「グレート・ビューティー/追憶のローマ」などで知られるパオロ・ソレンティーノが初めて女性を主人公に据え、新境地を開拓した「パルテノペ ナポリの宝石」が公開中だ。南イタリアのナポリで生まれ、人魚の名でナポリの街を意味する“パルテノペ”と名付けられた女性が、無情な人生をひたむきに歩み続け、愛と自由を追い求める姿が描かれる。
その輝きで多くの人を魅了し、時には悲劇を起こすパルテノペを演じたのは、新星セレステ・ダッラ・ポルタ。ステファニア・サンドレッリ、ゲイリー・オールドマン、シルヴィオ・オルランドら豪華俳優陣が脇を固め、ラグジュアリーブランドとして知られるサンローラン傘下のサンローラン プロダクションが製作に名を連ねた。
映画ナタリーでは本作の日本公開を記念し、「ここは退屈迎えに来て」「あのこは貴族」などを手がけ、映画好きとしても知られる作家・山内マリコとダッラ・ポルタとの対談をセッティング。印象的なセリフやシーンを語り合う中で、本作の魅力が紐解かれていく。
なお本文には一部ネタバレを含むためご注意を。
取材・文 / 金子恭未子
女神が人間になっていく過程を追いかけている(山内)
山内マリコ Buongiorno! 主に女性同士の友情をテーマに、作品を書いている日本の小説家です。
セレステ・ダッラ・ポルタ Buongiorno! 山内さんの本、読んでみたいです。私はミラノ生まれの27歳で、今はローマで暮らしています。こんなふうな自己紹介でいいんでしょうか?(笑)
一同 (笑)
──今回はダッラ・ポルタさん主演の「パルテノペ ナポリの宝石」の日本公開にあたって、お二人の対談をセッティングしました。山内さんは映画をご覧になっていかがでしたか?
山内 私はパオロ・ソレンティーノ監督の「グレート・ビューティー/追憶のローマ」が好きなんですが、初恋の人が一番だというところに帰結していくラストにちょっとだけ不満があって。こんな素敵な大人の映画なのに、結局、男は初恋が大事なのかよ!みたいに感じたんです(笑)。あんなふうにイタリア映画って、美しい女性を崇めるようなものが多いですよね。でもそんな不満を「パルテノペ ナポリの宝石」は全部きれいに解消してくれた。
今回の作品は女性が“ヒロイン”ではなく、本当の意味で、人生の“主人公”として描かれていると思いました。女神が人間になっていく過程をじっくり追いかけていく。ソレンティーノ監督がこういった映画を撮ってくれたということに、時代の変化を感じたんです。私はこの映画、ものすごく好きですね。
ダッラ・ポルタ 監督の女性観が変わったかどうかは、本人に聞かないとわからないですが、この作品は監督が初めて女性を主人公にして撮った映画です。
山内 イタリア中の若手女優がパルテノペを演じたいと思ったのではないかと思いますが、セレステさんは自分のどんなところがフィットして選ばれたと思いますか?
ダッラ・ポルタ どんな女優もそうですが、自分の最良のものを出せるようにオーディションに臨みました。監督曰く、私がすごく、パルテノペという役を勉強していると思ったそうです。また私が悲しげな目をしているから、選んだと聞きました。
山内 映画を観ていて、すごくキラキラしているパルテノペの瞳が、大人になるにつれて変化していくのを感じました。難しい脚本だったのではないかと思いますが、監督からストーリーやキャラクターの説明は受けましたか?
ダッラ・ポルタ 脚本を見せてくれた。それだけでしたね。
山内 え!? やりにくくなかったですか?(笑)
ダッラ・ポルタ もちろん難しかったです(笑)。
山内 セレステさんはパルテノペをどんな女性だと解釈していたんですか?
ダッラ・ポルタ パルテノペは自由な女性の象徴。批判されることを恐れず、美人なだけと思われても平気。屈託のない女性だと思います。彼女にしかないしなやかさがあります。
──山内さんはパルテノペをどんな女性だと捉えましたか?
山内 すごく知性があって、自己探究心の強い女性だと感じました。若い女性って、まだどう生きていいかわからないけれど、自分がどう振る舞うべきか、どうすれば人を魅了できるかということだけは充分に知っている。物語前半で描かれる18歳のパルテノペは、そういった段階にいる女性だと思いました。女性にとって若さと美しさは権力。彼女はそれを持て余しているものの使い方だけは知っているから、魅力を振りまいては、いろんな人を夢中にさせている。かといって、その先には何もないかもしれないというところまで、聡明なパルテノペには見えていたことがだんだんわかってきます。
ダッラ・ポルタ お話を聞いていて、山内さんはソレンティーノ監督が描きたいと思ったパルテノペを捉えていると感じます。
山内 この作品では今までにあまり見たことがないタイプの女性主人公が、ちょっと迷子になりながらも、主体的に自分の道を見つけて、成長していく過程が描かれている。ものすごく新しいアプローチをしている映画だと思います。
ダッラ・ポルタ 私も同じように考えているので、とてもうれしいです!