最終カットの変身シーンはみんなに褒められました（濱田）

──成長という意味で言うと、またディレクターズカット版上映イベントのときの話になってしまうんですが、あのときに濱田さんが1話から4話の映像を観てすごく恥ずかしがってましたよね。

濱田　そうなんです。例えば変身シーン1つ取っても、今と完全に変わってるなって。一目瞭然ですよ。声もそうですし、表情やポーズの取り方、立ち姿もですね。変身バンクと言ってカットを使い回している部分もあるんです。だから（中盤以降から登場した）マグニフィセントやロイヤルメガマスターの変身バンクに、（序盤に撮影した）プリミティブやソリッドバーニング、アクロスマッシャーの変身カットが挟まれてたりするんです。よーく見ると「ここだけ顔違うわー」みたいな。あれはすごく恥ずかしいですね（笑）。

──成長している証とも言えますが、本人はやはり成長前を使われるのが恥ずかしいんですね。

坂本　最初のほうの変身も、すごく緊張しながら何テイクもやって、その中でベストなテイクを選んで使ってはいますけど。

濱田　最初のほうの変身を見ると、力みすぎてなんか駄目なんです。

坂本　全部に力が入っちゃってるからね。

濱田　ちょっとリラックスして、決めるとこだけグッ！と決められると、やっぱりきれいに見えるんだなと。

坂本　後半ではそのさじ加減がだいぶうまくなって、マスターしてましたから。立ち姿から表情まですべてヒーロー然としていますよ。

濱田　撮影がオールアップした最終カットが、劇場版のロイヤルメガマスターの変身シーンだったんです。ライハもモア（長谷川眞優）もレイトさん（小澤雄太）もゼナさん（岩田栄慶 ）もケイ先生（渡辺邦斗）もみんな見に来て、「すごいカッコよかった」って褒めてくれました。

──「ウルトラマン」のような長編ドラマだと、長い時間をかけた演者さんの成長が見られるのも楽しみ方の1つですよね。

坂本　本当にそうだと思います。

「ジード」は自分の人生の中で一番成長できた作品（濱田）

──「ウルトラマンジード」を経て、坂本監督と濱田さんはテレビドラマ「モブサイコ100」でタッグを組みました（参照：「モブサイコ100」ドラマ化！濱田龍臣×坂本浩一のウルトラマンジードコンビで）。これは坂本監督からの指名でしょうか。

坂本　そうです。何人か名前が挙がっている中で、「龍臣くんだったら僕は完全に任せられますよ」っていうお話をさせていただきました。モブのキャラクターにもうちょっとかわいらしさが欲しいと思っていましたし。

──どこを一番評価しての再タッグなんでしょうか。

坂本　演技力ももちろんだし、あとはやっぱり彼のパーソナリティでしょうか。一緒にいて楽しかったり、もっと一緒に仕事したくなるって思わせてくれるところがいいなと思って。

濱田　うれしいですねー。

──坂本監督が何回も起用する俳優は、派手なアクションが得意な人が多いイメージなので、再タッグは少し意外でした。

坂本　リクくんもモブも、別にアクションも数多くなかったけど、ちゃんとこなしてますよ。

濱田　やられ専門で、受け身ばっかりうまくなりましたけど（笑）。

──設定上強くないキャラというだけで、濱田さん自身はアクションが苦手なわけではないということですよね。

坂本　そうそうそう。それが両作品共通していましたから。だいたい歳上のお姉さんに蹴られる役（笑）。

濱田　尻に敷かれる役です（笑）。

──「モブサイコ100」でトメ役の山谷花純さんは「手裏剣戦隊ニンニンジャー」の百地霞 / モモニンジャー役でおなじみですが、「ジード」のライハ役の山本千尋さんも、「ニンニンジャー」にキキョウという忍者役で2話だけ出てましたよね。だから濱田さんは、やたらくのいちに尻に敷かれることが多い人だな……と思って観てました（笑）。

濱田　そう言えばそうだ（笑）。

──「モブサイコ」のモブと「ジード」のリクは、おとなしいように見えて芯が強いという共通点があるかと思うんですけど、リクを演じた経験はモブに生きてますか？

濱田　それは確実にあると思います。「ジード」は僕の今までの演技人生の中で一番長く演じさせてもらった作品で、一番成長できた作品だったし。たぶんこれがなかったらモブの役はまったく……。

坂本　100％できなかったよね。

濱田　はい。100％できてないし、まったく違うテイストになったと思います。というか、モブ役に選ばれてないかも。

坂本　「ウルトラマン」のような長いシリーズをやると、それだけのシチュエーションでいろいろとお芝居する経験が得られますから。しかも普通のお芝居だけじゃなくて、戦ったり相手に対する感情をぶつけたり、通常ではないシチュエーションでのお芝居も出てくるから、その経験で幅が広がったんだと思う。

濱田　この「ジード」という作品は自分が役者として何段もステップアップできる作品だったので、今この時期にやれてすごくよかったです。

坂本　16歳、17歳のときだもんね。一番多感な時期じゃないですか。

映画に出てきた伝説は、沖縄に実際にあるんです（坂本）

──「ウルトラマンジード」の話に戻りますが、「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」から続くウルトラマンベリアルにまつわる壮大なサーガが完結しました。坂本監督としては「ジード」開始当初から、例えばベリアルを倒してしまうのかどうかなど、いろいろ考えられていたと思うんですけど、そこで考えていた着地点には到達できましたか？

坂本　今回の作品は、僕の中の「ベリアルサーガ」の一応の最終章という形で、きれいに締めくくりたいという気持ちはありました。そしてシリーズ構成の打ち合わせを、脚本の乙一さんと鶴田（幸伸）プロデューサーと一緒にやって、撮影に入る前になんとなくのゴール地点は見えていたんです。もともとベリアルはウルトラマンゼロと因縁があったんですけど、世代を変えてゼロではなくてジードで決着を付けるというゴールですね。しかもジードだからこその決着方法が描けたので、テレビシリーズで「ベリアルサーガ」をきれいに終わらせられたかなという意味では、手応えはありました。

──そしてベリアルを倒したあとの「劇場版 ウルトラマンジード つなぐぜ！ 願い!!」に続くわけですが、まずこの作品の舞台として沖縄が選ばれた理由は？

坂本　「ウルトラマン」の脚本をやられていた金城（哲夫）さんが沖縄出身というつながりもあると思うんですけど、今回は特にそれと関係ないんです。単純にまず1つ目が、劇場版ならではのスケールアップ感を出すには、常日頃撮っているロケーションじゃなくてどこか違うところがいいんじゃないかってことですよね。

──ちょっとズレるかもしれませんが、昭和の頃の特撮って、劇場版で観光地ロケをやりがちでしたよね。フェリーの上で戦うシーンがあったりして。

坂本　その頃の映画は、観光地とのタイアップがあったからですよね（笑）。朝のシーンで、ホテルの入り口で「んーっ！」って背伸びする画が不自然に挟まれたりする。

濱田　あはは。浴衣を着ていたり（笑）。

坂本　そうそうそう。タイアップあるある。今回はそうではなくて（笑）、沖縄の自然を生かした画が撮りたかった。あと沖縄は、いろんな伝説があるんです。映画にも出てきた「神様が宇宙から降りてきた」という話だとか。

──あれは実際に沖縄にある言い伝えなんですね。

坂本　「赤き鋼」の伝説も、もともと沖縄の民話で「謎の物体で作られたなんでも斬り付ける刀」とか、そういう話があるんですよ。沖縄ロケの話が出た時点で、脚本家の根元（歳三）さんと事前にいろいろ調べて、今回はそういう伝説をストーリーに織り込めたらいいなと。そんな神秘的な魅力もあって、映画の舞台を沖縄にしました。