映画ナタリー Power Push - 「何者」

就活は静かな戦争!? 6人の俳優が語る若者たちの“リアル”

有村架純
有村架純 @田名部瑞月

瑞月はマリア様のような存在

──瑞月は自分の気持ちをあまり表に出さないタイプということもあって、何を考えているのか実はよくわからないキャラクターですよね。有村さんは、瑞月はどのような人物だと思って演じていましたか?

三浦大輔監督から「瑞月はSNSでああだこうだ言ったりしない子。一歩引いたところで、拓人やみんなを寛大な心で見守る人物でいてほしい」と言われたので、マリア様のような存在でいられたらという気持ちでやっていました。佐藤健さんには「実は瑞月が一番怖い」と言われましたが(笑)。彼女は人を妬んだり悪く思ったりするタイプではなくて、他人と比べてどうというよりも、自分と闘うのに一生懸命な子だなと思いましたね。瑞月を演じるのは本当に難しくて、お芝居をしているうちに「これで合っているのかな?」という気持ちになっていきました。

──なるほど。中盤に瑞月が隆良に重要な指摘をしますが、5人の中であのようなことを説得力のある感じで言えるのは彼女だけですよね。瑞月の芯の強さを感じました。

瑞月は自分の納得できないことでも、一度は受け止めようとするところが大人ですよね。彼女のそういう一面を出せたらいいなと思いながら演じていました。

──瑞月と光太郎の距離感も、元恋人同士ならではという感じがして絶妙でした。あの雰囲気を出すために何か意識したことはありましたか?

瑞月は自分の考えていることを次々と言えるタイプではないですし、光太郎に気を使っているんだろうなと感じられる場面もあって。本当はまっすぐに光太郎のもとへ行きたいんだけど、なかなか行けないという気まずい感じを表現したいと考えていましたね。あとは目線の動きとか光太郎の顔を見てしゃべらないとか、細かいところに気を付けました。

就活は静かな戦争みたい

──クランクイン前に主要キャストの皆さんで就活体験をされたそうですが、いかがでしたか。

有村架純

すごく息苦しくてへとへとになりました!(笑) 私たちが普段受けているオーディションも面接みたいなところがあるから、見たことがある光景のように思えたんですが、オーディションは主にその人のパーソナリティを見られて、そこに引っかかるところがあるかどうかというものなんです。でも就職活動は自分が持っている技術や能力を限られた時間の中で言葉を使ってアピールしなきゃいけない。今までの積み重ねをたった数分で表現するっていうのは本当に厳しいなと感じました。就活は静かな戦争みたいでした。

──今回のキャラクターの中で、有村さんから見て「この人は就活に成功しそうだな」という人は?

理香や光太郎、瑞月は受かりそうな気はしますが、拓人はどこかで人を斜めから見ているところがあるからそれが相手に伝わりそうだなと思います。隆良は面白がって採用する会社があるんじゃないかな? 拓人以外はみんな受かりそう(笑)。

みんなで同じ気持ちになれた

──同世代の5人での撮影が多かったと思いますが、印象的なエピソードがありましたら教えていただけますか。

「何者」より。

リハーサルの段階からみんなそれぞれに「三浦組はもしかしたら大変かもしれない……」と感じてたんです。実際に現場に入るとリハーサルとはまったく違うことが行われていくので、最初はそれに付いていくのに必死でした。「いい作品になるんだったらがんばろう」と共演者のみんなと言い合って、三浦大輔監督の言うことを信じて進んでいきました。役の軸は自分なりに考えつつも現場で作り上げていくというスタンスだったので、みんなで同じ気持ちになれたのはよかったなと思っています。あとは年齢もタイプも違うけどせっかく一緒になったし楽しく過ごそうという思いで、撮影の合間にクイズやトランプのゲームで遊んでいましたね。

──そのときは、どなたがリーダー的存在だったのでしょうか?

ゲームが得意なのは佐藤さん! ゲーマーでいろんな遊びを知っているので、みんなで楽しませてもらっていました。現場のムードメーカーは二階堂ふみちゃんかな。ふみちゃんと菅田将暉くんは仲が良いので、彼も自然とそこに加わって盛り上げてくれて。

佐藤さんは頭キレキレ系、ふみちゃんは突き詰めるとすごい系

──映画の完成版をご覧になったときはどのように感じました?

有村架純

台本を読んだ時点ではどういう作品になるのかまったくわからなかったので、こんなにいろんな展開があるんだ!と驚きました。今年の春に撮影したばかりだったこともあって、つい「あのとき引きで撮っていたのがこうやって生かされているんだな」と考えながら観ちゃいましたね。「監督が細かく言っていたシーンはこんなふうになったんだな。あのシーンはカットされちゃったな」とか(笑)。

──つい出演者の視点で観てしまうんですね。それぞれのキャラクターに◯◯系男子、女子とキャッチコピーが付いていますが、有村さんが共演者の方々にコピーを付けるとしたら?

一言で表すのは難しいですね! 佐藤さんは頭キレキレ系男子かな? 頭の回転が速いし、物事を見る視点が人と違うんです。拓人みたいに嫌味なタイプではないけど、冷静で人のことを分析している感じがします。ふみちゃんは知的だし歳下だけどしっかりしている。ファッションや美容などの知識が豊富で“突き詰めるとすごい系女子”(笑)。

──菅田さんや岡田将生さんはどうですか。

菅田さんは気配り系男子ですかね。ちゃんと人を見てくれるところがある心の広い方。岡田さんはほわほわ系男子。トゲトゲしていなくて丸っとした柔らかい印象で、どんなことにも臨機応変に対応してくれるんです。岡田さんは現場では歳下のみんなにいじられる愛されキャラでした。

──共演シーンは少しだけでしたが、山田孝之さんはいかがでしょう?

どっしりとした印象です。出演作をたくさん拝見しましたが、私はまだまだ山田さんについて知らないことがいっぱいあるので今はミステリアス系男子ですね。

「何者」2016年10月15日より公開

「何者」2016年10月15日より公開

かつて演劇サークルに所属し、脚本の執筆や芝居に熱中していた大学生・拓人。今ではリクルートスーツに身を包み、ルームメイトの光太郎とともに就職活動に本腰を入れようとしている。拓人は光太郎の恋人だった瑞月に思いを寄せているが、彼女はいまだ光太郎に未練があるようだ。ある日、自分たちが暮らす部屋の上階に瑞月の友人・理香が住んでいることを知った拓人と光太郎。彼らは理香の提案で、就活の情報交換のため彼女の部屋に集まるようになる。理香の就活のやり方や、彼女と同棲中の恋人・隆良の就活生を見下すような態度に違和感を覚えつつ、拓人はままならない現実に次第に焦りを感じるように。そんな日々の中で、ついに仲間内から1人目の内定者が現れて……。

スタッフ

監督・脚本:三浦大輔
原作:朝井リョウ「何者」(新潮文庫刊)
音楽:中田ヤスタカ
主題歌:中田ヤスタカ「NANIMONO(feat.米津玄師)」

キャスト

二宮拓人:佐藤健
田名部瑞月:有村架純
小早川理香:二階堂ふみ
神谷光太郎:菅田将暉
宮本隆良:岡田将生
サワ先輩:山田孝之

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有村架純(アリムラカスミ)

1993年2月13日生まれ、兵庫県出身。「阪急電車 片道15分の奇跡」で映画初出演を果たし、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主人公の母親の少女時代を演じブレイクする。その後「ストロボ・エッジ」「映画 ビリギャル」などに出演。2016年には「アイアムアヒーロー」「僕だけがいない街」「夏美のホタル」が公開された。2017年にも「関ヶ原」「ナラタージュ」「3月のライオン」などの出演作を控えている。