映画ナタリー Power Push - 「ターザン:REBORN」

愛する人と故郷を守るため、すべてを捨てて立ち向かう

桐谷健太インタビュー

日本版主題歌を[Alexandros]が書き下ろし

爽快なアクションと圧倒的な映像美で新たなターザン像が描かれる「ターザン:REBORN」。ここでは、日本語吹替版で主人公ターザンの声を担当した桐谷健太のインタビューを掲載。初挑戦した日本語吹替で味わった感覚や、かつてないほど立体的に描かれたターザンと妻ジェーンのキャラクターの魅力、そして物語の核でもある愛について語ってもらった。

取材・文 / 橋真奈美 撮影 / 増永彩子

INTERVIEW 桐谷健太(日本語吹替版・ターザン役)

ターザンらしさが出ればと、アフレコ作業は裸足で!

──落ち着いた男っぽい声がターザンと合っていました。

ありがとうございます。キャストの皆さんが体を張って何カ月もかけて作ったキャラクターに、俺がマイクに向かって魂を込めていく。本当に濃い時間でした。声を当てる仕事は初めてということもあって、結果に自信満々ということはないけど、ほかの現場で会った人たちから「(桐谷さんって)ターザンっぽい」と言われることがあったので、はまり役だと感じています。

──ターザンの第一声が聞けるまで、オープニングから約11分もありました。

桐谷健太

そうそう、最初はなっかなかしゃべらないんですよね。英国首相に仕事を頼まれているのに、黙ってお茶を飲んだりして。溜めて、溜めて……「断る」って一言(笑)。

──音声の収録はほぼ台本順に行われたそうですが、「断る」は、桐谷さんにとっても最初のセリフということで、とりわけ意識したり、力が入ったりしませんでしたか?

いや、今回は感覚的にやったんですよ。作品を何度も見返したり、このセリフはこう言おうと細かくプランを立てたりは一切してないです。ターザンはジャングルで動物に囲まれて育った人間なので、言葉がたどたどしいといった特徴があると思う。でも、重要なのはそういうところじゃなく、頭で考えてやるより、もっと本能的な感覚を大事にしつつ、ちゃんと日本語として表現したほうがいいなと思ったんです。

──ターザンが英国ロンドン在住の伯爵として登場する序盤は、ほかのシーンに比べて、しゃべり方が二枚目風だった印象がありますが。

ターザンはカッコつけてるわけじゃないだろうけど、親から引き継いだ地位に対する自負や、貴族の気品みたいなものはあると思うんです。そこはなんとなく出せたらいいなと思ってました。ターザンがスーツを着ているシーンでは俺も靴を履いて、彼がジャングルに行ってからは靴を脱いでアフレコ作業に臨んだんですよ。崖を転がり落ちてせき込むシーンなんかは、ホンマは自分も床をゴロゴロしたかったけど……マイクを持ってやるわけにもいかない。だから、そうした工夫で何かがちょっと変わればいいなと思ってやってたところはありますね。

顔までアレクサンダー・スカルスガルドになった気分(笑)

──初めて日本語吹替に挑戦した感想は?

ある意味、自分がお芝居するときよりも、もっと細かく深いところを要求された感じですね。自分がお芝居するときは、セリフや表情、動作などのすべてで100%にするけれど、吹替は声だけで100%にしないと伝わらない。しかも、声を担当する自分はキャラクターの口元や表情、あと画面全体を見てセリフを言うけど、そのキャラクターは相手の人物を見て会話してる。その重複する関係や距離感が、難しくもあり、めちゃくちゃ面白くもありました。

「ターザン:REBORN」より。

──ターザン役のアレクサンダー・スカルスガルドの中に入っているような感覚でやればいいというわけではないんですね。

アレックスの中に入っている瞬間もあるけど、むしろ、彼の表情や体の動きを含めた画面全体をしっかり見ていないとダメでしたね。アフレコ中はずっとアレックスの顔を見ていたので、顔も含めて、自分がアレックスになったような気持ちになりました。ファンの方には申し訳ないですけど、鏡を見ても「なんか若干似てる!」みたいな(笑)。

──LAプレミアでお会いしたんですよね。そのときの印象はいかがでしたか?

そうそう。アレックスは気さくでノリもいい人でしたよ。俺が「趣味で銭湯によく行くんですよ」という話をしたら、「じゃあ一緒に行こうよ、健太」とノッてきてね。「アレックスが来たら、おっちゃんらがビックリするで!」と言っておきましたけど(笑)。(参照:桐谷健太、「ターザン」LAプレミアでサミュエル・L・ジャクソンに筋肉褒められる

「ターザン:REBORN」2016年7月30日より3D / 2D公開
「ターザン:REBORN」
英国貴族として生まれながら自国の反乱に巻き込まれて両親を失い、コンゴのジャングルで動物たちに育てられたターザンことジョン・クレイトン。青年へと成長したターザンは人間の女性ジェーンと出会い、やがて結婚。ロンドンで実業家として裕福な暮らしを送っていた。そんな折、ターザンは英国政府よりベルギー国王レオポルド2世が統治するコンゴの外交視察の命を受け、アメリカ政府の要人ジョージ・ワシントン・ウィリアムズ、妻ジェーンとともに故郷を訪れる。だがそれは、レオポルド2世に仕える官僚レオン・ロムが仕組んだ罠だった。ロム一味にジェーンをさらわれ、故郷を侵略されたターザンは、妻と故郷を救うために立ち上がる。
スタッフ
  • 監督:デヴィッド・イェーツ
  • 脚本:クレイグ・ブリュワー、アダム・コザッド
  • 製作:ジェリー・ワイントローブ、デヴィッド・バロン、アラン・リッシュ、トニー・ルドウィグ
  • 製作総指揮:スーザン・イーキンス、ニコラス・コルダ、ブルース・バーマン
キャスト
  • ターザン / ジョン・クレイトン:アレクサンダー・スカルスガルド
  • ジョージ・ワシントン・ウィリアムズ:サミュエル・L・ジャクソン
  • ジェーン・クレイトン:マーゴット・ロビー
  • 首長ムボンガ:ジャイモン・フンスー
  • 首相:ジム・ブロードベント
  • レオン・ロム:クリストフ・ヴァルツ
桐谷健太(キリタニケンタ)

1980年2月4日、大阪府生まれ。2002年にテレビドラマ「九龍で逢いましょう」で俳優デビューし、2007年に「GROW 愚郎」で映画初主演を飾る。主な出演ドラマに「ROOKIES(ルーキーズ)」「天皇の料理番」、出演映画に「クローズZERO」「ソラニン」「BECK」「GONIN サーガ」「バクマン。」など。現在「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」が公開中。2017年に出演作「彼らが本気で編むときは、」の公開を控える。2015年よりauのCM「三太郎」シリーズで浦島太郎役を務めている。


2016年7月29日更新