映画ナタリー Power Push - ヒャダインが語る「ドクター・ストレンジ」

常識はすべて捨てろ!ドクター・ストレンジの修行から学ぶ哲学

常識はすべて捨てろ!

──ストーリーや内容はいかがでしたか。

僕がここ最近、日頃から思っていたこととすごく合致していたんです。ストレンジが魔術の師匠エンシェント・ワンに弟子入りするとき、「Forget everything that you think you know」と言われますよね。

「ドクター・ストレンジ」

「ドクター・ストレンジ」

──字幕では「常識はすべて捨てろ」、ですね。

「お前が知っていると思っていることを忘れろ」って、本当にその通りだと思うんです。最近、会いたいなと思っていた人に偶然ばったり会うことが多くて。まあ偶然なんですけど、何かしらの必然があるのかなって考えたりもするんですよね。そういう超常的なものをすべて受け入れるのが、この「ドクター・ストレンジ」の世界観なのかなって感じました。哲学的な内容やタイムリープみたいなシーンもあるから、「あれ、こことここは本当につながるのか?」ってあれこれ考えてしまいそうになるんですけど……どうせつながるようにできてますから!(笑) この映画に関しては、野暮ったいことを考えずに、映像を“感じる”ことが重要だな、と。ストレンジが修行していたときの「すべてを受け入れろ」っていう教えそのままを、観ている人に課してるのかなって。

──そういうテーマを考えると、大人も十分楽しめるヒーロー作品と言えますね。

そうですね。哲学的なテーマも含ませて、ターゲットを子供だけに絞らなかったというのは英断だと思います。……主人公もおっさんですしね(笑)。アイアンマンもおっさんなんですけど、それよりも渋いおじさま感、ダンディズムを強く感じたかな。

手が使い物にならなくなったら、曲作れないじゃん!

──ストレンジは、キャプテン・アメリカのような正統派ヒーローとは違いますよね。上から目線の天才外科医という設定は、今までのヒーローとは異なる導入かな、と。

「ドクター・ストレンジ」

「ドクター・ストレンジ」

ええ。マーベルヒーローはカッコよさと同時に、全員ジメっとした部分を持っているんですよね。生い立ちに暗い過去やトラウマがある。ストレンジは途中までエリート街道まっしぐらだったので、そこがほかのキャラクターと違いますよね。でもそんな鼻持ちならないやつだったストレンジが、腕のけがによってどん底に落ちる。今までのパターンと違う、異質ですよ。

──事故で両腕に大けがを負うシーンは、本当に痛々しかったです。

本当に……。僕、いっつも思うんですよ。骨折して手が使い物にならなくなったら、曲作れないじゃん!って。だからストレンジが手にけがをしたシーンや、リハビリのシーンは本当に観てられなくて。直視できずに、メガネ外して薄目で観ましたもん! (目を細めながら)うおー、うおーって(笑)。手が一番怖いですね。

──耳よりもですか?

ヒャダイン

もちろん、耳も嫌ですよ? でも鍵盤を弾いたりキーボードを打ったりするのは手なので。手からすべての音楽が放たれてると思ってます。本当に、ストレンジはよくあそこから這い上がったなって。「ファンタスティック・フォー」みたいな、「うわあ、事故で特殊能力が付いちゃった!」って感じとはまったく違うじゃないですか。僕「ファンタスティック・フォー」は大好きなんですけどね!(笑) 魔術が欲しくて、もがいてもがいて、死ぬほどがんばったっていう、“いぶし銀”なストレンジに、日本の方は特に共感できるんじゃないですかね?

──天才外科医と言われつつも、すごく努力してきていますもんね。魔術での戦い方も、これまでのヒーローとはまったく違いました。

そうですね。直情的な「戦うぜ、殴るぜ、ドーン!」っていうものではなく、神秘的な見せ方になっていて。とはいえほかの魔法モノ、例えば「ハリー・ポッター」とかとは全然違うんですよね。今までの魔法映画はファンタジー的な要素が大きかったんですけど、「ドクター・ストレンジ」はもっと“神秘”な部分が多くて。

“ユーモア部門”受賞はスタン・リー

──一番好きなシーンは、魔術の場面ですかね?

うーん、部門によりますね。“ワクワクした部門”は、魔術によって街が次元を超えてうねるところです。で、“住んでみたい部門”はストレンジのお家なんですよね。あれ、いい部屋でしたねえ!(笑) さっきGoogleで住所調べちゃいましたもん。あとストレンジがネパールを訪れる場面は、ハリウッドの皆様が思う東洋のミステリアスさ、神秘性をものすごく繊細に表現していて。僕ら東洋人から見てもきれいだなと思えたので、それが“風景部門”。それから僕は血が苦手なので、リアルな手術シーンが“マジ勘弁してほしい部門”(笑)。

──ところどころ笑えるポイントが挟まれていたと思うのですが、“ユーモア部門”で言うとどうでしょう?

「ドクター・ストレンジ」

「ドクター・ストレンジ」

そうですね、ネタバレになっちゃうので悩みますけど……。マーベル作品に必ずカメオ出演しているスタン・リーが、今回はすごくわかりやすいところで出てきますよね。毎作品連続受賞になってしまうかもしれないですけど、彼に“ユーモア部分”の賞を授与したいです!

──今回は初心者でも見つけられそうですね。

見つかると思います! けっこう長尺いただいてます(笑)。

映画「ドクター・ストレンジ」2017年1月27日全国公開

映画「ドクター・ストレンジ」
ストーリー

上から目線の天才外科医ドクター・ストレンジ。突然の交通事故で“神の手”を失った彼は、至高の魔術師エンシェント・ワンのもとへたどり着く。厳しい修行によって魔術師となったストレンジは、“闇の魔術”の存在を知り、世界を滅亡から救う戦いに巻き込まれていく。

スタッフ / キャスト

監督:スコット・デリクソン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キウェテル・イジョフォー、レイチェル・マクアダムス、ベネディクト・ウォン、マイケル・スタール・バーグ、ベンジャミン・ブラット、スコット・アドキンス、マッツ・ミケルセン、ティルダ・スウィントンほか

ヒャダイン
ヒャダイン

本名、前山田健一。1980年生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身に着ける。京都大学卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一としてヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。2011年4月にメジャーデビューシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」、2012年11月に初のソロアルバム「20112012」をリリースした。作家としては、ももいろクローバーZ、でんぱ組.Inc、SMAP、郷ひろみらに楽曲を提供しながら、アニメソング・CM音楽・映画劇伴の制作も手がける。メインMCとして「musicるTV」「久保みねヒャダ こじらせナイト」「ヒャダインのガルポプ!」にも出演中。