカパラダイスオーケストラなど数多くのアーティストのプロデュースやアレンジを手がける。また2004年夏に椎名林檎らと東京事変を結成し、数多くのヒット曲を発表。2012年閏日に惜しまれつつも解散する。2013年には2回目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を日本武道館にて開催。映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の音楽プロデュースなどさまざまなかたちで作品を届けている。2014年5月には「SAYONARA国立競技場 FINAL WEEK JAPAN NIGHT」にて音楽監督を務める。またオフィシャルサイトで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。
木村豊(キムラユタカ)
アートディレクター。1995年にCentral67を設立。以降、スピッツ、スーパーカー、椎名林檎、東京事変、七尾旅人、ART-SCHOOL、赤い公園らのCDジャケットを中心に、ビデオクリップの監督や本の装丁、ツアーグッズなどのデザインを手がけている。
島田大介(シマダダイスケ)
演出家、写真家、アートディレクター。株式会社コトリフィルム代表。200本以上のビデオクリップ、ユニクロ、Xperiaなどのコマーシャルフィルム、ファッションブランドなどの映像演出を手がけ、CDジャケットのアートディレクション、秦基博のライブを総演出するなど演出活動は多岐にわたる。2013年には初監督した小松菜奈主演短編映画「ただいま。」が上映される。写真家としてはファッションのほか、CDジャケット、Charaのパーソナルブックなどを手がける。2014年には東京・SUNDAY ISSUEにて写真展を開催した。
加茂啓太郎(カモケイタロウ)
ユニバーサルミュージックの新人発掘セクション・GREAT HUNTINGのチーフプロデューサー。1960年生まれ、東京都出身。1983年に東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)に入社。主に邦楽ディレクターを務め、1998年から新人発掘・育成を担当して現在に至る。発掘に関わった主なアーティストはウルフルズ、SUPER BUTTER DOG、ART-SCHOOL、氣志團、フジファブリック、Base Ball Bearなど。2013年8月に著書「ミュージシャンになろう!」を刊行した。
2014年11月14日更新