ナタリー PowerPush - GREAT HUNTING 15周年記念オーディション「BAND ON THE RUN」
名門新人発掘部によるバンドオーディション徹底解剖
“第2の”は要らない
──お三方の中でも、亀田さんは今回のオーディションに限らず、ご自身のWEBサイト(「亀の恩返し」)をはじめ、これまでさまざまなオーディションに関わってこられていますが、自分の中での審査基準というか、常にルールにしていることって何かありますか?
亀田 ひとつだけすごく気にしていることは、“第2の”は要らないということですね。ある特定の先人からの影響を、明らかに強く受けすぎていて、そこからもう離れられない音を出しちゃっている人は、その時点でもうNGです。
加茂 いるよね、諸先輩方の顔が見えすぎる人(笑)。
亀田 そう。僕はそういうとき、審査の現場でアドバイスとして言っちゃいます。「カッコいいけど似すぎてるよ?」って。で、「諸先輩方」みたいな言葉を使うと会場が沸きますもん。つまりお客さんも聴いていてわかっているんですよね。
──ちなみにオーディションとは異なりますが、木村さんと島田さんはご自身の事務所のスタッフを選ぶ際のポイントってありますか?
木村 逆に「こいつはすごい!」っていう人が面接に来たことはないですね。
一同 (笑)。
──そりゃそうか。そんな人はとっくに独り立ちしていますもんね(笑)。
木村 だからアシスタントとして優秀かどうか、ぐらいの見方になっちゃいますね。でも僕、アシスタントを面接ではなく、スカウトしたことはありますよ。飲み屋で。
──飲み屋で?
木村 当時通っていた飲み屋で、美術好きの面白い子がいたんで、声をかけて。うちの事務所に入ってもらったこともあります。
亀田 そういうことで言えば、僕も赤い公園はある意味スカウトというかナンパだったかも(笑)。僕が東京事変で出ていた「EMI ROCKS 2012」にたまたま彼女たちも出ていて。あのときの、彼女たちの普通じゃないライブの様子を観て、普段は自分からそんなこと絶対にしないんだけれど、バックステージまで出向いて「君たち本当に素晴らしいよ!」と伝えましたからね。
島田 やっぱり何にせよあんまり真面目な感じよりかは、ちょっと壊れてるぐらいのほうがいい。コンプレックスとか闇を持っていて、それを埋めるために表現する人の表現って、断然面白いんですよね。
木村 でもそういう人をスタッフに選んじゃうと仕事は頼めない。進まないから(笑)。
島田 そうそう。むしろ余計に仕事が増えちゃう(笑)。
ビッグバン前夜の予兆は、ある!
──今回の「BAND ON THE RUN」は「GREAT HUNTING」の15周年記念として開催するオーディションです。SNSの浸透に合わせてオーディションの形態も多様化した気がするのですが、加茂さんはその点についてどうお考えですか?
加茂 誤解を恐れずに言えば、オーディションのハードルって、傾向としては下がっていると感じています。例えばSNSで写真を送るオーディションとか、応募者全員に会うのがウリというオーディションがあって。まあ僕らも、飛び入り参加できるオープンマイクのオーディションとかやりますし、“ともかくまず数を集めろ”というのもオーディションの鉄則ですから、どれがいい、悪いという話でもない。ただ、何十万という数を集めても、今のところの僕の感覚としては、日々寄せられるデモ音源の中から「これは?」と思えるものって結局3000本に1本の割合です。だったら大勢に逆らってでも、ハードルを上げるほうに向かうというか、今回の「BAND ON THE RUN」は「GREAT HUNTING」とこの審査員お三方の名前でピンと来るヤツだけを相手にさせてもらう、くらいの気持ちではいますね。
亀田 僕もオーディション以外に事務所に送られてくるデモもあれば、ライブの会場や出先で突然デモを渡されて困惑することもありますが、確率論は加茂さんとまったく同じですね。
──これは前回のインタビューの中で加茂さんが話しているんですが(参照:GREAT HUNTINGチーフプロデューサー 加茂啓太郎インタビュー)、要は加茂さんが「GREAT HUNTING」を発足させた15年前というのは、ナンバーガール、椎名林檎、スーパーカーにaiko、くるりやBLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTが登場した頃であり、つまり現在のJ-POPシーンはこの15年前のビッグバンの影響下でしか動いてこなかった、と。このご意見についてはいかがでしょうか?
亀田 僕自身は加茂さんの言う15年が、さらに前期と後期で2分割されているような感覚があって。これは自分で言うのも恥ずかしいんですけど(笑)、例えばハマ・オカモトくん(OKAMOTO'S)って、僕のことをめっちゃ好いてくれていて。でも彼は僕のことを椎名林檎ワークスで知ったのではなく、東京事変ワークスから知ったと言うんですね。
木村 それ、赤い公園の(歌川)菜穂ちゃんも同じようなことを言ってましたね。
亀田 そうそう。だから1999年から2000年の頭ぐらいにビッグバンが起きて、そのあとにもう一度ちょっとした山谷ができたような気がしていて。で、その余波をこの頃さらに感じることがあって。あくまで僕のアンテナで計っただけなんだけど、最近、楽器人口が増えている気がするんですよ。だって下北沢とか、すごいよ? なんかみんなして楽器担いで歩いてません?
木村 僕の事務所は下北ですけれど、確かにちょっと増えた印象はありますね。
島田 特に女の子は増えた気がしますね。
加茂 僕の周りも最近面白いのは女の子ばかり。大森靖子もそう。一番ブッ込んでくるし、一番無茶するじゃないですか。そろそろ男子から強烈なキャラクターが出てきてほしいんですよね。(甲本)ヒロトくんとか峯田(和伸)くんみたいな。アンダーグラウンドだけじゃなくて、オーバーグラウンドでも勝負のできるヤツ。宮本(浩次)くんとか向井(秀徳)くんとかトータス松本のような、肉食で骨太な、パンクなヤツが出てきても楽しいなあと思いますね。
亀田 でも今日みんなで話して感じましたよ。きっとそろそろです。ビッグバン前夜の予兆は、ある!(笑)
加茂 だといいな。こっちの言うことをまったく聞かないぐらいのヤツに、そろそろ出会いたいですね。
次のページ » Base Ball Bear 堀之内大介インタビュー
GREAT HUNTING 15周年記念オーディション「BAND ON THE RUN」
- <応募条件>
- 12月14日に東京・原宿アストロホールで行われるライブ審査に参加可能であること。バンドであれば、音楽性、編成、年齢は問いません。
- <審査員>
- 亀田誠治 / 木村豊 / 島田大介
- <審査スケジュール>
- 2014年12月1日:応募締切(12月1日必着)
2014年12月8日:ファイナリスト発表
2014年12月14日:東京・原宿アストロホールにて最終ライブ審査
2015年2~4月:レコーディング、ビジュアル&ビデオ作成
亀田誠治(カメダセイジ)
1964年アメリカ・ニューヨーク生まれ。1989年に音楽プロデューサーおよびベーシストとしての活動を始める。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、Do As Infinity、スガシカオ、アンジェラ・ アキ、JUJU、秦基博、いきものがかり、チャットモンチー、エレファントカシマシ、WEAVER、MIYAVI、赤い公園、東京スカパラダイスオーケストラなど数多くのアーティストのプロデュースやアレンジを手がける。また2004年夏に椎名林檎らと東京事変を結成し、数多くのヒット曲を発表。2012年閏日に惜しまれつつも解散する。2013年には2回目となる自身の主催ライブイベント「亀の恩返し」を日本武道館にて開催。映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の音楽プロデュースなどさまざまなかたちで作品を届けている。2014年5月には「SAYONARA国立競技場 FINAL WEEK JAPAN NIGHT」にて音楽監督を務める。またオフィシャルサイトで、自身の知識をフリーでシェアし、新しい才能を応援する「恩返し」プロジェクトを展開中。
木村豊(キムラユタカ)
アートディレクター。1995年にCentral67を設立。以降、スピッツ、スーパーカー、椎名林檎、東京事変、七尾旅人、ART-SCHOOL、赤い公園らのCDジャケットを中心に、ビデオクリップの監督や本の装丁、ツアーグッズなどのデザインを手がけている。
島田大介(シマダダイスケ)
演出家、写真家、アートディレクター。株式会社コトリフィルム代表。200本以上のビデオクリップ、ユニクロ、Xperiaなどのコマーシャルフィルム、ファッションブランドなどの映像演出を手がけ、CDジャケットのアートディレクション、秦基博のライブを総演出するなど演出活動は多岐にわたる。2013年には初監督した小松菜奈主演短編映画「ただいま。」が上映される。写真家としてはファッションのほか、CDジャケット、Charaのパーソナルブックなどを手がける。2014年には東京・SUNDAY ISSUEにて写真展を開催した。
加茂啓太郎(カモケイタロウ)
ユニバーサルミュージックの新人発掘セクション・GREAT HUNTINGのチーフプロデューサー。1960年生まれ、東京都出身。1983年に東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)に入社。主に邦楽ディレクターを務め、1998年から新人発掘・育成を担当して現在に至る。発掘に関わった主なアーティストはウルフルズ、SUPER BUTTER DOG、ART-SCHOOL、氣志團、フジファブリック、Base Ball Bearなど。2013年8月に著書「ミュージシャンになろう!」を刊行した。
2014年11月14日更新