ピッコマ主催による「第3回ピッコマノベルズ大賞」が開催中だ。これはピッコマユーザーに愛される作品を募集するノベルコンテストで、1年で4つのシーズンの応募期間が設けられ、都度新たなテーマが設定される。選ばれた複数のピッコマユーザーによる一次審査、運営事務局による二次審査を通過し年間最優秀賞に輝くと、賞金1000万円が贈呈されるほか、副賞としてSMARTOON化が確約される。現在シーズン2が展開されており、5月7日まで作品募集中だ。
コミックナタリーでは、2023年から2024年にかけて開催された「第1回ピッコマノベルズ大賞」で年間優秀賞を受賞した作家・たてのよこにインタビューを実施。これまで創作活動はしてこなかったというたてのが、デビュー作「皇女スヴェータの政略結婚 ~最強皇女は、王太子ではなく第二王子と結婚したい~」を執筆し、さらには応募しようと思ったきっかけはなんだったのか。そこには「ピッコマノベルズ大賞」ならではの“ハードルの低さ”があったと話す。
取材・文 / ナカニシキュウ
ピッコマでSMARTOON作品をあらかた読み尽くし「私が読みたいものを書いてみよう」
──たての先生は2024年4月に「皇女スヴェータの政略結婚 ~最強皇女は、王太子ではなく第二王子と結婚したい~」(以下「スヴェータ」)で「第1回ピッコマノベルズ大賞」の年間優秀賞を受賞されました。おそらく、その前後で作家人生が大きく変わったのではないかと思います。
そうですね、激変しました……!
──「スヴェータ」の応募以前はどんな作家活動をしていたんですか?
実は私、それ以前はまったく作家活動はしていなくて、普通に働いていたんです。自分で小説を書いてみようと思ったこともほとんどなかったですし、「小説家になろう」や「カクヨム」などで書いたりも一切していなくて。だいぶ創作とは離れた生活をしていました。
──そうだったんですね。では、書き始めたのはどういうきっかけで?
私はもともとピッコマのヘビーユーザーで、とくにSMARTOONにどハマリしてめちゃくちゃ読んでいたんです。引かれるぐらい課金していました(笑)。それであらかた読み尽くしてしまって、自分が読みたい作品が見つからないなと思っていたところ、「第1回ピッコマノベルズ大賞」の告知を見かけまして。「じゃあ私が読みたいものをちょっと書いてみよう」と思って、読者アンケートぐらいの気持ちで書いてみたのが「スヴェータ」だったんです。「こういうお話を読みたいので、どうか作ってください」という。
──作品というより、企画書に近いようなノリで?
そうですね(笑)。
──SMARTOONには、どういう部分に惹かれてハマったんでしょうか。
実は私、ちょっと前に入院生活をしていた時期がありまして。そのときに現実逃避じゃないですけど、没頭して楽しめるようなコンテンツを探していてSMARTOONに出会ったんです。どの作品も1話1話の展開がすごくダイナミックで、読む手が止まらなくて気づいたら課金しているみたいな(笑)、それが今までにない読書体験だと感じました。それと、“強い女性”のヒロイン像が多いところも惹かれたポイントですね。男性の権威に頼るのではなく、自らの知恵と度胸で状況を切り開いていくヒロインたちにすごく勇気づけられました。
──とくに好きだったタイトルを挙げるなら?
「悪女は2度生きる」や「悪女の定義」などですね。ただのラブストーリーじゃなくて、「いかに自分の居場所を見つけ、いかに野望を叶えていくか」というヒロインの生き様が描かれるところに衝撃を受けました。そこにはすごく「スヴェータ」も影響を受けています。
──そうしてSMARTOONを読みあさる中で「ピッコマノベルズ大賞」に出会い、読むだけではなく“書く”という選択肢もあることに気づいたわけですね。
はい。「書いてみたいな」という自分の中の感情にそこで初めて気がつきました。最初は完全に読者目線で、頭の中でSMARTOONを読んでいるときの気持ちを想像しながら書いていった感じですね。無意識ですけど、自分自身をターゲット読者のペルソナみたいにしていたんだと思います。「ストレスを抱えて働く女性で、強いヒロイン像を求めている」「スカッとすると同時に奥行きのある物語を読みたがっている」というような感じですね。同じような欲求を持つ読者さんは多いんじゃないかなと思います。
──それまで物語を書いた経験がない中で、キャラクターや設定、ストーリーなどを生み出すのに苦労はしませんでしたか?
自分の読みたいものがハッキリしていたので、とくに苦労はありませんでした。最初の頃に意識していたことといえば、「既存の作品とは被らないキャラクターにしよう」ぐらいでしたね。
──それもあくまで読者としての視点で、「ほかで見たことあるようなキャラクターでは読んでいて楽しくない」という意識ですか?
そうですね。読んだことのあるものを作ってもしょうがないなって。
──とても興味深いです。いわゆる作家性の発露とは別角度のアプローチで生まれたものが、結果として作家性になっているという話ですもんね。
そうですそうです(笑)。
物語の中ぐらいは努力が正当に報われてほしい
──具体的には、キャラクター作りはどのように?
まず「こういうキャラクターは読んだことあるな」という要素を外していって……例えばヒーローのサージェスだったら、「基本的にはカッコいいんだけど、ほかの作品ではあまり描かれないタイプの弱点を持っていて、しかもそれを恥ずかしがらずに見せられる」みたいなヒーロー像を想定しました。ヒロインのスヴェータの場合は、「“いい人”の中にちょっと悪い部分がある」という打ち出し方で、ほかと被らないキャラクター像を固めていった感じですね。スヴェータは悪女のキャラクターではあるんですが、基本的には善人なんです。
──設定やストーリーに関してはどうですか?
「ヒロインが知恵を使って腐敗した王宮を牛耳っていく、勧善懲悪のお話にしよう」という発想が基本でした。やっぱり現実社会には理不尽なことが多いので、物語の中ぐらいは努力が正当に報われるストーリーが展開されてほしいなと思うんです。なので、「悪いやつらを思いきり叩きのめす」という単純明快な因果応報の構図を話の核にしよう、というのは最初から明確に考えていましたね。
──「自分の読みたいものを書く」がテーマだった以上、当然最初からSMARTOON化を見据えて作っていたんですよね。
そうですね。最終的に絵で表現されたときに映えるような要素は意識していました。例えばずっと同じ場所でストーリーが進むのではなく、いろんな外国へ行く展開にすることで背景に変化が生じるようにしたりとか。あとは結婚式の衣装準備にひと波乱あったりするのも、「どういうビジュアルで表現されるんだろう?」と楽しみになる要素として考えたものですね。
──そんな原作小説が実際にSMARTOON化されることになり、できあがったものを最初にご覧になったときはどんなことを思われましたか?
「おおおー、キター!」って。
──(笑)。
やっぱり感激しますね。自分の頭の中で思い描いたものがいろんな方々のお力を借りて形になって、それを読者の方に読んでいただけるというのはすごくうれしいです。この美しい背景のビジュアルなんて本当に自分が想像していたとおりに具現化されていますし、キャラクターも小説の登場人物がそのまま飛び出してきたかのように描いていただいて……!
──とくに気に入っているシーンなどはありますか?
侍女のルイというキャラクターが自分の中ですごくお気に入りなんですけど、彼女のとある秘密が明かされるシーンですね。自分で思い描いていた以上に「こういうこと、こういうこと!」って(笑)。そのルイが使う魔法の表現とかもカッコよかったですし、読んでいてワクワクしました。
──ちなみにSMARTOON化の作業にはどの程度関わっていらっしゃるんですか?
基本的にはお任せしています。SMARTOON制作というのはかなり専門的な領域だと思うので、完全にお任せしたほうがいいものができるのかなと。なので私はできあがったものを見せていただいて、誤字脱字をチェックするぐらいですね。
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「自分が読みたい」から「読者が読みたい」ものづくりへ