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「小春とふたりのナイト」大変だとは思うが、全員、幸せになってくれ!2つの人格持つ少女を巡る、恋と友情の三角関係ラブコメ
2025年10月17日 13:00 PR餅田心「小春とふたりのナイト」
少女・白鳥小春は心に傷を抱え、男の子に恐怖心を抱きながらも「素敵な恋がしたい」という願望を抱えていた。そんな小春のことが密かに気になっていた同級生の男子・雨ヶ瀬伊織は、小春が階段から落ちそうな場面に遭遇。間一髪のところで助けられた小春だったが、恩人のはずの伊織に向かって彼女は別人のような顔を覗かせる。それは小春の中に生きるもう1人の人物・秋人だった。「小春とふたりのナイト」は、1つの身体の中に存在する2人の人格を巡る恋と友情の物語。コミック アース・スターにて連載中だ。
文
ラブコメの予定調和から外れた、複雑な三角関係の行方は……?
誤解を恐れずにいえば、ラブコメは予定調和でできている。たいていは第1話を読めば主人公とメインとなる恋の相手が出てくるし、読者はその2人がやがて付き合うのだろうと予測して読んでいる。三角関係やハーレム型ラブコメだって、「少なくともそのうちの誰かと付き合うのだろう」くらいはわかっている。そして、そういう読者の予感を裏切ることが正しいわけでもない。むしろ、裏切らずにどう楽しませるか、心を動かすかにラブコメの肝はある。恋愛関係は、結果よりプロセスによって生まれるからだ。
そういう中にあって、「小春とふたりのナイト」は結末の見えないちょっとまれなラブコメディだ。
本作は、心に傷を持ち、学校でも家でも寂しい思いをしているけれど、素敵な恋がしたいと願う高校生・白鳥小春を中心にした物語。そんな小春を巡って2人のナイトが登場する。1人は、以前から小春を見ていたクラスメイトの雨ヶ瀬伊織。そして、もう1人はもともと小春を知り守ってきた秋人。この3人の関係が物語を動かしていく。
こう書けばいかにも典型的な三角関係ものだが、この作品が特殊なのは、秋人が小春の中にいる別人格であるという点だ。
気弱でおっとり、天然タイプの小春とは対称的に、秋人は乱暴で攻撃的な男の子。そんな彼は、小春が怖いことやつらいことに直面すると小春に代わって現れる。そして、秋人が現れている間のことを小春は覚えていない。
秋人は、伊織にとって肉体を持たないライバルであり、思いを寄せる小春自身と一心同体ともいえる存在でもある。小春と秋人では当たり前の恋人にはなれないが、ただ小春と伊織が結ばれるだけでは秋人というもう1人の小春が行き場を失う。3人の幸福な結末はどこにあるのか、そもそも存在するのか。一筋縄ではいかないラブコメになっている。
全員の幸せを願ってしまう、恋だけじゃない楽しく温かい友情の物語
さて、こうしてアウトラインを追っていくとシリアスな雰囲気を想像する読者もいるかもしれないが、それでいて読み味は明るく軽いところが本作の面白いところでもある。
この読み味を作っているものの1つはキャラクターの魅力だろう。心に重いものを持つ小春は、一方でコミカルに戸惑ったり喜んだりするかわいい天然キャラだし、クールそうな伊織は自分のことを「シンデレラに出てくる王子様のよう」と考えたり、小春をいびろうとする女の子たちを巻き込んで鬼ごっこを始めたり、話してみるとちょっと変なやつだったりする。そしてケンカっ早い秋人は案外ひねたところがなく、明るい楽しい男の子という一面を持っている。そういう小春たちを見ているだけで楽しくなる話でもある。
もう1つの明るさの要因は、本作が恋愛だけでなく、友情の物語でもあることだ。ひとりぼっちだった小春の周りに少しずつ人が集まってくるようになる様子は、シンプルに読んでいてうれしくなってくる。
友情が広がっていくのは小春だけではない。最初は疑似ライバル関係にある伊織に対して敵意をむき出しにしていた秋人も、伊織との交流の中で徐々に親しみを感じるようになっていく。小春の中にいるもう1人の人格である秋人は、周囲には小春としか認識されていない。ある意味では小春以上に孤独な存在だ。そんな彼が伊織に発見され、小春とは別の人格として親愛の情を向けられる瞬間は、序盤屈指のドラマチックな場面といえる。
小春、秋人、伊織たちの結末はまだ見えない。だけど、どのキャラクターも愛らしく、日常が楽しいからこそ、彼女たちの結末がどうなるか見届けたくなるし、それが明るいものであってほしいと願ってしまう。恋も友情も気になる青春ラブコメだ。
「小春とふたりのナイト」第1話を試し読み!
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