壮馬は決して一面的な人間ではない
──今回演じられたキャラクターが帯刀壮馬という、斉藤さんと同じ「壮馬」の名を持つ人物です。ちょっとバカみたいな質問で申し訳ないんですが(笑)、同じ名前のキャラクターを演じる際に特別な思いというものは乗るものなんでしょうか。
特別乗る気持ちというのはあまりないんですが……今回、一発目のセリフが「帯刀壮馬です」と自己紹介をするシーンだったんですね。なかなかキャラクターの名前として「ソウマです」という音を発する経験はないですから、ちょっと不思議な気持ちにはなりましたかね(笑)。声優としてではなく、いちマンガ読者としての感覚で言うと、作品を読むきっかけとして“主人公が壮馬という名前のキャラクターである”ということが個人的な強い引きの1つであったのは間違いないですけども。
──「ヨコ読みマンガ愛好家はタテ読みマンガにもハマれるのか?」企画のときに、斉藤さんが「最初、『帯刀壮馬』を『たいとうそうま』と読むのかと勘違いして、『これは!』と思ったんですけど(笑)」とおっしゃっていたのが個人的にとても印象に残っています。
そうそう、そうなんですよね(笑)。ほぼ音が一緒なのか?っていう、その勘違いから始まった出会いだったんですけど……なんて言うんですかね、やはり役者として演じるとなったときは、名前が同じだからといって特別何かを込めるというよりは、どのキャラクターと出会ったときとも同じように自分の込められるものを精一杯込めたいという思いで臨ませていただきました。
──実際、この帯刀壮馬という人物についてはどんなキャラクターだという理解で臨まれましたか?
今回ディレクションでも「クールな人物」というふうにご指示いただいたんですけども、僕個人の解釈としては、彼の生きてきた特殊な環境がそうさせた、クールに振る舞わざるを得なかった人なのかなという気がしていて。おじいちゃんや妹に向ける温かな眼差しこそが彼の本来持っている人間性なんじゃないかなと思うんです。物語の冒頭で、上司である少佐からきつく言われていた「絶対ケンカはするな」という約束を転校初日で破ってしまうシーンがあるんですけど、そういうちょっとした危うさも持っていたりするんですよ。決して一面的な人間ではないんですよね。
──おっしゃるとおりですね。意外に完璧ではないというか。
そうそう。やっぱり8歳から18歳までの10年間、人間的な情緒の部分が養われるはずだった期間に過酷な環境にいたことで、生き延びるために少しいびつな形で成長してしまったところがあるんです。それでも感情というものが失われてしまったわけでは全然なくて、家族を思う強い気持ちが核に大きくある。それが彼の不安定さみたいなところにつながっているような気はしますね。
──演じる際に、そのあたりの表現についてはどのように意識しましたか?
けっこう細かくシーンごとに「ここはクールに」とか「ここは妹への優しさ全開で」というふうにディレクションをいただいたので、それに準じてやってみたんですけど……僕自身、妹が2人おりまして、妹という存在へ向ける眼差しというものはスッと理解できた部分もありましたね。その一方でイマーシブ映像のほうでは、他を圧倒する絶対的強者としての雰囲気が出せるように意識しました。
──収録を拝見していて、驚くほどスムーズに進んでいたのでさすが歴戦の役者さんだなという印象だったんですが、何か難しさを感じたポイントなどはありましたか?
難しかったといえば……僕が原作を読んでいたときにイメージしていた彼の声質が、実際の僕の声よりも低い声域だったんです。なので基準となる音域を低めに設定して臨んだので、そこから高い音は無理なくたくさん出せるんだけど、より低い音をバリエーションとして使おうと思うとレンジが限られてくるんですよ。そのニュアンスの演じ分けはなかなか難しかったですね。
現地ならではの「入学傭兵」の面白さを感じてもらいたい
──ここで、「入学傭兵」ポップアップストアで実際に販売されるグッズの一部をLINEマンガさんがご用意してくださいました。ご覧になっていかがですか?
こんなにあって「一部」なんですか? すごいですね……というか、ポップアップストアが開催されるくらい人気があるっていうことがまず素晴らしいです。さっきグッズのジャージを試しに着させてもらったんですけど、Lサイズは比較的ゆったり目のサイズになっていて、冬場とかにインナーを何枚もレイヤードした上に着てもすごく着心地がいいんじゃないかなと思いました。M、Lの展開があるということなので、いろんな体型の方に着こなしていただけると思います。
──作品ファンなら絶対に着たいデザインですし、普段使いもできそうですよね。
ですね。このアクスタとかもカッコいいじゃないですか。作品が好きな方は本当にどのグッズを手に取っていただいても満足してもらえるクオリティだと思います。作品同様に複合的な楽しみ方ができそうというか、グッズを買って楽しむもよし、イマーシブ映像で没入感を楽しむもよし、原作を軸にしていろんな形で作品の世界をより深められるポップアップストアになることは間違いないだろうなって気がしますね。
──来場されるファンに向けてのメッセージもお願いします。
イマーシブ映像はここでしか観られない特別なコンテンツですし、ぜひ観に来ていただきたいです。尺もしっかりあって非常に満足度の高い映像になっていますし、合間合間でアナウンス部分があって、壮馬くんが皆さんに直接語りかけるパートもあるんですよ。そこは原作とはまた違った、この映像ならではの楽しみ方ができる部分だと思います。現地ならではの「入学傭兵」の面白さを感じてもらえたらうれしいなと思います。
──「写真を撮らないか」のくだりとか、非常にかわいかったです(笑)。
ですよね(笑)。けっこうレアな帯刀壮馬くんに出会えますので、そこはちょっとご注目いただきたいです。
──では最後にまとめとして、今回の記事をきっかけに「入学傭兵」に興味を持たれる読者もいると思いますので、改めて斉藤さんからオススメポイントを教えてください。
冒頭でお話ししたことと重複してしまいますが、非常に美麗なビジュアルと魅力的なキャラクター、重厚なストーリーが展開されていく作品です。僕自身も素敵だなと思う点がいくつもあるんですが、きっと読み始めていただければ皆さんおひとりおひとりならではの好きポイントが見つかる、そんな作品だと思います。まだ読んだことがない方はぜひこの機会に読んでみていただけたらうれしいです。
──個人的にはタテ読みフルカラーマンガ、いわゆるwebtoonを敬遠している層もまだまだ少なくない印象があるんですが、そういう方へ向けてもひと言いただけますか?
そうですね、やはりヨコ読みと一番大きく異なるのはページがシームレスにつながっているということだと思います。「ページをめくる手が止まらない」という表現がありますけど、その感覚をさらに一歩押し進めた「スクロールする手が止まらない」という新しい感覚を味わっていただけるのがタテ読みマンガなのかなと。そのうえでこの「入学傭兵」はストーリー的にも序盤から気になる展開の連続ですので、そのワクワク感、没入感をぜひ味わっていただきたいと思います。
プロフィール
斉藤壮馬(サイトウソウマ)
4月22日生まれ。山梨県出身。2013年より81プロデュースに所属。2014年に放送されたTVアニメ「ハイキュー!!」の山口忠役で注目を浴びた。これまでの出演作は「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」(夢野幻太郎役)、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」(緋村剣心役)、「アイドリッシュセブン」(九条天役)、「ブルーロック」(千切豹馬役)など。2017年6月にはSACRA MUSICから1stシングル「フィッシュストーリー」でアーティストデビュー。2024年には10月から12月にかけてツアー「⻫藤壮馬 Live Tour 2024 "(Non)Fictions"」を開催した。
斉藤壮馬(SOMA SAITO) OFFICIAL WEBSITE