意志を持って輝く“個の時代”へ、新トップスター楊琳が誘うOSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり『STARt』」

楊さんはトップスターになっても変わらない

──ここからは楊さんと娘役トップスターのお二人、3人の座談会とさせていただきます。舞美りらさん、千咲えみさんにまずお伺いしますが、楊さんのこれまでの印象と、トップスターになったことで変化を感じるところはありますか?

左から千咲えみ、舞美りら。

舞美りら 私は入団2年目のときから楊さんと同じ公演に出させていただくことが多く、相手役を務めさせていただくことも多かったんです。楊さんの魅力は、何にもとらわれないところだと感じていて。私自身ちょっと保守的なところがあるのですが、楊さんは本能のままと言いますか(笑)、舞台上で出されるエネルギーがとてつもないなと思っています。また礼儀をとても大切に人に接していらっしゃるのもすごいなと思いますし、トップスターさんになられてからも、ご自身の中では葛藤する部分もあるのかもしれませんが、周囲に対して態度を変えたりしないのはさすがだなと。良い意味で楊さんは変わらないというか、どんな立場であっても信念がぶれない方ですし、自分もそうあるべき、そうありたいなと思います。

千咲えみ 私も下級生の頃から楊さんの主演舞台でたびたびご一緒させていただいているのですが、客席でお客さんとして観ていた頃から、楊さんはやっぱりダンスの方だなと。個人的に楊さんの踊り方が好きなんです(笑)。プライベートでは、下級生の頃、ある作品で私がどう演じたらいいのか、どう踊ればいいか迷っていたとき、楊さんが気にかけてくださったことがあって。私と真摯に向き合い、諦めずに私を引っ張ってくださって、本当に素敵な方だなと思いました。そんな楊さんがトップになられて、大阪松竹座でのお披露目公演のフィナーレで一番最後に階段を降りてきたお姿を拝見して、「ああトップスターさんだな」って改めて実感しました。

OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり『STARt』」大阪公演の「パレード」より、楊琳(写真中央)。

舞美 ああ、それは私もそうでした。最後(の「パレード」のとき)にセンターで「桜咲く国」のパラソルを回されている姿を見て実感しましたね。

──では逆に、楊さんはお二人にどんな印象をお持ちですか?

 2人とも、全然キャラが違いますよね(笑)。舞美とはずっと一緒にやってきたので、“勝手知ったる仲”じゃないですけど、呼吸が合う。一番わかり合える、一番信頼できる相手です。千咲とはこれまであまりガッツリと共演したことはなかったんですけど、にこやかで朗らかな雰囲気があるので、それをそのまま失わずに、良い意味でフレッシュさをどんどん出してほしいなと思います。

──OSKの娘役は、芯の強さが魅力の1つとよく言われますが、お二人は娘役同士として、ご自分たちに共通しているなと思う部分、逆に相手に対して素敵だなと思う部分はありますか?

舞美 似ているというか……私も千咲ちゃんもA型で、無意識のうちにA型が集まって、相談することがありますね。心配性なのか、「あのシーンのこれはどう思う?」とか「ここはこういうシーンだったよね」とああだこうだと確認し合うことが多いと思います。みんな体育会系なので、話し合ってすぐに「わかりました!!」って感じでサバサバと動き出すんですけど(笑)、そういう部分も似ているなって思います。違うところとしては、色で言うなら私は赤とか、ビビッドカラー、千咲ちゃんはパステルというイメージかなと。ヒロインの淡い色のお衣装がすごく似合いそうなんだけど、でもそういう千咲ちゃんが、例えば椅子を使った強い動きのシーンを演じるのも、ギャップがあって魅力的に感じられるんじゃないかなって。

千咲 ありがとうございます! 私は、舞美さんと同じと言ったらおこがましいんですが、よく自主練するんです。で、稽古場に行くと、舞美さんによくお会いすることがあって。舞美さんも人に見えないところでお稽古してらっしゃるんだな、すごいなと思っています。

舞美 もしかして、私たちマイペースなんじゃない?(笑)

左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。

千咲 そういうことでしたか(笑)。それと下級生のときから思っていたのは舞美さんは人の悪口を言わなくて、必ずその人のいいところを見つけてくださるんです。例えば私自身はマイナスだと思っていたことをプラスとして受け取ってくださったり、ほかの劇団員のいいところもすぐ発見される。お芝居の稽古をしているときも「どんなアプローチをしてもいいよ」って受け止めてくださって、舞美さんのそういうところがすごく素敵だなと思います。

舞美 照れますね(笑)。千咲ちゃんとは、実はこれまでも一緒の作品に出させていただくことが多かったので、娘役トップスター同士として変に意識するのではなく、これまで通り共に作品と向き合っている感じがあります。

「STARt」は無限大の可能性を持った作品

──今回の作品「STARt」は、“START”と“STAR”、“ART”をテーマにしています。OSKではこれまで1部が和物レビュー、2部が洋舞という構成が多く、今回のように2部とも洋舞であることは珍しいですね。洋舞に徹したことで、OSKの新たな魅力が見つかった部分はありますか?

 感じたのは、やっぱりみんな踊ることが大好きなんだなってこと。また劇団員それぞれのカラーがありますが、2部とも洋舞だからこそ、いろいろな劇団員や若い子たちにもちゃんと場面が行き渡ったというか。「こんな子もいます。あんな子もいます」って観ていただける作品になっていますし、いろいろな角度からOSKにハマっていただけたらうれしいので、可能性は無限大だなと思います。

舞美 一口にダンスといってもスパニッシュや古典的なダンスなどいろいろな種類があって、本当に表現は無限大だなと思います。私は12年間OSKに在籍していますが、その12年のうちでも同じような作品は1つもありませんし、毎回毎回新たな出会いができるのがOSKの舞台の魅力。本当にダンスが大好きなので、今回もとても幸せな時間です。

千咲 和物レビューのときも、たぶん劇団員1人ひとり、ああしたいこうしたいという思いはあると思うんです。でも今回は、下級生もそれぞれ「この景はこう見せたい」「こう演じたい」と話していて、みんなすごく考えているんだなと驚きましたし、人によってこんなにも受け取り方が違うんだと感じています。

OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり『STARt』」大阪公演の「バトン」より、左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。

──お稽古場が活気に満ちていて、素敵ですね。本作では作・演出・振付を平澤智さんが手がけられます。平澤さんとOSKは「STORM of APPLAUSE」(参照:新トップスター桐生麻耶が歌い踊る“祭り”!OSK「春のおどり」開幕)で相性の良さを実証済みですが、今回の「STARt」で好きなシーンはありますか?

千咲 私は2幕冒頭の「バトン」のシーンが好きです。新たな気持ちで臨める気がして、神聖な場所へ向かう気持ちで舞台に出ていきます。OSKの先輩方からバトンを受け継ぐというシーンで、平澤先生がOSKのことを思って作ってくださった歌詞をみんなで大合唱したとき、鳥肌が立ちました。

OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり『STARt』」大阪公演の「Destiny」より、楊琳(写真中央)。

舞美 一番好きなシーンが決められないんですよねえ!(笑) 強いて言えば、私はKAORIalive先生が今のOSKを思って振付してくださった1幕の「Destiny」のシーンでしょうか。前トップスターの桐生(麻耶)さんや楊さんに対して私たちが抱いている思いを、そのまま踊りに反映したようなシーンになっています。また、実は私、「STORM of APPLAUSE」でKAORIalive先生が振り付けられたシーンにすごくすごく出たかったんですけど、出られなかったんです。今回ようやく出演することができて、本当にうれしいです。先生は「ここはこういう思いからこういう振りにしている」とお話ししながら振りを教えてくださいます。普段私は、舞台に対してはけっこうカタい女なので(笑)、あまりいろいろなことを考えずに踊りに集中してしまうのですけれど、「Destiny」のときは先生が言ってくださった、例えば「ここは応援団のような気持ちで」とか「桐生さんへの感謝の気持ちで」というような思いを、踊りながら自然と感じられていることに驚いていて。そんなふうに自然と気持ちを乗せられるナンバーに出会えたことが幸せだなと思っています。

 私もすごく迷うんですが、強いて言うなら3幕で桐生さんと一緒に踊る「Again」からフィナーレに入り、デュエット(「僧侶と紫陽花」)から「パレード」までの、一連の流れですね。桐生さんと一緒に踊り、舞台上で自分の気持ちを切り替えて、黒燕尾(「美麗的塔什广尓干」)の群舞に入っていき、娘役さんが入ってくるかわいらしいナンバー、そして舞美だけが舞台に残ってデュエットを披露したあと「パレード」へとつながっていく、その流れが美しいなと。

これからは個の時代、それぞれが意志を持って…

──確かにそれぞれ独立したシーンでありながら、ストーリーが見えてきますよね。また本作に関するインタビューで、楊さんはあるシーンで「目指せK-POP!のようなつもりで踊りたい」とおっしゃっていました。“ダンスのOSK”という名に相応しく、一体感のあるクラシカルな踊りから躍動感ある個性的なステップまで、幅広いダンスが詰まっています。OSKは来年100周年を迎えられますが、伝統を受け継ぎつつ新しさを開拓していく中で、“新しさ”をどのように追求していこうと思われていますか?

 自分がいつも思っているのは、これからは“個の時代”だろうなということです。バラバラで良いというわけではなく、そろえるところはそろえる必要がありますが、これからは個人の意見をもっと尊重するべきだろうなと。それには1人ひとりがもっと考える力を養って、思いを表現する力を養わなければならないので、過渡期である今はちょっと大変かもしれません。でもOSKには本当に良い子たちがたくさんいますので、これからもっと個々が注目されるべきだと思いますし、それぞれが自分の意志をしっかり持って、自分のどういうところを見てほしいかを考えて行動していかないといけないんじゃないかなと。その点は、自分自身のことも含めて考えています。

左から舞美りら、千咲えみ。

舞美 何事も基礎がないと新しいものには挑戦できませんから、やはり基礎が大事だなと思います。ただOSKの伝統の中には、テクニック面だけでなくて、観ている方の心に訴えかけられるような人間性という部分も入っていると思うので、見た目だけではない心の部分も大切にしたいと思います。

千咲 今、K-POPという例がありましたが、その時代時代で人が求めているもの、はやりをOSKの中に足していくことで、「OSKがやったらこうなる」という例を、これからどんどん作っていきたいなって。未知の世界ですが、それが新しいことへの追求になったらいいのかなと、今お二人のお話を聞いていて感じました。

舞美 そうですね。「それしかできない」というのはいやだから、常に視野を広げていきたいですね。

──挑戦は続きますね。大阪公演のカーテンコールで楊さんは、「こんな状況だからこそ舞台という非日常に浸ってほしい」とお話しされました。OSKの舞台はまさに非日常の世界ですが、8月の新橋演舞場では、どんな非日常を見せてくださいますか?

舞美 私自身、生活の中にエンタテインメントがないと生きていけないと思っていて、私のような方はたくさんいらっしゃると思います。生の舞台は、配信以上に届くもの、感じられるものがあると思います。ぜひ、劇場に足をお運びいただけたらうれしいです。

千咲 OSKはさまざまな危機を乗り越えて、100周年に向かっています。そんないろいろな危機を乗り越えてきたOSKが、世界的な危機の中で舞台をやる意味はきっとあると感じていて。100年前から続いているOSKのパワーを皆さんにもきっと感じていただけると思うので、1人でも多くの方に観ていただきたいですし、劇場にお越しになれない方にも私たちのパワーが伝わるくらい、全力で駆け抜けたいと思います!

 とにかく楽しみに来てください! 絶対後悔はないように、私たちがパワーをお届けします。もちろんこのような時期なので、なかなか両手を広げて「来てください!」と言えないところはありますが、もし状況が許して、お時間があるなら、そして迷っているならまず来てください!と申し上げたいです。劇場では日常と違う時間が過ごせますし、非日常ってとても心の栄養剤になりますので。ぜひ劇場で非日常を感じていただきたいです。

左から千咲えみ、楊琳、舞美りら。