映画ナタリー Power Push - 「劇場版 MOZU」西島秀俊×ビートたけし
1分の出会いが生んだ14年後の激突
西島秀俊主演、「海猿」シリーズの羽住英一郎監督の「劇場版 MOZU」が11月7日に全国公開となる。「劇場版 MOZU」は、TBSとWOWOWの共同制作によるドラマシリーズ「MOZU」の劇場版。警視庁公安部の捜査官・倉木が、家族を失った事件の裏にある巨大な陰謀に立ち向かう物語で、ドラマでは謎に包まれた存在だった“ダルマ”がついに姿を現す。
映画ナタリーは、西島秀俊とダルマ役を演じたビートたけしの対談を実施し、「劇場版 MOZU」の舞台裏エピソードや「Dolls(ドールズ)」での出会いについて語ってもらった。
取材・文 / 岡大、平野彰 インタビュー撮影 / 笹森健一
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ダルマを演じられるのはビートたけしさんしかいない
──たけしさんはオファーを受ける前に「MOZU」のテレビシリーズをご覧になったことはあったんでしょうか?
たけし いや、ないんですよ。
西島 (笑)
たけし TBSでやってたって聞いて、「ほんと?」って言ったんだけど。
西島 やっていたんですよ(笑)。
たけし 俺TBSでも仕事やっているんだけど……。難解だよね。とにかく複雑で、今の若い人が喜びそうな構成になっている。読み解く楽しみがある。人間関係、ドラマみたいなのがストレートに出てこなくてエピソードとして断片的に描かれているから、「あーこれは大変な作品だな」って思った。
──ダルマは戦後の日本を裏で操ってきたというキャラクターですが、西島さんは最初から羽住英一郎監督と「ダルマ役はビートたけしさんしかいない」とお話されていたそうですね。
西島 この「MOZU」はいろんな男たちがそれぞれの信念を持って血みどろの殺し合いをする作品ですけど、ダルマはその頂点に立つ、この混沌とした世界の象徴みたいな存在です。しかも日本中の人の夢にまで出てくる謎の男を演じる説得力が必要で、それを役で作って演じるというのではなくて、その人が現れただけで「この人は全然別次元の存在だ」とわかる人……と考えたらビートたけしさんしかいないんじゃないかなと思いました。でも、それはドラマを撮っているときに北九州の焼肉屋で監督と飲んでいる中で出てきたような話で(笑)。もしこの役を誰かがやるとしたらって妄想していただけなんです。まさか出ていただけるとは思っていなかったので、今回実現して一番驚いているのは僕と監督です。
ダルマと倉木は天と地に位置するキャラクター
──たけしさんは「劇場版 MOZU」のどこに惹かれて引き受けられたんでしょうか?
たけし 出番は当然少ないんだけど、それでもオファーがあったのはありがたいことだなと思って。ありがたいけど、「俺で大丈夫なの?」って思ったよ。今西島くんがダルマはこういう男だって説明してくれたけど、「北島三郎はどうかな」ってふと思った(笑)。ダルマっていうと、達磨大師とか弘法大師とか禅宗の坊主の親しみやすいイメージもあって、でも今回は闇の存在のアダ名だということで、面白いなと。自分がその役をやるというのは、はたしてどうかなとは思ったけど、まあありがたいことなんで。顔を直せ、いい男にしてくれって頼んだんだけど、それじゃあ普通の人になっちゃうからダメだって言われたよ(笑)。
──西島さん演じる倉木が公安の凄腕だとしても、相対するダルマは強大すぎる敵のように見えます。
西島 僕が演じている倉木からすると、雲の上の存在。そもそも出会うはずもない相手です。ダルマという人物は本当に実在しているのかもわからないし、実在したとして、その人が何を考えて何を自分のルールにして生きているのかもまったくわからない。伊勢谷(友介)くん演じる高柳という右腕がダルマから与えられた任務を遂行していますが、ダルマ本人が何を考えているのかはベールに包まれたところがある。一方で倉木は登場人物の中でも一番下の存在。失った家族のためだけに戦っていて、その戦いが終わったらたぶんこの人は死ぬ……いやもう死んでいるんですよね。ドラマの第1話で家族が死んだときにこの人はもう心が死んでいて、ただ機械のように戦っているんだと思います。だから、ダルマと倉木は天と地に位置するキャラクターというイメージですね。
──倉木は主人公ですが、ヒーローらしいヒーローではない印象です。「MOZU」シリーズ自体も勧善懲悪なストーリーではないですし。たけしさんはダルマという役を悪役だという意識で演じられたんでしょうか?
たけし 本人は悪とは思ってないんじゃないかね。当然というか。国の体制を維持するための組織があって、その中心的な人物に祭り上げられているという。国を維持するための必要悪、そういう考えを持つ人たちにとっての象徴的存在だと思っているんだけどね。
次のページ » 羽住さんとたけしさんの間で板挟みになってドキドキした
「劇場版 MOZU」2015年11月7日より全国東宝系にてロードショー
都心で起きた「爆弾事件」や「百舌事件」、そして妻子の死の真相を追う中で、警察内部に巣食う深い闇を知った公安捜査官・倉木尚武。そんな折、高層ビルの占拠爆破、ペナム大使館襲撃という大規模テロが同時発生する。これらは犯罪プランナー・高柳隆市と、実行部隊を率いる殺し屋・権藤剛を中心とするグループによる犯行だった。高柳たちが謎の存在“ダルマ”のもとである犯罪計画を進めていることを知った倉木は、灼熱の地・ペナム共和国へ飛ぶが……。
スタッフ
監督:羽住英一郎
原作:逢坂剛「百舌」シリーズ(「百舌の叫ぶ夜」ほか)(集英社文庫)
脚本:仁志光佑
音楽:菅野祐悟
キャスト
倉木尚武:西島秀俊
大杉良太:香川照之
明星美希:真木よう子
新谷和彦:池松壮亮
鳴宮啓介:伊藤淳史
大杉めぐみ:杉咲花
村西悟:阿部力
高柳隆市:伊勢谷友介
権藤剛:松坂桃李
東和夫:長谷川博己
津城俊輔:小日向文世
ダルマ:ビートたけし
© 2015劇場版「MOZU」製作委員会 © 逢坂剛/集英社
西島秀俊(ニシジマヒデトシ)
1971年3月29日、東京都生まれ。1994年に「居酒屋ゆうれい」で映画初出演。1999年には黒沢清の「ニンゲン合格」で役所広司らと共演し、第9回日本映画プロフェッショナル大賞主演男優賞を受賞する。その後も北野武の「Dolls(ドールズ)」、萩生田宏治の「帰郷」、伊勢谷友介の監督第2作「セイジ–陸の魚-」などに出演。イラン出身のアミール・ナデリがメガホンを取った「CUT」では売れない映画監督を演じ、国際的にも知名度を上げる。2012年、「MOZU」シリーズと同じスタッフによるドラマ「ダブルフェイス」に出演した。2016年には黒沢清の新作「クリーピー」、ビートたけしとの共演作「女が眠る時」の公開を控える。
ビートたけし
1947年1月18日、東京都生まれ。ビートきよしとともに漫才コンビ・ツービートを結成し、1980年代初頭の漫才ブームを牽引する。その後もタレントとして数多くのレギュラー番組を持つ一方、大島渚の「戦場のメリークリスマス」、降旗康男の「夜叉」などに出演。1989年には本名の北野武名義のもと「その男、凶暴につき」で映画監督デビューを果たし、長編監督作7本目の「HANA-BI」では第54回ヴェネツィア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した。その後も、西島秀俊と菅野美穂を主演に迎えた「Dolls(ドールズ)」、第60回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した「座頭市」と精力的に作品を発表し、俳優としても「バトル・ロワイアル」「血と骨」などに出演。2016年には西島との共演作「女が眠る時」が公開される。
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(配信終了日:2015/12/31まで)
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