本日10月21日公開作「
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021で観客賞と優秀作品賞のダブル受賞を果たした本作は、佐賀県を舞台にしたロードムービー。マンガ家を目指すフリーター・春利の和やかな旅行の風景が、かつての思い人・小夜の登場で一変する。春利に高橋佳成、小夜に中村祐美子が扮した。
九州を中心に映像制作を行い、「カランデイバ」「電気海月のインシデント」などを手がけてきた萱野。以前からアイデアを温めていた本作について「具体的なテーマや題材を掲げていたわけではないんです。ある程度エンタテインメント性は意識していましたが、アイデアノート的なものもほとんど付けていませんでしたし、そういうものに則って構造的に順序立てて書いていくということもしませんでした。ほぼ一筆書きに近い形で初稿を書き上げたと記憶しています」と振り返る。
また萱野は、脚本を書き上げたあとで「これは自分の大好きな『銀河鉄道の夜』だったのかもしれない」と気付いたという。宮沢賢治を好きな作家の1人に挙げ、「意識したわけではなかったのですが、結果的に『銀河鉄道の夜』と同じように『死』と『旅』の物語だったなと。おこがましいですが」と自ら分析。劇中には「春と修羅」も登場するが、「ちなみに春利(ハルトシ)と『春と修羅』の語感が近いのは、撮影中俳優に指摘されて初めて気付きました。本作はまさに春利と修羅場の話なので『春と修羅』はピッタリなわけですが、主人公の名前は執筆の初期段階で決定していたので、偶然、というか何か潜在的な意識が働いていたのかもしれません」と明かした。
CGの使用を最小限にしたホラー演出の方向性は、美術スタッフ・稲口マンゾと劇中に出てくる「ソレ=大きな人」の表現方法について話し合ったときに決まったそう。“ソレ”については「CGにする」「映さない」「着ぐるみ」などの案も出たが、最終的に「ハリボテの人型」を使うことに。萱野は「夢は奴らの狩場だよ」という劇中のセリフを挙げながら、「夢のシーンは何者かが作った舞台装置であるという意味で、それらの演出に行き着いたのは『ハリボテ』というキーワードがすごくしっくり来たからです。このあたり、作品をご覧いただく際に注目してほしいポイントでもあります」とアピールした。
「夜を越える旅」は東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開。
※高橋佳成の高は、はしご高が正式表記
萱野孝幸の映画作品
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