映画ナタリー Power Push - ヒャダインが語る「ドクター・ストレンジ」
常識はすべて捨てろ!ドクター・ストレンジの修行から学ぶ哲学
山下達郎さんのようになれるなら、例え闇の魔術に入門してもいい
──エンシェント・ワンとストレンジの師弟関係も、ストーリーの大きな軸になっていましたね。
エンシェント・ワンは、常に絶対的な正義として君臨していますよね。キリスト教で言うイエス・キリストみたいな、それぞれの宗教の神様みたいな存在として描かれているのかもしれません。そういう視点で考えてみると、すごく面白くて。神を疑ってしまったとき、自分はどう反応するのか?という話なんですよ。抗うのか、理解しようとするのか。
──元弟子でもある悪役カエシリウスは、エンシェント・ワンが闇の魔術を使っているのではないかと疑い、反旗を翻します。一方ストレンジは、その疑いを聞いても柔軟な考え方を示しますが、ヒャダインさんが共感したのはどちらですか?
ストレンジ……に、なりたいところですけどね! けど僕はあそこまでフレキシブルにいかないかも。ふざけんなよ、お前、言ってたこととやってたことが違うじゃねえか!って(笑)。だから修行前の傲慢なストレンジかもしれないですね。まあ僕、あんなにいい部屋に住んでないですけどね(笑)。
──ヒャダインさんにとって、エンシェント・ワンのような師匠はいますか?
実際に会ったことはないですけど、これまでの音楽を作ってきた先人たちですかね。古くはベートーヴェンやショパンが、僕にとって絶対的な正義であるエンシェント・ワンなんです。だってショパンに「あいつのメロディセンス、ダサくね?」って言う人、絶対にいないじゃないですか。実際すっごいんですよ、「あいつ、マジいいメロ書くよね」ってなりますから。直近で言えばスティーヴィー・ワンダーのエンシェント・ワン感はすごいです、すべてが偉大。日本なら、山下達郎さんですかね。捨て曲が1つもない、全部図抜けてる!
──山下達郎さんに、闇の魔術を使っている疑惑があったら面白いですね(笑)。
ははは(爆笑)。でももし「山下達郎さんは闇の魔術を使っているかもしれない」と言われたら、僕は即、闇の魔術の入門手続きをしますよ! 印鑑持ってきてサインします。
──悪の存在になったとしても、あんなに素晴らしい曲が書けるのなら。
いいですいいです。カエシリウスみたいに、目の周りが黒くなってもいいです、耐えます(笑)。
“アベンジ”という動詞に新たな意味を加えたい
──ほかのマーベルヒーローもお好きと伺いましたが、特に好きな作品はありますか?
「アベンジャーズ」は、概念的に大好きなんです。何かにつけて「これは◯◯版のアベンジャーズだ!」って言っちゃうくらい。それぞれの独立作品で大活躍してる主役キャラが集まり、大きな敵に立ち向かうって素晴らしいですよ。“報復する”という意味の“avenge”って英語の動詞がありますけど、それに“異なる個性がひとつになって事をなす”っていう意味を加えてもいいと思う。「この一大プロジェクトは、すごくアベンジしたから」みたいな。
──世界的に意味が通じますからね。
ですよね! 「この作品は各界からアベンジしてできたものだ」的な。……これ、いいかも(笑)。
──アイドルや声優からいいボーカリストを集めてアベンジできるとしたら、誰を選びますか?
うわあ、アベンジしたいですねえ! でもみんな違ってみんないいからなあ……。あえて、各グループであんまり歌がうまくない人をアベンジしたいです。うまくない人の集まりってすごくエモいと思うんですよね。がんばってるのに音が外れたり、声が裏返ったりする人たちのアベンジャーズを作りたいです。どうしちゃったの?っていう子たちを集めた、“伸び悩みアベンジャーズ”。もしくは“三番手アベンジャーズ”(笑)。まあ、それ自体がアイドルなのかもしれないですね。アイドルって、まだ1人じゃ戦えない子たちが集まってるっていう面もあると思うので。……でも、そうするとアベンジャーズじゃないか。It is not アベンジ!
──実際「アベンジャーズ」には、一番手が集まってますね。
そうなんですよね。今回もアベンジャーズの存在が見え隠れしたので、次回ドクター・ストレンジはアベンジャーズに加わるのか!?ってワクワクしてます。
──2018年公開の「アベンジャーズ」第3弾では、ストレンジが大きな役で出るという噂もあって。
おおー。出たら、どう絡むんでしょうかね。ちょっとほかのキャラと風合いが違いますから楽しみですね。
──ありがとうございます。では最後に、これから映画を観る方にメッセージをお願いします。
まず、何を置いても映像美を堪能してほしい。これまでのマーベル映画ももちろんすごいんですけど、また意味合いが違う、観念的な部分を表現した映像美がここにはあるので。セリフにもありましたが、すべてを受け入れて、その映像に身を任せることがポイントだと思います。従来のアクションが好きな人も、「こういう新しいアクションの形があるんだ!」って新世界を発見できるはず。そこを否定するのか肯定するのかはあなた次第だし、肯定する人生のほうが楽しい!っていうのがこの映画のテーマです。新しいものが好きな方は絶対に観たほうがいいと思います!
映画「ドクター・ストレンジ」2017年1月27日全国公開
ストーリー
上から目線の天才外科医ドクター・ストレンジ。突然の交通事故で“神の手”を失った彼は、至高の魔術師エンシェント・ワンのもとへたどり着く。厳しい修行によって魔術師となったストレンジは、“闇の魔術”の存在を知り、世界を滅亡から救う戦いに巻き込まれていく。
スタッフ / キャスト
監督:スコット・デリクソン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、キウェテル・イジョフォー、レイチェル・マクアダムス、ベネディクト・ウォン、マイケル・スタール・バーグ、ベンジャミン・ブラット、スコット・アドキンス、マッツ・ミケルセン、ティルダ・スウィントンほか
©2017 MARVEL
ヒャダイン
本名、前山田健一。1980年生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身に着ける。京都大学卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一としてヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。2011年4月にメジャーデビューシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」、2012年11月に初のソロアルバム「20112012」をリリースした。作家としては、ももいろクローバーZ、でんぱ組.Inc、SMAP、郷ひろみらに楽曲を提供しながら、アニメソング・CM音楽・映画劇伴の制作も手がける。メインMCとして「musicるTV」「久保みねヒャダ こじらせナイト」「ヒャダインのガルポプ!」にも出演中。