WOWOW「劇場の灯を消すな!サンシャイン劇場編」|劇団☆新感線が“同窓会”?収録レポート

7月よりWOWOWライブにて、「劇場の灯を消すな!」シリーズがスタートした。同シリーズは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、公演中止・延期を余儀なくされた劇場を応援すべく、各劇場ゆかりの演劇人によるオリジナル企画を立ち上げ、劇場を盛り立てていくもの。8月1日にオンエアされる第2回では、東京・サンシャイン劇場にフィーチャーし、今年40周年の劇団☆新感線が、“勝手に”をテーマに、トークや朗読劇を披露する。ステージナタリーでは、7月上旬に行われた収録の様子をレポートする。

取材・文 / 熊井玲

サンシャイン劇場のエントランス。

サンシャイン劇場とは?

サンシャイン劇場は、1978年10月に池袋・サンシャインシティ内に開場した、総客席数808の中規模劇場。ミュージカル、商業演劇をはじめ、劇団☆新感線、大人計画、演劇集団キャラメルボックスの公演や、近年は2.5次元作品なども多数上演されている。

サンシャイン劇場と劇団☆新感線

粟根まこと(撮影:宮川舞子)

サンシャイン劇場と劇団☆新感線は、古い縁でつながっている。1980年に大阪で誕生した新感線は、1988年に新宿のTHEATER/TOPS(2009年に閉館)にて、初の東京公演を行った。その後劇団は東京でも人気を博し、1991年にはいのうえ歌舞伎「仮名絵本西遊記」でサンシャイン劇場に初登場。TOPSの客席数が約150だったのに対し、サンシャインは808席なので、その成長の速度たるや、言わずもがなである。当時についていのうえひでのりは、新感線の20周年記念本「時極表」にて、「サンシャイン劇場みたいな大きな劇場は初めてだったから、今、ビデオで見直すとなんか、探り探り使ってる感じはする。まあ、これがあるから今、新橋演舞場も使えているんだけど」と語っている。

その後、新感線は「地獄の軍団 ゴローにおまかせ2」、デーモン小暮閣下が客演した「星の忍者~Stranger in a Strange Star」、「花の紅天狗」、「髑髏城の七人」再演、「SUSANOH~魔性の剣」、「直撃!ドラゴンロック2・轟天大逆転~九龍城のマムシ」、「レッツゴー!忍法帖」、「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」、「鋼鉄番長」と、1990年代から近年まで、幅広い演目をサンシャイン劇場で上演している。

そんなゆかりの劇場で新感線の面々が繰り広げるのは、“勝手な○○”をテーマにした、ディープなトークとスリリングな朗読劇。7月上旬、1日かけて行われた撮影では、まず最初に粟根まことによる「勝手な劇場案内」が収録された。粟根は、ロビーや客席はもちろん、楽屋や奈落にも潜入し、サンシャイン劇場を余すところなく紹介している。

徳永京子がいのうえひでのりに直撃!

続けて収録されたのは、「劇場の灯を消すな!」シリーズのオフィシャルライターで、演劇ジャーナリストの徳永京子による「勝手な聞き放談」。シリーズ第1弾「Bunkamuraシアターコクーン編」に続き中井美穂が司会を務め、徳永がいのうえに以前から聞きたかったことをインタビューする。

いのうえひでのり(撮影:宮川舞子)

今回徳永が注目したのは、2011年に上演された「髑髏城の七人」──通称“ワカドクロ”。「髑髏城の七人」は1990年の初演以降、7年ごとにキャストや設定、演出を変えながら上演を重ねている新感線の代表作の1つで、2017年から1年半にわたって、東京・IHIステージアラウンドで花・鳥・風・月、そして極の5タイプの「髑髏城」が上演されたことは記憶に新しい。そんな数ある「髑髏城」シリーズで徳永が“ワカドクロ”に注目したのは、“舞台の時代劇”に対する演出家・いのうえの徹底したこだわりと、主人公・捨之介を演じた小栗旬、天魔王役の森山未來、無界屋蘭兵衛役の早乙女太一らキャストの良さが特に光る公演だったからだと言う。徳永は捨之介、天魔王、蘭兵衛の登場シーンをいのうえと共に振り返りながら、登場した時点ですでに、各キャラクターの個性が表現されていることを指摘。いのうえはそれに笑顔で応えながら、稽古場での思い出やキャストの知られざるエピソードを明かし、作品の芯に迫るトークが展開された。

店長は轟天! コラボカフェでぶっちゃけトーク

左から池田成志、古田新太、松雪泰子。(撮影:宮川舞子)

続けて収録されたのは、新感線の看板俳優・古田新太と客演回数の多い“準劇団員”たちによる「勝手な座談会」コーナー。この日、サンシャイン劇場内のカフェ・シアターテラスが、「新感線コラボカフェ」として特別営業を行い、店内には公演ポスターのほか、お地蔵さんやこけし、握り飯や串団子、酒びん、カツラ、ギター型の剣といったさまざまな小道具が並べられた。そこへ古田と池田成志、松雪泰子がやって来る。メニューを持って現れたのは、「五右衛門vs轟天」(2015年上演)に登場した“風谷のウマシカ”こと中谷さとみ。3人のオーダーをウマシカがキッチンに伝えると、カウンター奥から店長の剣轟天(橋本じゅん)が「ゴゴゴーッ!」っと、声にならない声で返事をした。

轟天は、1997年の「直撃!ドラゴンロック~轟天」で誕生以来、たびたび続編が作られている橋本の当たり役。格闘技の達人だがかわいい女子にはめっぽう弱い、愛すべき“変態キャラ”だ。トーク中も予想できないアクションで介入してくるが、3人はそれにツッコミを入れたりかわしたり、笑いながら会話を続ける。トークでは松雪がいのうえ歌舞伎、ネタもの、Rシリーズ(編集注:オリジナル楽曲が生バンドで演奏される、楽曲が多数織り込まれた作品群)と新感線の全ジャンルに出演していることや、池田が語る昔の新感線など、さまざまなエピソードが繰り広げられた。

途中、松雪が退出すると、続けて勝地涼が参加。勝地はサンシャイン劇場で上演された「犬顔家の一族の陰謀」が新感線デビューを飾った作品だと言い、「サンシャイン劇場はいい思い出」「勝地の半分は新感線でできてます!」と好感度たっぷりに話す。しかしセンパイ・古田と池田の愛あるイジりにタジタジになり、轟天に慰められる場面も。さらに後半は「カフェというより、居酒屋……?」といったユルユルとしたテンションと爆笑に包まれ、トークは終了した。


2020年10月23日更新