「CUT」「MOZU」など全13本！“俳優西島秀俊”を配信で堪能、「ドライブ・マイ・カー」テレビ初放送記念 (2/2)

テレビ初放送直前！知っておきたい「ドライブ・マイ・カー」きほんの“き”

短編小説が異例の長尺に、179分の旅

原作は村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に所収されている「ドライブ・マイ・カー」。文庫で50ページほどの短編だが、映画は商業作品としては異例の179分という長さに。濱口竜介と共同脚本の大江崇允は、主人公である俳優の家福とドライバー・みさきの車における会話劇の側面が強い原作を大胆に翻案。同短編集収録の「木野」「シェエラザード」や戯曲「ワーニャ伯父さん」の要素もふんだんに取り入れながら、東京、広島、北海道といった風景の中を車が走るロードムービーとしての側面を強調した。この2人の旅路を作り上げるうえで、村上の長編小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」における“巡礼”の要素も大きく意識していたという。濱口は映画が長尺となった理由を「家福とみさきは簡単にしゃべる間柄ではなくて、しゃべったと思ったら映画が半分過ぎている。物語の都合でしゃべらせずに、2人が自然と口を開くまで、（脚本を）書きながら待っていた感覚」と執筆時の心境として明かしている。

黄色から赤へ、舞台装置としてのサーブ900

家福とみさきが自然と歩み寄るのに、重要な役割を果たすのが家福の愛車サーブ900ターボだ。スウェーデンの航空機メーカーであり自動車も製造したサーブが手がけ、日本でも1980年代に人気を博した名車。濱口は「車は電車や船とは違う閉鎖されたプライベートな移動空間。そこで、なかなか自分のことを話さない人物たちが『この人にはこのことは言っていいかもしれない』と少しずつ領域を広げていく」と、舞台装置としての車の重要性を明かしている。原作からの一番の変更点とも言えるのが、その車体の色。制作陣は原作と同じ黄色では緑の多い日本の風景だと埋もれてしまうという理由から、赤色を選択した。さらに原作はコンバーチブルと呼ばれる幌付きのオープンカーだったが、映画は屋根が開くサンルーフのタイプに。これは風が吹き付けるオープンカーでは現場で同時録音された声を使うのが難しいというのが変更の理由だそう。みさきを演じた三浦透子は本作のために運転免許を取得。人を乗せて運転する緊張感と、相手の目を見られない環境が、より演技の感度を高めたことを明かしている。

「ドライブ・マイ・カー」

ハマグチをどう思う？着実に高めた世界での評価

2018年の商業映画デビュー作「寝ても覚めても」でカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に初選出された濱口。同年には5時間17分に及ぶ前作「ハッピーアワー」を5つのエピソードに分けた再編集版がフランスで劇場公開され、動員10万人を超える異例のヒットを記録した。是枝裕和曰く、その頃から「ハマグチをどう思う？」と聞かれることが増え、海外での注目度の高さを実感していたという。その後、濱口が脚本家として参加した黒沢清の「スパイの妻＜劇場版＞」はヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞（監督賞）を受賞。監督した短編集「偶然と想像」はベルリン国際映画祭の銀熊賞（審査員グランプリ）に輝き、その名を世界に轟かせた。2回目のカンヌとなった「ドライブ・マイ・カー」はメディアによる下馬評ではその年の最高評価を獲得。日本映画初の脚本賞を受賞し、世界での快進撃が始まる。全米批評家協会賞では作品賞を含む主要4部門を受賞。アカデミー賞の作品賞と脚色賞へのノミネートは日本映画初、監督賞へのノミネートは「砂の女」勅使河原宏、「乱」黒澤明に続く36年ぶり3人目の快挙となった。そして邦画としては13年ぶり2回目の国際長編映画賞に輝く。

特番情報

「ドライブ・マイ・カー」と濱口竜介監督の世界

#1脚本編 WOWOWプライム 2022年7月16日（土）15:15～ほか
#2演出編 WOWOWプライム 2022年7月17日（日）21:30～ほか
※WOWOWオンデマンドでの同時配信、アーカイブ配信あり

「ドライブ・マイ・カー」のテレビ初放送を記念し、WOWOWでは監督・濱口竜介の特別番組をオンエア。西島秀俊のほか、キャストの三浦透子、共同脚本の大江崇允、プロデューサーの山本晃久らが出演し、世界を席巻した濱口の脚本術と演出術に迫る。

「ドライブ・マイ・カー」と濱口竜介監督の世界 | WOWOWオンライン

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