岩手・一関に江戸時代から続く食文化を題材とした「
餅に関する言い伝えが多く残っており、年中行事や人生の節目に餅を食べる習慣がある一関。「もち」は、一関に暮らす14歳の少女ユナが、子供から大人へと変化していく一瞬の時間を切り取った60分の作品だ。周囲の反対を押し切り、祖母の葬式で臼と杵を使った昔ながらの方法で餅をつく祖父。通っている中学校の閉校も決まり、周囲の変化に不安を抱えていたユナは、祖父の心の機微を敏感に感じ取る。
映画は「たまたま」で知られる映像ディレクターの
小松は佐藤由奈との出会いを回想しながら、「もち」の制作に至るまでの心境を告白。餅食文化が廃れつつあることを踏まえ「時代のせいにして、知らん顔をすることもできる。でもなぜ今まで残ってきたのかという意味、その心を忘れてはいけないと強く思った。この村には大切なものがまだたくさん残っている。この話は限りなくノンフィクションに近いフィクションでやることにとても意味があると思ったので、出演者は全員一関の人たちにお願いしました。この土地から生まれた言葉、伝統、想いを、なるべくありのままの形で残したかった」と語った。
「もち」は広島国際映画祭2019に正式招待。現在、YouTubeで小松が監督を務めた一関のPR動画 「もち」を観ることができる。
小松真弓 コメント
もちを作ること、一緒に食べること、それは、互いに幸せを分かち合い、悲しさ、辛さも共に背負っていく、人と人との絆を強めるためのもの。
誰も踊らなくなり、忘れ去られた神楽を復活させた中学生達がいると聞いて訪れた校庭で、1人の少女が舞っていた。それが14歳のユナでした。大地と共に生き、真っすぐで強く儚い人間という、希少な野生動物に出会った感覚でした。この土地では「もち」はただの食べ物ではなく、深いもの・強いものが宿っているという。だが、その文化がなくなりつつある。
東京にいると文化どころか、昨日と今日では街の景色ですら変わってしまっていることもある。
大量の情報が空中に溢れ、それぞれが欲しい情報だけを選択して簡単に手に入れられる便利な世界。毎日がすごい速さで更新されていく。人と人が直に繋がることも薄くなってきて、電話やメールなど空中で繋がることの方が多くなってきた。
今まで人々の体温のあるつながりの中で受け継がれてきた土着のものは、触れられることもなしにひっそりとなくなっていきそうだ。
それを時代のせいにして、知らん顔をすることもできる。でもなぜ今まで残ってきたのかという意味、その心を忘れてはいけないと強く思った。
この村には大切なものがまだたくさん残っている。
この話は限りなくノンフィクションに近いフィクションでやることにとても意味があると思ったので、出演者は全員一関の人たちにお願いしました。この土地から生まれた言葉、伝統、想いを、なるべくありのままの形で残したかった。
その昔人は一人で生きていけると思っていた時期もあった私。
「もち」は、あの頃の私のような人に見て欲しい。
小松真弓の映画作品
リンク
- 一関市もちPR動画 「もち」
- 広島国際映画祭(HIFF)公式サイト
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うすやま @usuqui
岩手・一関の食文化通して少女の一瞬切り取る「もち」公開決定、監督は小松真弓(コメントあり) https://t.co/gBCzO3b2qd
なんだか名作のにおい