映画ナタリー Power Push - 「劇場版 MOZU」西島秀俊×ビートたけし

1分の出会いが生んだ14年後の激突

ビートたけしさんとの共演は俳優人生の中でももっとも大きな財産

──西島さんは、「Dolls(ドールズ)」で北野監督の映画に出演されたことがありますが、たけしさんと今度は共演されたことについてどう感じているんでしょうか?

西島秀俊

西島 そんなにお会いできる方ではないので、こうしてお会いしているだけで僕にとっては学ぶことがたくさんあります。今回初めて俳優として共演できたというのは、本当に財産ですよね。俳優人生の中でももっとも大きな財産だと思っています。正直もう怖いものはないかも(笑)。とにかくうれしかったですね。僕にとっては自分を見いだしてくださった方ですから。お会いしたのが2001年ぐらいですから、14年経って、今度は俳優として共演できたのは夢のようなことですね。

──たけしさんはどうでしたか? 以前とは立場が違う、俳優同士として共演をしてみて。

たけし 「役者としての俺は下手だよ」って普段から言っているんだよ。ひどいときには「俺はカンペがなきゃやんないよ」とか言っているし(笑)。西島くんには「Dolls」でお世話になって感謝しているんだよ。ああいうストーリーがあるんだかないんだかわかんないような映画の中で見事に演技していただいたっていうのがあって。ずっと西島くんのことを気にはしていたんだけど、じゃんじゃん役者として上がっていって、ここ何年かの間にトップクラスになって、本当によかったなと思ってる。だから、西島くんと役者として対峙するっていうときにはね、「こいつこんなに下手だったんだ」って思われたらつらいなというのはあったね。まあダルマなんて役でよかったよ(笑)。

会って0.1秒でわかることもある

──「Dolls」のとき、会って1分で主演を西島さんに決めたそうですが、何か直感が働いたんでしょうか?

ビートたけし

たけし 俺は寄席芸人出身だけど、だいたい出ていった瞬間にウケるかどうかわかるんだよ。寄席を何年もやっているとそういう感覚が身に付く。飲み屋に行っても、隣の客がいいジジイか悪いジジイかすぐわかるもんね。「あ、こいつとは口きかないでおこう」って。まあ1年付き合ってもわからないことはあるし、会って0.1秒でわかることもある。西島くんとはテレビ局の楽屋で会ったのかな。「ああどうも。OK!」って(笑)。

西島 本当に選んでいただけたのが今でも不思議です。そういえば、あれは本当なんですか? オーディションに遅刻してきた大杉漣さんをちらっと見ただけで北野監督が起用を決めたという話を聞いたことがあって。僕は絶対ウソだと思っているんですけど。

たけし 大杉漣さんはね、なかなか芽が出なくて「ソナチネ」のオーディションに落ちたら役者を辞めようと思っていたんだって。サラリーマンになろうって。遅刻してきて「どうもすいません」って言っているのを見て、俺は「あの人電話番役にしといて」って(笑)。ヤクザの事務所の電話番役をやらせてみたらうまいわけ。で、「あれ沖縄に連れてこう」って(笑)。どんどん大きい役になってったんだよ。

西島 じゃあ噂は本当だったんですか!?

たけし うん。漣さんのことはそれまで全然知らなかった。やっぱり感覚だよね。うまいと言われている人でもオーディションで見てダメだなって思うこともあるし。生理的なものもあるかもしれない。

──西島さんの現在の成功も当時から予見されていたんでしょうか?

たけし 当時、俺も映画監督としてまあまあ認めてもらえるようになって、その映画に主演として出てもらうわけだから、それは何かのきっかけになるだろうとは思ったけど、そのあと知名度と演技力を上げていくのは本人の力。気になるからその後も注意して見ていたけど、どんどん存在感が出てきた。もともとうまいしね。トップの役者さんになるんじゃないかって当時から思っていたよ。自分にとってはなんの驚きもないね。

──西島さんは伊勢谷友介さんの監督作「セイジ -陸の魚-」に出演されたことがありますが、今回、伊勢谷さんがいて、北野監督がいて、羽住監督がいて。映画監督に囲まれていたわけですが、監督業に興味が湧いたりしませんでしたか?

西島 僕がですか!? いやあ、どうでしょう。マネージャー次第ですかね(笑)。

ダルマの側近・高柳と対峙する倉木。

たけし やってみても面白いんじゃねえかなと思うよ。でも、西島くんは本当に芝居が好きなんだなあって思うんだよね。演じることを楽しんでいる。役者のほうが面白いと思っているんじゃない? 監督も面白いんだけどね。でも、西島くんはずっと演じ続けるのが合っているかもしれないと思うね。苦労もあると思うけど、それすら楽しんでるもん。

「劇場版 MOZU」2015年11月7日より全国東宝系にてロードショー

「劇場版 MOZU」

都心で起きた「爆弾事件」や「百舌事件」、そして妻子の死の真相を追う中で、警察内部に巣食う深い闇を知った公安捜査官・倉木尚武。そんな折、高層ビルの占拠爆破、ペナム大使館襲撃という大規模テロが同時発生する。これらは犯罪プランナー・高柳隆市と、実行部隊を率いる殺し屋・権藤剛を中心とするグループによる犯行だった。高柳たちが謎の存在“ダルマ”のもとである犯罪計画を進めていることを知った倉木は、灼熱の地・ペナム共和国へ飛ぶが……。

スタッフ

監督:羽住英一郎
原作:逢坂剛「百舌」シリーズ(「百舌の叫ぶ夜」ほか)(集英社文庫)
脚本:仁志光佑
音楽:菅野祐悟

キャスト

倉木尚武:西島秀俊
大杉良太:香川照之
明星美希:真木よう子
新谷和彦:池松壮亮
鳴宮啓介:伊藤淳史
大杉めぐみ:杉咲花
村西悟:阿部力
高柳隆市:伊勢谷友介
権藤剛:松坂桃李
東和夫:長谷川博己
津城俊輔:小日向文世
ダルマ:ビートたけし

西島秀俊(ニシジマヒデトシ)

1971年3月29日、東京都生まれ。1994年に「居酒屋ゆうれい」で映画初出演。1999年には黒沢清の「ニンゲン合格」で役所広司らと共演し、第9回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞する。その後も北野武の「Dolls(ドールズ)」、萩生田宏治の「帰郷」、伊勢谷友介の監督第2作「セイジ–陸の魚-」などに出演。イラン出身のアミール・ナデリがメガホンを取った「CUT」では売れない映画監督を演じ、国際的にも知名度を上げる。2012年、「MOZU」シリーズと同じスタッフによるドラマ「ダブルフェイス」に出演した。2016年には黒沢清の新作「クリーピー」、ビートたけしとの共演作「女が眠る時」の公開を控える。

ビートたけし

1947年1月18日、東京都生まれ。ビートきよしとともに漫才コンビ・ツービートを結成し、1980年代初頭の漫才ブームを牽引する。その後もタレントとして数多くのレギュラー番組を持つ一方、大島渚の「戦場のメリークリスマス」、降旗康男の「夜叉」などに出演。1989年には本名の北野武名義のもと「その男、凶暴につき」で映画監督デビューを果たし、長編監督作7本目の「HANA-BI」では第54回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した。その後も、西島秀俊と菅野美穂を主演に迎えた「Dolls(ドールズ)」、第60回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した「座頭市」と精力的に作品を発表し、俳優としても「バトル・ロワイアル」「血と骨」などに出演。2016年には西島との共演作「女が眠る時」が公開される。

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