「きみは四葉のクローバー」1巻

このマンガ、もう読んだ?

「きみは四葉のクローバー」テレビ番組でも話題 純粋さと不穏さが漂う、読み始めると止まらないラブサスペンス

PRこうし「きみは四葉のクローバー」

小学生の頃はクラスの人気者だったが、高校生の今は陰湿ないじめを受けている宇一。家庭も崩壊し、限界を迎えようとしていたそのとき、宇一の前に初恋の相手であるよつはが現れる。明るくて健気なよつはの目的とは一体……。こうしが週刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載中のラブサスペンスだ。

/ 小林聖

こうし「きみは四葉のクローバー」1巻
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こうし「きみは四葉のクローバー」3巻
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謎から謎へとシームレスにつながるラブサスペンス

絶望からの復讐、逆転、やり直し……ここ数年で一気に存在感を放つようになったキーワードだ。そんなジャンルの新たな注目作が「きみは四葉のクローバー」。昨年12月に単行本刊行がスタート、今年2月にはマンガ大好き芸人が集う人気のバラエティ番組でも取り上げられ、注目を集めている。

物語の中心になっているのは、小学校時代は明るい人気者だった少年・宇一。彼は中学以降イジメや家庭崩壊などが重なり、卑屈で暗い高校生になってしまっていた。そんな彼のところに、小学校時代の初恋の少女・よつはが帰ってくる。

「きみは四葉のクローバー」第1話より。いじめを受ける中で周囲の人物に怯えきっている宇一に対し、明るく接するよつは。

「きみは四葉のクローバー」第1話より。いじめを受ける中で周囲の人物に怯えきっている宇一に対し、明るく接するよつは。

このよつはの登場から宇一の運命が変わっていくのだが、つい引き込まれてしまうのは単純な復讐・逆転劇でなく、謎から謎へとつながるサスペンスミステリー的なつくりのうまさからだ。

最初の謎は、よつはそのものだ。小学校時代と変わらぬ天真爛漫な様子で登場する彼女だが、その裏側に不穏な思惑が見え隠れしている。突然2階の窓から飛び込んでくる再登場シーンも小技が効いている。生々しく重苦しい宇一の現実に対して、いかにもマンガの幼なじみという演出でやってくるよつはは、最初から違和感や嘘くささを持っている。彼女が何者で、どんな目的を持っているのかという謎が、物語の最序盤を引っ張っていく。

「きみは四葉のクローバー」第1話より。宇一の前に突然現れたよつはの真意とは……。

「きみは四葉のクローバー」第1話より。宇一の前に突然現れたよつはの真意とは……。

よつはの目的がはっきりしてくる2巻では、宇一に対するイジメの真相と復讐にフォーカスが当たりはじめる。この部分も作劇の巧みさが光る。最序盤の1巻あたりまでは宇一が視点の中心に置かれているが、よつはが明確に動き始める2巻では視点が彼女に移っていく。直接的に描かれてこなかったよつはの内心がモノローグや心の声で描かれるようになり、次の謎──宇一を陥れた人物は誰か──へと自然と誘導されていく。2巻ラストなど、衝撃的な展開の面白さももちろんあるが、謎から謎へシームレスにつなげていく展開と演出のうまさが、本作を読み始めると止まらなくなるポイントだ。

紙一重の純粋さと不穏さはどんな結末へ向かうのか?

さて、もう1つ本作がクセになるポイントがキャラクターだ。

イジメ・復讐・逆転といったジャンルでは、胸クソキャラは欠かせない存在だ。邪悪であればあるほど、小者であればあるほどわかりやすくスカッとした展開にしやすい。明らかになっていく宇一のイジメを仕組んだ人物も、例に漏れずイヤなキャラクターなのだが、シンプルな性格の悪い人間でないところが面白い。

気に食わない奴をいじめるとか、弱い人間をいたぶって楽しむといったよくあるタイプではなく、歪んだ認識がこの人物の行動原理になっている。悪いとわかっていて楽しんでいるわけではなく、それが正しいことだと思って宇一を陥れている。ある種の純粋さが狂気となったキャラクターなのだ。

「きみは四葉のクローバー」第2巻より。宇一とよつはを昔から知る大和が、物語をかき乱していく。

「きみは四葉のクローバー」第2巻より。宇一とよつはを昔から知る大和が、物語をかき乱していく。

だから、復讐部分でも気持ちよさ以上に不穏さや緊張感が強く印象に残る。このキャラクターに限らず、本作の登場人物は誰もがどこかでひとクセふたクセあり、さまざまな内面を抱えているのが見え隠れする。それが不気味であり、先々にも関わってきそうな予感を感じさせる。

「きみは四葉のクローバー」第1巻より。

「きみは四葉のクローバー」第1巻より。

なかでも個人的に気になるのはよつはだ。宇一を愛し、彼を救うために奔走する本作の実質的主人公だが、彼女もどこかで危うい気配を持っている。宇一への愛情は純粋だが、純粋さと狂気が紙一重であることを、ほかのキャラクターを通して本作は示している。実際宇一とよつはの関係は、強固な信頼というよりよつはが戦略的に作り上げているもので、ある意味では支配的な関係といっていい。

「きみは四葉のクローバー」第1巻より。よつはが抱えているものはなんなのか。

「きみは四葉のクローバー」第1巻より。よつはが抱えているものはなんなのか。

よつはの純粋で盲目的な愛情は、いったいどこから来て、どういう結末へたどり着くのか。素直なハッピーエンドになるのか、そこにも不穏なものがあるのか。彼女の仕掛ける逆転劇の向かう先も、実は予想しづらいと思っている。だからこそ、続きが気になってしまうのだ。

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「きみは四葉のクローバー」第1話を試し読み!
©こうし(秋田書店) 

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