手塚治虫を敬愛するマンガ家たちが、手塚マンガのトリビュート作を発表しているマンガ書籍・テヅコミ(マイクロマガジン社)。その5月15日発売号にて、時丸佳久による新連載「異世界ブラック・ジャック」がスタートした。タイトルの通り、「ブラック・ジャック」を題材とした“異世界もの”だ。
異世界ものと人気マンガのコラボといえば、「ドラゴンボール外伝 転生したらヤムチャだった件」、「今日からCITY HUNTER」、「騎士団長 島耕作」など、話題を集める作品が多い。果たして「異世界ブラック・ジャック」では、どのような物語が展開されるのか。
コミックナタリーでは「Re:ゼロから始める異世界生活」のエミリア役、「この素晴らしい世界に祝福を!」のめぐみん役など、多くの異世界ものアニメで活躍する高橋李依にインタビューを実施。「異世界ブラック・ジャック」をいち早く読んでもらい、その感想を聞くとともに、手塚マンガをあまり読んだことがないという彼女の視点から、テヅコミの魅力を語ってもらった。
取材・文 / 鈴木俊介 撮影 / 星野耕作
ブラック・ジャックが俺TUEEEしてる!
──高橋李依さんは「リゼロ」のエミリア役、「このすば」のめぐみん役など、異世界ものアニメに多数出演されていらっしゃいますよね。
異世界、よくお世話になってます(笑)。
──今回、高橋さんには「異世界ブラック・ジャック」第1話をいち早く読んでいただきましたが、まずはその内容に触れる前に、「異世界ブラック・ジャック」というタイトルだけを聞いて、どう思われたかを教えていただけますか。
「何それ、早く読みたい!」と思いました。異世界ものだと原作がライトノベルなことも多いんですけど、今回はマンガだと聞いて「すぐ読めるかも」「取っ掛かりやすいな」と感じましたね。あと異世界ものでも“転移”と“転生”では差があるので、それがどっちなのかなって。
──ちなみに原作の「ブラック・ジャック」って読まれたことあります?
実はちゃんと読んだことがなくて……。原作よりも「ヤング ブラック・ジャック」のようなスピンオフ作品を目にする機会が多かったように思います。ドラマも放送されていましたよね。だからブラック・ジャックがどういうキャラクターなのか、なんとなくは知っているんですけど、原作にどういうエピソードがあるかという細かい部分まではちょっと。でも「異世界ブラック・ジャック」は楽しく読ませていただきました。
──「異世界ブラック・ジャック」はいかがでしたか。
まず“転移”だったことに驚きました。「ブラック・ジャックがそのまま異世界に行くんだ!」って。なんとなく「ブラック・ジャック」の知識を兼ね備えた普通の男の子とか、前世がブラック・ジャックだったとかを想像していたのかな。だから異世界でも俺TUEEE(※)状態で、すごくいいなと思いました。ブラック・ジャックに俺TUEEEって言っていいのか、わからないですけど(笑)。
※キャラクターが無双している状態を指すネット用語。主にゲームで、レベルやステータスを引き継いで序盤の物語をやり直す場合などに使われる。
──(笑)。確かに、ブラック・ジャックならどんなに難しい局面でもなんとかしてしまいそうな頼もしさがありますよね。
あと異世界にもいろいろありますけど、「異世界ブラック・ジャック」はおとぎ話の世界が舞台ですよね。言われてみたら、おとぎ話や童話の世界も異世界と呼べるんだなと思って。
──第1話では、ブラック・ジャックがどうやら「桃太郎」の世界に迷い込んでしまったような内容でした。異世界というと、剣と魔法の世界を思い浮かべがちですが……。
もとの世界と違うところなら、全部異世界になるんですよね。違う時代にタイムスリップしたような感じもあって、面白かったです。
異世界ものとしても型破り
──印象的な場面はありましたか?
ブラック・ジャックが自己紹介したときに、「日本人なのにブラック・ジャックなの?」と名前をツッコまれたところ(笑)。原作の世界観だと、こんなことを言う人はきっといないですよね?
──いないですね(笑)。ちょっとメタ的な、トリビュート作品ならではの遊びの部分ですね。
あと大桃を切り開いたときの、「…これは種…か!?」ってところも好きです。絵が上手だから、医療ものを読んでるように錯覚しちゃうんですけど、冷静に読むと「いや、これ桃じゃん!」みたいな(笑)。
──「異世界ブラック・ジャック」にはまだヒロインが登場していませんけど、もし高橋さんがヒロインとして物語の中に登場するなら、どんな役どころだと思いますか。
うーん、もう1人の転移者として登場するのはどうでしょう。なぜこの世界にブラック・ジャックが転移してしまったのかとか、そういう世界の秘密を知っているキーキャラクター。ある意味ではブラック・ジャックをこの世界に連れてきた張本人かもしれない。
──するとブラック・ジャックと一緒にこの世界を冒険する仲間というよりは、黒幕側なんでしょうか?
あー、悪役もいいですね。ブラック・ジャックを手のひらで転がしてみたい! どこからかその様子を覗いていて、「君ならそうすると思ったよ、フフ……」みたいな(笑)。
──(笑)。「ブラック・ジャック」のヒロイン枠というと、ピノコを思い浮かべる人も多いかなと思うのですが、第1話では間接的な登場でしたね。
でも、このくらいのほうが逆にいいんじゃないかと思いました。ふとしたときに思い浮かべるのってやっぱり大切な人だし、よく知らない私でもそう思いましたから。
──「異世界ブラック・ジャック」は単発の読み切りでなく、連載として続いていくのですが、今後どんな物語を期待しますか?
いろんなおとぎ話の世界に行ってほしいですよね。私は「ブレーメンの音楽隊」が好きなので、もし出てきたらうれしいです。それから、女の子としてはお姫様が出てくる物語に憧れていたので、「眠り姫」みたいに困っている子たちを救ってあげてほしいですね。それで女の子たちに惚れられちゃって、ハーレム状態に(笑)。あ、でもそうやっておとぎ話の世界を変えてしまったら、何か不都合が出てくるのかな……。歴史を変えないとか、そういうのって暗黙のルールだと思うんですけど、そこの葛藤も見てみたい。
──でも第1話から、桃太郎の家族に向かって「その子はいつか3匹の動物を連れて鬼ヶ島へ鬼退治に行くだろう」って予言しちゃってますね。
あっ、本当だ。異世界ものとしても型破りな作品だなと思いました。
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「『火の鳥』のイメージで」と言われた曲がある
- 「テヅコミ」第8号
- 発売中 / マイクロマガジン社
手塚治虫生誕90周年記念マンガ書籍「テヅコミ」第8弾!
「七色いんこ」「どろろ」「バンパイヤ」などの名作を人気作家がトリビュート!
過去の手塚治虫作品も収録! 月刊・全18号予定。
「異世界ブラック・ジャック」
©時丸佳久
「ブラック・ジャック」©TEZUKA PRODUCTIONS
Produced by MICRO MAGAZINE
「テヅコミ」
©TEZUKA PRODUCTIONS
Produced by MICRO MAGAZINE
- 高橋李依(タカハシリエ)
- 2月27日生まれ。埼玉県出身。主な出演作に「からかい上手の高木さん」の高木さん役、「魔法つかいプリキュア!」の朝日奈みらい / キュアミラクル役など。異世界もの作品では「Re:ゼロから始める異世界生活」(エミリア役)、「この素晴らしい世界に祝福を!」(めぐみん役)、「ナイツ&マジック」(エルネスティ・エチェバルリア役)、「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」(ゼナ役)に出演し、いずれも主役級キャラを担当。「異世界チート魔術師」でも吾妻凛役を演じる。