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中村倫也、中村ゆり&浅利陽介らと“怒れる若者たち”を熱演

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「怒りをこめてふり返れ」より。(撮影:谷古宇正彦)

「怒りをこめてふり返れ」より。(撮影:谷古宇正彦)

「怒りをこめてふり返れ」が東京・新国立劇場 小劇場 THE PITにて上演中だ。

本作は、1956年にイギリス・ロンドンで初演されたジョン・オズボーンの戯曲。それまでイギリスで題材にされなかった労働者階級社会を初めて描いたといわれる作品で、当時は“怒れる若者たち”という呼び名で社会現象を起こした。今回は演出に千葉哲也を迎え、水谷八也の新訳で上演される。

貧しい下級階層に生まれ、旧世代の価値観や秩序に激しい怒りをぶちまける主人公・ジミー役を演じるのは中村倫也。彼の妻・アリソン役を中村ゆり、彼らと共同生活を送る友人・クリフ役を浅利陽介、アリソンの友人・ヘレナ役を三津谷葉子、アリソンの父・レッドファーン大佐役を真那胡敬二がそれぞれ務める。

奥行きのある舞台上に現れたのは、イギリス中部の大きな町のとある屋根裏部屋。3人の慎ましい暮らしぶりを表現した精緻な舞台美術を手がけるのは、第22回読売演劇大賞で最優秀スタッフ賞を受賞するなど活躍が続く二村周作だ。舞台手前中央に配置されたソファにはジミーとクリフが腰かけ、新聞を広げながらああでもない、こうでもないと言葉を交わし、舞台上手ではアリソンが黙々と洗濯物にアイロンをかけている。窓の外では、日曜日の午後の気だるさを助長させるような雨がしとしと降り続いていた。ある日、部屋を訪れたヘレナは彼らの窮状を見かね、アリソンの父であるレッドファーン大佐に相談。説得されたアリソンは実家に戻ることを決意する。

そんな彼らの生活の中に常に存在しているのは、ジミーの“怒り”だ。彼は日々の雑事から政治に関することまで、ありとあらゆる事象に対してのフラストレーションを爆発させ、理不尽とも取れる言葉をアリソンやクリフに浴びせる。約3時間という決して短くはない上演時間の中で、中村倫也は時に早口に、時に強い口調で怒鳴り散らしながら、膨大なセリフを操り、ジミーの中にくすぶる感情を吐き出していく。その言葉を受け、憔悴するアリソンと彼女をなだめるクリフ、そして憤慨するヘレナ。ジミーの“怒り”を受け止める彼らの胸に渦巻く複雑な感情を、中村ゆり、浅利、三津谷の3人が静かに、しかし激しく表現。また一方で、T・S・エリオットの詩を引用するなど、ジミーが叙情的な語り口で話す場面も印象的なシーンとなっている。公演は7月30日まで。

「怒りをこめてふり返れ」

2017年7月12日(水)~30日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場 THE PIT

作:ジョン・オズボーン
翻訳:水谷八也
演出:千葉哲也
出演:中村倫也中村ゆり浅利陽介三津谷葉子真那胡敬二

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