全41巻で完結した鈴木央による人気コミック「七つの大罪」。そのテレビアニメ最終章「七つの大罪 憤怒の審判」が6月に完結、そして鈴木央自ら描き下ろした後日談となる「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」が7月2日に公開された。映画ナタリーでは「七つの大罪 憤怒の審判」のBlu-ray / DVD BOXの発売を記念し、シリーズの歩みを振り返るとともに完結編となった劇場版の見どころを紹介。またメリオダスとゼルドリスの1人2役を務めた梶裕貴、エリザベス役の雨宮天、ホーク役の久野美咲が完成披露プレミア上映会で語った“完結への思い”も詳細にお届けする。
文 / 奥富敏晴
人と人ならざる者の世界が分かたれてはいなかった時代、7人の凶悪な大罪人からなる王国最強最悪の騎士団〈七つの大罪〉がいた。彼らはブリタニア一の大国リオネス王国の聖騎士長を殺し、王国転覆を謀った疑いで国を追われる。そして10年後、物語はかつて〈七つの大罪〉を率いた団長〈憤怒の罪(ドラゴン・シン)〉のメリオダスと、リオネスの第三王女エリザベスの出会いから始まる。2人は王国を支配する聖騎士に対抗するため、散り散りになったかつての仲間たちを探す旅へ。しかし、その出会いは魔神族と人間、妖精族、巨人族、女神族が相対する聖戦によって運命付けられたものだった。「たとえお前が死んでも……オレはお前との約束を果たす」。幾度も繰り返されたメリオダスとエリザベスの悲劇的な愛の輪廻。「七つの大罪」は“光の導き手と黒き血脈の聖戦”をめぐる大河にして、2人の3000年に及ぶ愛の物語だった。
2011年11月、1本の読み切りが週刊少年マガジンに掲載された。「ライジングインパクト」「金剛番長」で知られる鈴木央による王道バトルファンタジー「七つの大罪」。本作でマガジン初登場を果たした鈴木央は、翌年にはキャラデザやストーリーを一新させ連載化。数多いるマンガ家でも数少ない「4大週刊少年マンガ誌での連載」という偉業を成し遂げた。2014年には累計300万部突破とともに、鈴木央の作品として初めてテレビアニメ化が決定。主人公メリオダス役に梶裕貴を迎え、第1期から「聖戦の予兆」「戒めの復活」「神々の逆鱗」「憤怒の審判」と続き、7年掛けて原作の最後までを描く長寿シリーズとなった。2018年には鈴木央描き下ろしのネームをもとに魔神族の集団〈黒の六騎士〉との激突を描いた「劇場版 七つの大罪 天空の囚われ人」が公開。そして2020年、連載8年に及んだ原作が完結。去る2021年6月にはテレビシリーズにも終止符が打たれた。
7月2日に封切られた「劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち」は“最終章のその先”を描いた物語。鈴木央が「本編で描き残したエピソード」と語る、原作にもない完全新作オリジナルストーリーとなる。3000年に及ぶ聖戦が終わり、その役目を終えた〈七つの大罪〉はそれぞれの道を歩み始めていた。しかし、平穏が訪れたはずのブリタニアを暴走した妖精族と巨人族が襲う。彼らがつぶやくのは「“聖戦”を台無しにした〈七つの大罪〉とそれに与した者共を罰する」という謎の言葉。2代目妖精王ダリアと巨人の名工ダブズが、〈七つの大罪〉の前に立ちはだかる。原作には名前だけ登場していたものの、その姿は謎に包まれていた2人。ダリアは妖精族なのにムキムキで筋骨隆々、ダブズは巨人族の中では小柄で細身という鈴木央があえてひねりを加えたクセの強いキャラクターだ。一族の中で異端とも言える2人の力とは。そして、その影に潜むさらなる脅威とは……? メリオダスとその弟ゼルドリスの初共闘も見逃せない。
久野美咲
「ホークは自分の相棒だと思って大切に生きていきます」
私はこの作品を通してホークを演じることで、いろんな経験をさせてもらいました。
冒険もしましたし、飛んだり、跳ねたり、焼かれたり(笑)。
お芝居だけじゃなくて、作品のファンの方たちと触れ合う機会もたくさんいただきました。
イベントで温かく声を掛けてくださったり、ラジオでいつもたくさんのお便りを送ってくださったり。
本当にどれだけ助けてもらったかわからないほど、感謝の気持ちでいっぱいです。
皆さんとの思い出もキャストのみんなとの思い出も、ずっと忘れずに大切にしたいと思っています。
私はこれからもずっとホークは自分の相棒だと思って大切に生きていきます。
感謝の気持ちを込めてホークを演じました。
「七つの大罪」のフィナーレを見届けていただけたらうれしいです。
本当にありがとうございました。
雨宮天
「エリザベスの愛情と覚悟を見届けて」
7年間、エリザベスの声を担当させていただきました。
役が決まったときはもちろんうれしくて、本当にびっくりしました。
でも正直、私とエリザベスの性格は似ていなくて、
彼女に共感できることばかりではありませんでした。
だからこそ、自分なりに時間をかけてエリザベスに歩み寄る努力をしてきました。
なんでエリザベスはこういう反応をしたんだろうか?
このときエリザベスは何を考えていたのかな?を理解できるように。
それでもなかなかエリザベスの持っている包容力や母性がわからないことはあって。
テイクを何回も重ねたシーンもありました。
アフレコの帰り道に何が正解だったんだろう?
自分がエリザベスを演じていていいのかな?と悩んだことも少なくありませんでした。
今も「私がエリザベスでよかった!」なんて胸を張って言えるわけではないです。
でも「七つの大罪」と出会っていなかったら、エリザベスと出会っていなかったら、
私が今持っている表現の引き出しは全然違うものになっていたと思います。
〈七つの大罪〉とエリザベスからは、たくさんのことを教えてもらいました。
そして自分なりに得たものを劇場版のエリザベスのセリフにすべて込めたつもりです。
エリザベスの愛情と覚悟を見届けていただけたらうれしいです。
「七つの大罪」に関われて、エリザベスを演じることができて本当に幸せでした!
梶裕貴
「ありがとう!大罪」
7年間、1つの作品で2人のキャラクターを演じるというのは初めての経験でした。
これからの声優人生においても、なかなか出会える機会はないと思います。
そして物語の完結までテレビアニメーションを制作していただけたこと、
劇場版を2作も作っていただけたこと、
そんなチャンスをいただけたのが本当にうれしいです。
原作、アニメ、どちらも応援して来てくださった皆さんのおかげだと思います。
本当にありがとうございます。
鈴木央先生の夢とロマンあふれる、このファンタジー作品。
最後まで本当に楽しませていただきました。
笑わせていただきました。涙するシーンもたくさんありました。
メリオダスに寄り添う中で、途中からはゼルドリスに寄り添う中で感じた感情が本当にたくさんあります。
第1話のアフレコのとき、監督とスタッフさんから
「この作品はメリオダスとエリザベスの愛の物語です」というお言葉をいただきました。
物語が進めば進むほど、その言葉の重みが胸の中にじんわりと染み込んでいくような印象がありました。
そして本編が幕を閉じ、その後の物語として、今回の劇場版がある。
メリオダスの願いやエリザベスの愛、
そして2人が3000年掛けて手に入れた愛の時間がこの作品には詰まっていると思います。
もちろん、ほかのどのキャラクターの愛もあって、
ある種、家族の物語だったんではないかと感じています。
これからはメリオダスを演じる機会はなくなってしまうと思いますが
それでも、作品となったことでキャラクターたちは生き続けます。
ぜひ、これからも彼らと一緒に歩んでいっていただければと思います。
きっと今日ここに来られなかったキャストのみんなもそう思っていると思います。
原作としては8年、アニメとしては7年。
長い旅、お疲れ様でございました。
では最後に一言。
「さてさてさーて、ありがとう!大罪」