「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」濱田龍臣×坂本浩一インタビュー|自慢の息子に成長!ウルトラマンの絆でつながる“親子”対談

ウルトラマンとして認められた、その後の成長を描きたかった(坂本)

──テレビシリーズでベリアルとの戦いを終えて、劇場版はテレビシリーズと関係ない巨大人工頭脳ギルバリスという敵が登場する物語ですが、ゼロは地球を去り、リクが「戦えるのは僕しかいないんだ」と気負ってしまうところから始まりますね。

「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」

坂本 基本的に「ジード」はリクの成長物語にしたいというのは一貫したテーマであって。ただリクがウルトラマンになる、ヒーローになるということが一応のゴールであったけど、そこがすべてではない。例えば「ウルトラマン」を観ている子供たちも、学校の受験に合格することが目標かもしれないけど、合格したあとにも目標や問題はいろいろ出てきます。あるいはスポーツ選手にしても、オリンピックで金メダルを獲ることが1つのゴールではあるけど、金メダルを獲ったあとに直面する問題って絶対あると思うんです。

──リクもそれと同じく、ヒーローとして認められたらそれがゴールじゃないんだぞと。

坂本 そうですね。リクがまだ若いということもあって、ウルトラマンとして認められたあとの問題に直面したときに、彼がどうやって乗り越えていくのかを今回の映画のテーマにしたかったんです。そこでさらなる成長を描けたらなと。

「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」

──そういった映画のストーリーに、坂本監督はどれぐらい関わっているんでしょうか。

坂本 今回の作品はわりと早い、アイデア出しの段階から参加させていただいて。オーブがゲスト出演することは先に決まっていたんですが、そうなるとオーブがちゃんと本編に絡んで、オーブがいなければ解決しない話にしたいと思ったんです。

──戦闘になると急にオーブが助けに来る、という形の出演じゃないようにということですね。

坂本 はい。そうなると「オーブ」と「ジード」の世界観をつなぐものは何か?と考えたとき、ギャラクトロンという敵は「ジード」にも出てきたし、「オーブ」でも強敵として描かれていたのに、どこから来たのかが描かれていなかったんです。そこの部分を拾って、ギャラクトロンを作った創造主がジードの世界に攻めてきて、それにジードがどう立ち向かうか、オーブがどう加勢するか、その話を描けば2つの世界観が一体となった作品になるんじゃないか。そういうアイデアは僕から出させてもらいました。

リクがガイさんと話しているときの心情は……(濱田)

──なるほど。坂本監督は「オーブ」本編は撮られていませんが、「ジード」に「オーブ」のキャラクターが出演する際、世界観の違いなどで難しさはありましたか。

「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」より、左からジャグラス ジャグラー(青柳尊哉)、朝倉リク(濱田龍臣)、クレナイ ガイ(石黒英雄)。

坂本 「オーブ」の2人、ガイとジャグラーに関しては、僕から石黒(英雄)くんと青柳(尊哉)くんに「このシチュエーション、2人ならどうする?」とか「2人の距離感はどれぐらい?」とかガンガン質問しました。やっぱり2人が築いてきたキャラクターがあるので、あえて僕のほうがかき混ぜるよりそっちのほうがいいかなと。もちろんキャストの方々もそれぞれ自分のキャラクターを作ってくるし、意見もあるから、お互いにアイデア交換、意見交換をしながら進めていくのが僕は好きなんです。

──濱田さんも、坂本監督に「ここはこうしたい」みたいな意見を言われたことはあるんですか?

濱田 僕は本編のときからいろいろ言わせていただいてました。25話のジードマルチレイヤーが発動する場面とか。

──5タイプのジードが勢ぞろいするシーンですね。

濱田 あそこは最初、プリミティブだけセリフがある予定だったんですけど、僕からの希望で5体全部に声を当てさせてもらいました。

坂本 「全部やります!」って言われたね。映画の話に戻すと、リクとガイが会話するところでも、2人はどれぐらいの距離感で話すとか、どのセリフのときに相手のことを見る、見ないとか、そういった関係性をキャストと話しながら決めていきました。

──劇場版で初めて絡むガイとリクの関係性は、映画の見どころの1つだと思います。違う作品のキャラが絡むと、「リクくんはガイさんに対してどう話すんだろう、恐縮しちゃうのかな」とか事前に想像できて楽しいです。

濱田龍臣

濱田 リクはそういう部分があってもいいのかなと思いつつ、縮こまっちゃう感じではなく。ガイさんがオーブとして戦ってきたことを多少なりとも知っているので、リスペクトのほうが強いと思います。今回の映画では荒れてしまったリクに対して、ガイさんがいろいろアドバイスをくれますけど、リクは「優しさで言ってくれてることなんだ」と理解しながらも、自分が気負いすぎてそれに目を向けられない部分がある。そんなすれ違い感が出ていると思います。

──そういう心情での演技なんですね。あと個人的には、ほかのウルトラマンを「さん」付けで呼ぶガイさんが、後輩のジードをどう呼ぶのかが気になってたんですけど、映画ではそこがちゃんとネタになっててうれしかったです(笑)。

坂本 ありがとうございます(笑)。テレビシリーズの「オーブ」はファンとして観ていましたから。だからやっぱり、ファンとして気になったところは挟ませてもらおうかと。「さん」付けで呼ぶか呼ばないか、あとガイが好きなラムネとお風呂のネタは入れたかったところです。

濱田 細かくちりばめてましたもんね。

──坂本監督は過去作をリスペクトしたファン目線の小ネタがお好きなイメージがあります。

坂本 僕が昔から好きな(ジョージ・)ルーカスとか(スティーヴン・)スピルバーグも、自分の作品にそういう小ネタを挟んだりするので。そういうところからかもしれないです。

ジャンボットと話すシーンは、僕の中に裏設定があるんです(濱田)

──小ネタと言えば、映画のラストではジャンボットがリクに「『ジャンファイト』と言ってみてくれないか」と言いますよね。2010年公開の「ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国」で、濱田さんがナオとして出演したのを観ていた人には最高のファンサービスでした。

左から濱田龍臣、坂本浩一。

坂本 それはもう、龍臣くんで「ジード」をやるって決まった時点から、どっかでやろうと狙ってましたから(笑)。

濱田 僕もやれたらいいなと思ってました。

──ジャンボットが登場する映画に濱田さんが出演して、しかも監督が坂本さんなら、やらないと不自然なぐらいですよね(笑)。

濱田 あそこは「あー、ひさしぶりだよなー」みたいなことを思いつつ、僕の中に勝手な裏設定があったんです。テレビシリーズ第7話「サクリファイス」で、「コズモクロニクル」っていう小説が出てきたじゃないですか。

──伏井出ケイが書いたSFとして出版されていますが、実はベリアルやゼロのことが書かれているというものですね。

濱田 あそこに書かれているのは「ベリアル銀河帝国」あたりの話なんです。だからリクは、そのあたりの話はゼロから聞いていて、ウルティメイトフォースゼロのことや、ナオやラン、エメラナ姫のことも知っているんじゃないかなと。なのでジャンボットたちのことも「初めまして」ではあるけど、一応名前は知っている……という解釈で僕は挑んでます。

坂本 ジャンボットとリクの会話のあと、ゼロ役の宮野(真守)くんが「そう言われてみれば……」みたいなことをアドリブで言って、さすがだと思いました。

濱田 あー、面白かったですね。

──あれはアドリブだったんですね。それでは最後に、このたび「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」のBlu-ray / DVDが発売されるということで、改めてセールスポイントを教えていただけますか。

坂本 Blu-ray / DVDなら、何度でも観られますよね。となると、僕たちがこだわった部分を観てほしいです。何度も観るうちに、劇場ではわからなかった細かい部分に気付くこともあるでしょうし。いろんな場所で逃げている人たちが、実はみんな同じだったとか(笑)。

濱田 街の看板とか、街頭モニターも面白いですもんね。劇場で一度ストーリーをがっちりつかんでから、スクリーンではわからない細かいところを何度も繰り返し観てもらいたいと思います。出演者も豪華なので、よろしくお願いします。

──なるほど、今日は面白いお話をありがとうございました。

坂本 龍臣くん、しっかりしてるでしょう?(自慢げに)

濱田 (笑)

ドンシャインポーズを決める濱田龍臣(左)と坂本浩一(右)。
「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」濱田龍臣×石黒英雄×青柳尊哉インタビュー
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ストーリー

知的生命体が住む星々を破壊していく巨大人工頭脳ギルバリスが、ギャラクトロン軍団を率いて地球に接近。彼らが狙う“赤き鋼”についてジャグラス ジャグラーから話を聞いた朝倉リクは、その手がかりを求めて仲間とともに沖縄へ向かった。沖縄でガイドとして働くアイルは、リクがウルトラマンであることを見抜き、重大な使命を託そうとする。一方、ギャラクトロン軍団は沖縄に襲来。ウルトラマンオーブやウルトラマンゼロらも駆け付けるが、自分の使命にこだわり焦るジードの行動がさらなる危機を招く──。

スタッフ / キャスト

監督:坂本浩一

主題歌:May J.「絆∞Infinity」

出演:濱田龍臣、石黒英雄、小澤雄太、本仮屋ユイカ、青柳尊哉、山本千尋、長谷川眞優

声の出演:小西克幸、潘めぐみ、三森すずこ、宮野真守、神谷浩史、緑川光、関智一、入野自由

「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ! 願い!!」濱田龍臣×石黒英雄×青柳尊哉インタビュー
濱田龍臣(ハマダタツオミ)
2000年8月27日生まれ、千葉県出身。子役として、2010年放送のNHK大河ドラマ「龍馬伝」やテレビドラマ「怪物くん」に出演して注目を集める。その後も「ガッチャマン」「疾風ロンド」といった作品に参加。特撮ドラマ「ウルトラマンジード」に続き、監督の坂本浩一とタッグを組んだ主演ドラマ「モブサイコ100」はテレビ東京で放送中のほか、Netflixでも配信されている。4月放送スタートのテレビドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」ではメインキャストの1人である平海斗を演じる。
坂本浩一(サカモトコウイチ)
1970年9月29日生まれ、東京都出身。倉田アクションクラブを経て、1989年に渡米。「サイボーグ2」「リーサル・ウェポン4」などにスタントマンやアクション俳優として参加する。1995年にアメリカの特撮ドラマ「パワーレンジャー」のアクション監督に抜擢され、その後監督やプロデューサー、製作総指揮を歴任。特撮ドラマの監督作には「海賊戦隊ゴーカイジャー」「仮面ライダーW」、監督した劇場公開作には「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴースト with レジェンドライダー」「破裏拳ポリマー」、OVA「スペース・スクワッド」シリーズなどがある。