第45回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2023の特別プログラムとして「
デプレシャンは1992年に第15回ぴあフィルムフェスティバルで長編デビュー作「魂を救え!」が上映されて以来、たびたび日本を訪れ、新作「
本日のイベントは「アルノー・デプレシャン監督『女囚701号 さそり』を語る」と銘打たれ、上映後にトークが行われた。1972年に公開された東映製作による「女囚701号・さそり」は、梶扮する女囚・松島ナミを主人公とした大ヒットシリーズの第1弾。恋人に裏切られたうえ冤罪で収監され、復讐に燃える主人公を梶がクールに演じ、役者としての地位を確立させた。デプレシャンの「ちょっと生意気な映画ですよね。あらゆる発明にあふれていて、女優も輝いています」という絶賛に、梶は「光栄でございます。私の代表作で、この作品がなければここに座っていることもありません。ありがとうございます」と謙虚に喜んだ。
デプレシャンが「再見して思うのは、小さい頃にカトリーヌ・ドヌーヴを初めて見たときと、梶芽衣子さんを『さそり』シリーズで発見したときの印象がちょっとダブるんです」と切り出すと、梶は「とんでもないです!」と首を横にぶんぶん振り謙遜。デプレシャンは「なんて自由に演じていらっしゃるんだろうと思ったんです。映画にはルールというものが存在しますが、梶さんは自分のルールをキープして演じています。新鮮な存在感があり、男性主体だった日本映画の中では特別でした」と続ける。
梶は「ドヌーヴさんは尊敬している女優さんの1人。彼女と比較されるなんてとんでもないです」と感謝し、「さそり」の出演経緯について話し始める。それまで在籍していた日活を離れ、東映で「銀蝶渡り鳥」の話を受けた頃、プロデューサーから「もう1本出てほしい」とオファーされたのが「女囚701号・さそり」だった。日活時代に「野良猫ロック」シリーズなどアウトサイダーな役が多かった梶は、“女囚”という設定に「このスタイルから一生抜けられないのか」と迷い、一度は断ったというが、「このヒロインに言葉はいらない」と思いつき、セリフをなくすことを出演条件として提案。すったもんだの末、梶の提案をもとにナミのキャラクターが作り上げられ、映画の興行は大成功を収めた。当時の日本映画界のエピソードが続々と飛び出し、驚きや笑いのリアクションとともに聞き入っていたデプレシャンは「無声映画の原点に立ち返ったってことですね」と感心するが、当の梶は「いやー、それは褒めすぎ!」と笑い飛ばした。
「セリフがなくても、さそり(ナミ)の傷付いた心や自尊心が体現されていて、女性としての誇りをあなたの演技に見出しました」と熱弁するデプレシャン。同じようにあまりセリフを発しない俳優としてクリント・イーストウッドの名前を挙げると、梶は「最高!」と声を弾ませ、「監督も俳優もされて、すごいエネルギーですよね。監督はお芝居したいと思わない?」と話を脱線させる。デプレシャンが「僕は存在感ゼロなんです」と苦笑すると、梶は「やってもないのにわからない!」と押しの強さを見せて彼を笑わせた。
デプレシャンは「映画史において、寡黙な役を演じるのは主に男優で、どちらかと言えば女優はヒーローを支えてきました。そこに英雄的で寡黙で観客が自己投影できるヒロインを作り出したのが梶芽衣子さんです。あなたは男性の特権を奪い返し、女性たちにそれを贈った。さそりという女性のプライドが、多くの女性のプライドに昇華したのです」と改めて梶の功績を称賛。そして「今日皆さんがご覧になったのは1作目ですが、僕が特に話したいのは2作目(「
梶は「寺山修司さんが私について書いてくださった文章で、『梶芽衣子という女優は100万人の女性の不幸を1人で背負っている女』だとおっしゃっていて(笑)」と切り出すと、これにはデプレシャンも思わず大笑い。梶は「確かに『さそり』は封切りのときから女性ファンが多くて。不幸な女性の代表みたいな感じで、(観ると)元気がもらえる部分もあったと思います(笑)。仕事を終えて映画館に来て、疲れを癒やすみたいな。スカッとする作品でもあったようですね」と話した。その後もデプレシャンが、これから観たい梶の出演作として「仁義なき戦い 広島死闘篇」「曽根崎心中」「罪の声」などを挙げ、梶も増村保造との思い出を披露するなど、トークショーは時間を大幅にオーバーするほどエピソードが飛び交った。
第45回ぴあフィルムフェスティバルは9月9日から23日まで東京・国立映画アーカイブで実施したのち、10月14日から22日まで京都・京都文化博物館でも開催。「私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター」は東京のBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で上映中だ。
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梶芽衣子、「女囚さそり」愛する仏監督アルノー・デプレシャンの絶賛に「褒めすぎ!」 https://t.co/wYwg0w3ryE