去る11月23日、コミックナタリーが主催する「コミナタ漫研~マンガ家に聞く、同業者の気になる仕事」の第2回が、有楽町のドコモスマートフォンラウンジにて開催された。このイベントでは現役のマンガ家が、いまもっとも注目している連載マンガをプロ目線で紹介・分析していく。聞き手はコミックナタリー編集長の唐木元。 唐木元 今日はなにやらお隣の国でドンパチが始まってしまいまして、大事になって中止になったりしないかとヒヤヒヤしていたんですが、おかげさまで無事始まりましたコミナタ漫研第2回。今宵のゲストは水城せとな先生です。 唐木 今回水城さんにどのマンガがいまいちばんのお気に入りですか? ってお訊きしたら、出てきたのが「ガンスリ」。正式名称で言い直しましょう、相田裕先生の「GUNSLINGER GIRL」でした。このチョイス、けっこう意外で。 水城 少女マンガで来ると思いました? 実は私、少女マンガぜんぜん詳しくなくって。小さい頃から、男性作家さんの作品ばかり読んでたんです。少女マンガ誌を読んでも、惹かれるのは竹本泉先生とか柴田昌弘先生だったり。もともと男の人が描く絵とか話が好きなのかもしれないですね。 唐木 なるほど。前回森薫さんが、水城先生は青年誌的な発想を持った方なんじゃないのかな、とおっしゃってたので、けっこう当たってたんですね。何か検算をしてる気分です。
第1回の森薫に続くゲストは、「失恋ショコラティエ」で知られる
水城せとな 水城です。よろしくお願いします。ガンアクション+ペア萌え。だから女性も読める
唐木 ではさっそく行きましょう。まずはこの「ガンスリ」がどんな話なのか、あらすじを教えてもらえますか。
水城 はい。架空の現代イタリアを舞台に、テロリストと戦う「社会福祉公社」という組織が、身体に障害を持った幼女を集めて。
唐木 幼女、ですね。
水城 そう、幼女大事ですよ(笑)。彼女たちは「義体」と呼ばれるサイボーグに改造され、暗殺者として使われているんです。それぞれの義体には専属の担当官が付いていて、疑似兄妹の関係が与えられている。その絆が深まったり、心のすれ違いがあったりという姿を描くヒューマンドラマですね。
唐木 僕、掲載誌は毎号見てるんですが、カワユイ女の子がバンバン銃を撃つだけのお話だと勝手に思い込んで飛ばしていたんです。けど今回水城さんにご指定いただいて一気読みしまして、非常に重厚な、これは読むべき作品だなと。
水城 そうですよー!
唐木 うん、食わず嫌いというか、私の目は節穴でしたね。謝りたい気持ちでいっぱいです。では水城さんが「ガンスリ」のどこを気に入ったか、そのあたりから教えていただけますか。
水城 私はもともと幼女好きで、大槍葦人先生の絵とか大好きなんです。それプラス、美少女が銃とか剣とか武器を手に戦うっていうのがたまらなくて。男の人の萌えの世界かもしれないんですけど……。
唐木 それは男性読者の大好物ですよ。可愛い幼女が、重火器をぶっ放すっていう。
水城 キャッチーですよね。そこになぜか女性の私もホイホイひっかかった(笑)。加えて、義体と担当官の人間関係が魅力的で。一般論ですけど、男性って主人公のヒーローがどんどん成長していく話を好むと思うんです。一方で女性って、主人公プラス主人公と絆を結ぶ恋人なり相方がいて、このふたりの関係性はどうなるの?って構造に注視して読むと思うんですよね。
唐木 関係性萌えとかつがい萌え、ってやつですね。
水城 恋愛でなくても友情だったり、最近よくあるのは疑似家族的なものだったり。ふたりの間にある愛情とか絆が深まる様子を見たい、っていうのが、女性がフィクションを読むときに求めてるものかなって。映画にもなった「相棒」だって、水谷豊ひとりががんばる話だったらこんなに人気が出なかったと思うんです。
唐木 なるほど。好対照な寺脇康文がいたからこそ、のめり込む女性が続出したわけですね。
水城 そうです。同じように「ガンスリ」のペア構造は女性にすごいウケる要素だと思いますし、ただのガンアクションで終わらせずにつがいの絆を描く構成を持ち込んだことが、この作品ならではの発明と言えると思います。(つづく)
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サンキュータツオ(米粒写経) @39tatsuo
今日の『月刊 熱量と文字数』参考:
コミックナタリー - 第2回コミナタ漫研レポート(ゲスト:水城せとな)【1/5】 http://t.co/PmxkVaNKOU