映画ナタリー Power Push - 辛酸なめ子が語る「少女」
歪な闇と死生観を抱え生きる17歳の少女たち
湊かなえの人気小説を「ぶどうのなみだ」の三島有紀子が映画化した「少女」。三島が“死”をキーワードに、本田翼と山本美月が演じる女子高生それぞれの物語を絶妙に絡ませながら、女の中に潜む“闇”を艶美に、繊細に、また力強く映し出す。「17歳という自分勝手で危うい年代を生きる“少女たち”を描いてみたかった」と語る三島。本作は、純粋さと残酷さ、はかなさと強さ、そして青春とミステリーを内包している。
映画ナタリーでは、自身も女子校出身というメディア・アクティビストの辛酸なめ子にインタビューを実施。本作の感想に加え、自身の学生時代の体験、女子校教室内の驚くべき実態などを聞いてみた。さらに、本田と山本のインタビューも掲載。難役に挑んだ感想や親友役を務めた互いの印象、自身が17歳の頃のエピソードなどを語ってもらった。
文 / 下森宏益(P1,5) 取材・文 / 稲田豊史(P2~4) 撮影 / 杉映貴子
由紀は、保健室のベッドにうずくまり「死にたい」と訴えかける敦子に、「暗闇の中をひとりぼっちで綱渡りしている、そんな気持ちかもしれないけど、そんなことないから」と優しく手を差し伸べる。その夜、書きかけの小説を完成させた由紀。だが翌日、原稿が何者かに盗まれてしまう。犯人を突き止めた由紀は、ある危険な行動に出る。
連日クラスメートから向けられる冷ややかな視線やSNSでの誹謗中傷に苦しむ敦子。学校で唯一の友達だと思っていた由紀との関係もギクシャクしているように感じ、次第に距離を置く。だが由紀のことが気になり、何が彼女を変えたのか見守る。そんな折、敦子は転校生の紫織に誘われ、断りきれずにある犯罪の共犯者となってしまう。
三島有紀子コメント
もともとの敦子は明るくて強い、心身ともに健康的なキャラクター。その性格は山本さんに近いと思います。山本さんは、人気者が崩壊していくさまを繊細に演じてくれました。
次のページ » インタビュー 辛酸なめ子が語る「少女」
- Contents Index
- 「少女」作品紹介
- 辛酸なめ子インタビュー
- 本田翼&山本美月インタビュー
「少女」2016年10月8日より全国にて公開
「ねえ、死体って見たことある?」。女子校に通う高校2年生の桜井由紀と草野敦子は幼なじみで親友。ある日、転校生のある一言を機に、由紀は人が死ぬ瞬間を見たいという欲望に駆られる。夏休み、由紀は“死”の瞬間を目撃したい思いから小児科病棟でボランティア活動を始める。一方、ある出来事がきっかけで自信を失い、いじめに苦しんでいた敦子もまた、人が死ぬ瞬間を見れば生きる勇気が持てるのではと、養護老人ホームのスタッフとして働くことになる。
スタッフ
監督・脚本:三島有紀子
脚本:松井香奈
原作:湊かなえ「少女」(双葉文庫)
主題歌:GLIM SPANKY「闇に目を凝らせば」
キャスト
桜井由紀:本田翼
草野敦子:山本美月
牧瀬光:真剣佑
滝沢紫織:佐藤玲
小倉一樹:児嶋一哉(アンジャッシュ)
高雄孝夫:稲垣吾郎
© 2016「少女」製作委員会
三島有紀子コメント
本田さんは、憂いを帯びた表情が魅力的。冒頭シーン、由紀の瞳の中にどれだけ理不尽な怒りを込められるかが鍵でした。このときの目で、由紀というキャラクターが生まれました。