ナタリー PowerPush - GREAT HUNTING 15周年記念オーディション「BAND ON THE RUN」

名門新人発掘部によるバンドオーディション徹底解剖

新人発掘=マグロ漁

──実際にフィールドワークで見つけたバンドって誰ですか?

氣志團

氣志團はまさにそうですね。ある音楽関係者の葬式の帰りに上田健司くんとメシを食ってたら「このバンド知ってる?」って氣志團のインディーズ盤を見せてくれて。当時からあのビジュアルだったから「面白いね。で、音はどうなの?」って聞いたら「いや、オレもさっきCDをもらったばっかりで聴いてないからわからない」と(笑)。でも面白そうだし、気になったから、調べて会いに行ったりとか、そういう個人のネットワークから見つかることが多いんですよ。ただ今思い返してみると、さっきもお話した通り、実は僕のやってることって学生の頃から変わらないんですよ(笑)。学生の頃からライブハウスに通っては、いいバンドがいれば「よかったです」って話しかけてみたりしていたわけですし。レコード会社に入ってからはそのセリフが「よかったよ。プロになる気はない?」になっただけ。言ってることが変わっただけで、やってることは変わらない気がしています。学生の頃から自主制作のアナログやカセットを買ったりはしていたわけですし、それが経費で買えるようになっただけというか(笑)。言ってしまえば学生ノリの延長線なんです。

──いやいやいや。学生にはナンバーガール、ART-SCHOOL、Base Ball Bear、フジファブリック、氣志團、相対性理論をフックアップできるわけがないですから(笑)。

でもどうすればいいバンドが見つかるのか? そのメソッドはいまだに見つかってないんですよ。ある意味、マグロ漁師みたいなものですから。半年まったくアタリがないときもあるんだけど、半年に1回デカいマグロが釣れれば向こう半年は食べていけるみたいな(笑)。

──あはははは(笑)。

かと思ったら続けざまにいいバンドを見つけられることもありますし。僕らには一応年間2~3アーティスト……もちろん多いに越したことはないんですけど、最低でも2~3アーティストは見つけてくるようにっていうミッションがあって、それをクリアするための努力を続けているだけなんですよね。

ビックリしたいんだと思います

──その努力の一環であり、「GREAT HUNTING」を特徴付けるものの1つにオススメのバンドやシンガーソングライターを各地のライブハウスに出演させるショーケース的イベント「GREAT HUNTING NIGHT」がありますよね。

「GREAT HUNTING NIGHT」を始めた理由の1つは人脈作り。ライブハウスのブッキングマネージャーと仲良くなりたかったんです。「最近いいバンドいる?」「これいいですよ」っていう会話から本当にいいバンドが見つかるケースが多いので。The SALOVERSなんかは(東京・下北沢の)GARAGEの出口さんっていう店長さんから薦められたバンドですし。あと気になるバンドを集めちゃえばラクにひと晩で観られるじゃないですか(笑)。ライブハウス推薦のバンドもそこで観られるし。それも理由の1つではありますね。しかも「GREAT HUNTING NIGHT」はウチが仕切るライブだからバンドにとってもラクというか。チケットノルマを気にせず出られるわけですし。

──そして今や「GREAT HUNTING」ブランドは、音楽に明るい人たち、特にプレイヤーには知られた存在になった。当初からここまでの存在になるだろういうビジョンってありました?

さすがになかったですね。ただ15年やってみた結果、Def JamやCreationに近いものになれてはいるのかなという気はしています。

──ただ「GREAT HUNTING」は、ヒップホップのDef Jamやニューウェイブ・ギターロックのCreationとは違う。すごくジャンルで括りにくいブランドですよね。出身アーティスト一覧を見ても、実はどんなジャンルの新人を求めているのかわかりにくい(笑)。

ナンバーガール

ジャンルにはこだわってないですね。

──じゃあアーティストをジャッジするときの基準って?

ビックリするかどうか。氣志團なんかが典型なんですけど、ビジュアルを見た瞬間、誰もが「なんだこれ!?」ってなるじゃないですか(笑)。ナンバーガールもそう。今でこそ、それこそナンバーガールのおかげで増えた感じもありますけど、1997年当時、向井(秀徳)くんのように、あんな浪人生みたいなビジュアルのバンドっていなかったですから。あと相対性理論はまず音だけ聴いて「なんだこのメロディ? アニソン?」って思ったんだけど、アレンジやプレイはものすごくIQが高いから、やっぱり「なんだこれ!?」ってなって。たぶん僕はビックリしたいんだと思います(笑)。

GREAT HUNTING 15周年記念オーディション「BAND ON THE RUN」
<応募条件>
12月14日に東京・原宿アストロホールで行われるライブ審査に参加可能であること。バンドであれば、音楽性、編成、年齢は問いません。
<審査員>
亀田誠治 / 木村豊 / 島田大介
<審査スケジュール>
2014年12月1日:応募締切(12月1日必着)
2014年12月8日:ファイナリスト発表
2014年12月14日:東京・原宿アストロホールにて最終ライブ審査
2015年2~4月:レコーディング、ビジュアル&ビデオ作成
加茂啓太郎(カモケイタロウ)

ユニバーサルミュージックの新人発掘セクション・GREAT HUNTINGのチーフプロデューサー。1960年生まれ、東京都出身。1983年に東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)に入社。主に邦楽ディレクターを務め、1998年から新人発掘・育成を担当して現在に至る。発掘に関わった主なアーティストはウルフルズ、SUPER BUTTER DOG、ART-SCHOOL、氣志團、フジファブリック、Base Ball Bearなど。2013年8月に著書「ミュージシャンになろう!」を刊行した。


2014年11月14日更新