昔こんな感じで映画を撮ってたな
──塚本さんの現場にXperia 1を取り入れるとしたら、どのように使えると感じますか?
僕がずっとやりたいと思っている“1人映画部隊”、それから大勢で撮影するような活劇的な映画。その両方に、Xperia 1をうまく使えないかなと思います。“1人映画部隊”では、俳優を招いて撮影や編集は全部1人でやるのもいいし、俳優もスタッフも自分1人だけという究極の“1人映画”を撮ってみたいです。活劇的な映画だったら、走っている車の中でのアクションシーンとか、カメラが好きな瞬間に入るのが難しいような場面でもフットワークのいいカメラアングルでどんどん撮れそう。引きの映像はこれまでのソニーさんのカメラで撮影して、その中にXperia 1で撮ったものを挟み込んでいくというのはやってみたい気がします。
──ちなみに、もし8mmでの自主制作時代にXperia 1と出会ったら使われてました?
昔あれば御の字ですよね! 絶対に使い道を考えていると思います。実際に使ったときも、カメラが軽くて「昔こんな感じで映画を撮ってたな」と、自主制作時代が懐かしくなりました。それと、閉所に閉じ込められた男を描いた過去作「HAZE(ヘイズ)」では、壁を抜いたところにカメラを置いて撮っていたんです。Xperia 1なら狭い空間に置いて撮影ができるし、あのときこれがあったらよかった。普段の撮影現場だと、カメラと色などを確認する業務用モニターは別の場所にあるのですが、Xperia 1はカメラに本格的なモニターが付いている感覚があります。モニターでしっかりと確認しながら撮影できるのが素晴らしいと思いました。
──使う人次第でいろいろな可能性が生まれますね。そういえば、塚本さんが出演した「シン・ゴジラ」にもスマートフォンで撮影された場面がありました。今後スマートフォンでさらにハイレベルな撮影が可能になったら、映画業界自体に変化があると思いますか?
絵のキャンバスと一緒で、その人次第でプロとアマチュアの境界を超えることができる。すごい時代になってきましたね。「シン・ゴジラ」では大きなカメラやスマートフォンを同時に回して、あとから編集でそれらを混在させて1本の映画にしていたのですが、まったく違和感のない作りになっています。スマートフォンなら誰でも自由に撮れるので、今よりさらにハイレベルな撮影ができるようになれば、新たな才能が出現する可能性も大きくなるでしょうね。
もっと自由に映画を作れる
──塚本さんにとって映像を撮るというのはどういうことですか。撮りたいと思う瞬間について教えてください。
自分のやりたいアイデアと、世の中の動き、現実的にできるという3つの要素がそろったときでしょうか。ふっと降ってきたアイデアを1冊のノートに書いて追加があれば書き足したり、また別のアイデアが浮かんだときは違うノートに書いたりしているんです。そうしているうちに妙に膨らんでくる1冊があるのですが、今の時代の空気感が濃密にその映画と結び合わさったときに、「今作らないと」という焦りや衝動のような感覚になって動き出します。Xperia 1みたいにスマートフォンレベルの大きさだったら、思い付いたらすぐ撮影を始められる。もっと自由な発想や表現で映画を作れると思います。
──いろいろあるとは思いますが、塚本さんが考える映画作りの魅力とは?
すべての工程が面白いですね。撮影や編集だけでなく、宣伝や実際にお客さんに来てもらうために策を練るのも。自主配給をしているので失敗したら次回作は製作費が小っちゃくなりますが。
──最後に、今後の活動についても聞かせてください。
「斬、」が続いているのと、毎年終戦記念日の辺りになると上映される「野火」が今年で5年目になります。
──「野火」については、1年目に「毎年夏に上映される作品になれば」とおっしゃっていたのが印象的です(参照:塚本晋也が「夏が来るたびに上映される作品になれば」と語る「野火」上映&ライブ)。
5年目になるまで続いて感慨深いです。「野火」で僕がまた全国行脚する機会ができたら、たくさんの劇場を回ってお客さんと話してみたいです。それから、次に作る映画はちょっと時間をかけて取り組もうと思っています。
「好きを極めたい人々に、想像を超えたエクスペリエンスを」がコンセプトのスマートフォン。ソニーのプロ向け映画撮影用デジタルビデオカメラ開発チームが監修した機能「Cinema Pro」が搭載されており、映画の質感や色表現で映像撮影を楽しめる。さらに動画を見ながらSNSを見たり、ショッピングサイトを見比べるなど、1つの画面で2つのアプリを同時に操作することも可能。スマートフォンでは初めて、瞳オートフォーカスに対応する「標準」「望遠」「超広角」のトリプルレンズカメラが採用された。