“推し活”を楽しみながら、旅に行こう! JR東海×鈴木愛理「推し旅」コラボ記念インタビュー

新幹線でのエピソードをトーク
主演映画「ただいまって言える場所」の話題も

表に出ている“鈴木愛理”じゃない状態で歌えた

──「推し旅」限定コンテンツでは、新幹線にまつわるエピソードのほか、主演映画「ただいまって言える場所」や主題歌「ただいまの魔法」についてもお話いただいています。今回、映画単独初主演を務めていますが、オファーがあった際はどのように感じましたか?

最近はわりとラブコメにご縁があったんですが、今、31歳で俳優としてもいろいろな作品にチャレンジしたいなと思っていたところだったんです。そんな中で、オファーをいただいたのが「ただいまって言える場所」でした。社会の問題や、人間が抱えている問題に向き合うような作品に挑戦するのは初めてだったので、最初からすごく前向きにお話を聞いていましたね。

映画「ただいまって言える場所」

「ただいまって言える場所」メインビジュアル ©︎2026ほつい

「ただいまって言える場所」メインビジュアル ©︎2026ほつい

親元を離れられない“子供部屋おばさん”の女性と不登校の少女がSNSでつながり、それぞれの居場所を探すヒューマンドラマ。大人だが反抗期中の中学教師・朝井えりこは、趣味のBLマンガをインターネットで出品したことをきっかけに“チー”という少女と知り合う。実はその“チー”は勉強ができて友達もいるが“原因不明の不登校”となっているえりこの生徒・月岡千花だった。互いに気付かぬままSNSで感想を送り合い、いつしか本音を話せる親友になるえりこと千花。一緒に部屋から出ようと親や学校に向き合うが、千花の不登校の真相と、えりこが抱える過去の傷が2人を追い詰め、取り巻く世界が予期せぬ方向に動き始める。

主演の鈴木愛理がえりこを演じ、川口真奈が千花、大塚寧々がえりこの母・百合子、伊藤歩が千花の母・円香役で出演。千花の父・裕人に山中崇、えりこが勤める中学校の教頭に尾美としのり、校長に酒井敏也が扮した。監督を務めたのは「35年目のラブレター」の塚本連平。「ルックバック」のharuka nakamuraが音楽を担当した。

──初めて台本を読んだ際に、号泣したと伺いました。

演じるえりことお母さんの関係が、私と母の関係に重なる部分があって。初めて台本を読んだときには、お母さんに対する、えりこの感情があふれる場面ですごく泣いてしまったんです。しかもそれが、これからライブで歌うぞというタイミングで(笑)。マネージャーさんから「愛理、今じゃないぞ、読むのは」って言われたんですが、長い移動時間だったので、我慢できなくて。

鈴木愛理

鈴木愛理

──えりことお母さんのやり取りはとても心に残りました。お母さんを大塚寧々さんが演じています。

寧々さんには今回初めてお会いしたんですが、私の憧れの人になりました! ご自身の好きなことを大事にされていて、人間としてすごくかっこよくて、チャーミングな方なんです。ご一緒できたのは3日間ぐらいだったんですが、香りの趣味が同じだったので、家にある自分の香水をたくさん持って行って、メイクルームで噴射しながら、これはどうですか? これはどうですか?なんてやったり(笑)。寧々さんに「すっごい、いい香りがしますね」って言ったら、小分けの香水をくださいました。

──短い撮影期間の中で、距離を縮められたんですね。

本当にありがたいです。私が絵を描いて作ったロンTがあるんですが、それを「すごい素敵!」って言ってくださって。現場でお渡ししたら、最後の日に着てきてくださったんです! 寧々さんが着ると私が描いた絵だなんて思えない!(笑) とても素敵な着こなしをしてくださって。こうやってお話ししていると、会いたくなりますね。もう、大好きです!

鈴木愛理

鈴木愛理

──演じていて一番心が動いたのも、やはりお母さんに関するシーンでしたか?

えりこがお母さんの書いた手紙を見つけるシーンですね。初めて台本を読んだときからその場面が一番好きなのは変わらないんです。監督もあのシーンを撮るときは現場の空気感を大事にしてくださって。すごく気持ちを込めて臨むことができました。

──作品を拝見して、それが非常に伝わりました。

自分の経験とも重なって、人ごととは思えなかったんです。私の実家は千葉にあるんですが、学業と℃-ute、Buono!のアイドル活動を両立させるために、13歳のときに母と2人で東京に出てきました。父と弟とはお正月か、2人がライブを観に来てくれたときぐらいしか会えませんでした。だから当時は母と過ごす時間がすごく長かったんです。私がソロになったあと、母が実家に帰って、一人暮らしをするようになったんですが、そのときに、これまでは母の「おかえり」という言葉で、心がほどけていたんだなと感じました。私は、がんばらなきゃ、がんばらなきゃって、張り詰めたままになりやすいタイプなんですが、1人で生活するようになったあと、電話で私の声を聞いた母が、最近“ほどけてないんだな”って気付いてくれて。紙にがんばれという言葉と、家族の似顔絵を描いて置いておいてくれたことがあったんです。それを見たときは、めちゃくちゃ泣きました。母が描いた、ちょっと癖のある父の似顔絵が愛しかったことを覚えています。実際に自分にもそんな経験があるので、自分の母と、えりこのお母さんがリンクしてしまって。

──主題歌「ただいまの魔法」の歌唱と作詞を担当されていますが、お母様への思いが歌詞に込められているんでしょうか?

そうですね。母が手紙を書いてくれたのが2019年ぐらいだったんですが、当時感じた感情をばーっとメモに残していたんです。映画のお話をいただく何年も前から、母に贈る曲を絶対に書きたいと思って、ピアニストの清塚信也さんに、「いつか清塚さんのピアノに乗せて、母に宛てた曲を作りたいんです」ということはお話ししていました。ただ、母に曲を書くって、自分の中でとても大きいことなので、特別なタイミングじゃないと書けないなと。そんな中で、「ただいまって言える場所」の主題歌を歌わせていただけることになって、清塚さんにお願いしたいと思ったんです。

──清塚さんの反応はいかがでしたか?

「僕は愛理ちゃんが全部歌詞を書かないとやらないよ!」って愛の鞭が飛んできました。0から100まで誰の手も借りずに自分で歌詞を書いたのは今回の曲が初めてなんです。これまでにも歌詞を書くことはあったんですが、プロの方に添削してもらったりしていたので、自分にとって、とても大きな挑戦でした。全然書けない日もあって、今は違うかもって思ったり。

過去にたくさんメモした母の言葉や、母から手紙をもらった日に泣きながらメモした言葉を使うことも考えたんですが、今の年齢で伝えたいことと、当時のものでは少し角度が違ったりもしていて。今の自分が勢いで書いた言葉が最終的に歌詞の中に残りました。今の自分にしっくりくる言葉だけで書くというのが決めごとだったんです。もう1つこだわったのは、誰かを特定する言葉を使わないことです。私にとっては母が“ただいまって言える場所”ですが、人によってはそれがお父さんや兄弟、恋人という場合もある。どなたが受け取っても、大切な人が思い浮かぶ曲になればいいなと思って、歌詞を作りました。

鈴木愛理

鈴木愛理

──レコーディングはいかがでしたか?

今回は私と清塚さん、チェロ奏者の遠藤さんと3人で一斉にレコーディングスペースに入って、せーの!で録りました。なんだか不思議な感覚なんですが、ピアノがお父さんでチェロがお母さんみたいに感じて、ピアノの呼吸、チェロの呼吸が包み込んでくれる中でしゃべるように歌えました。表に出ている“鈴木愛理”じゃない状態で歌えたという実感があります。

──お母様は聴かれたんですか?

はい。実は今日、東京に呼んで、やっと母に聴いてもらったんです。なかなか「曲を書いたよ」と伝えられなかったんですが、情報解禁が迫っていて、ニュースで知られたくない!って思って(笑)。伝えるときは「お話があります。結婚します」ぐらいの緊張感がありました。私にとって母は強い人で、いつも笑顔で、あまり涙を見たことがないんです。でも、曲を聴いた母は泣いていて、私も一緒に泣きました。感謝を伝えられて、今、すっきりしています。

──主題歌の創作秘話を知って、さらに映画が楽しみになった方もたくさんいると思います。

重いテーマを扱った作品ですが、とても温かい物語です。観ている方が、そのときに置かれている状況によって、受け取っていただくメッセージが変わってくる映画ではないかと思います。不登校になっている方、過去にそういう経験をした方、子供がいる方、えりこのような教師、また私のようにお母さんに対するありがとうの気持ちが募っている方など、それぞれの立場で響き方が異なる。心の中心に触れるような作品になっていると思います。

鈴木愛理

鈴木愛理

プロフィール

鈴木愛理(スズキアイリ)

2002年、8歳のときに約3万人の中からハロー!プロジェクト・キッズに選ばれる。2003年にハロー!プロジェクト内のユニット「あぁ!」のメンバーとしてCDデビュー。2005年6月に℃-uteを結成し、2007年に℃-uteと並行してBuono!としても活動を開始した。2017年5月に神奈川・横浜アリーナで行われたライブ「Buono! ライブ 2017 ~Pienezza!~」をもってBuono!の活動が終了。その後2017年6月に埼玉・さいたまスーパーアリーナで℃-uteのラストコンサートが開催され、約12年に及ぶグループ活動に幕を閉じた。2018年3月にソロ活動をスタート。アーティスト、モデルのほか、俳優としても活動しており、映画「ゴメンナサイ」「王様ゲーム」や、ドラマ「ANIMALS‐アニマルズ‐」「ある日、下北沢で」「推しが上司になりまして」シリーズに出演。2026年1月23日に公開される「ただいまって言える場所」では、映画単独初主演を務めている。